第二十二章 最初の転生者、ノエルの記憶
ノエルが手を差し伸べると、古の魔法陣が静かに浮かび上がった。
ジロウたちは、彼女に導かれるままに遺跡の奥へと足を進める。
地下の空間は広大で、まるで図書館と厨房を融合させたような造りだった。
壁には古文書と調理器具が並び、空間中央には白銀の天球儀がゆっくりと回っていた。
「ここが……“原点”」
ノエルが語り始める。
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ノエルの記憶 ――最初の召喚者
「私は、最初にこの世界に召喚された人間。300年前のこと……現代の日本からだったわ」
「召喚したのは、まだ幼かったこの世界の“意思”……世界そのものが崩壊しかけていて、“誰かに直してほしい”と願ったの」
「……世界が、意思を持って?」
リディアが思わず口に出すと、ノエルはうなずいた。
「ええ。そして私は応えた。持っていた料理人としての知識を、魔法と融合させて、“世界のバランス”を整えるレシピを書いたの」
「でも、それは……一時しのぎだったの」
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ループする転生と魔核の秘密
「私の知識だけでは足りなかった。だから、世界は“他の料理人”を求めて、何度も、何度も召喚を繰り返した」
「ジロウ……あなたもそのひとり。そして、唯一“魔核”を調理できる存在」
「魔核は、“この世界の心臓”。正しく調理すれば、世界を癒せる。でも、誤れば……世界は分裂し、滅びる」
「それが、“呪核”と呼ばれるものの正体」
「つまり、今の異世界は――不完全な料理ってことか」
ジロウがゆっくりと呟く。
ノエルは頷き、そっと手を差し出す。
「ジロウ。あなたに“最後のレシピ”を託したい」
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“創造のレシピ”の継承
ノエルが差し出したのは、透明な魔道書のような書物。
ページは文字ではなく、映像と味と匂いで構成されている。
ジロウが指先を添えると、彼の脳内に膨大なレシピ――いや、“この世界の成分表”が流れ込んできた。
「これは……」
「世界そのものを“調理”するレベルのレシピ。あなたにしか、きっと扱えないわ」
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動き出す影
その時、遺跡の外から地鳴りが響いた。
「……呪核の波動。誰かが、それを制御しようとしている!」
ノエルが叫ぶ。
「まさか……あの仮面の貴族か」
ジロウが顔を上げる。
「急ぐぞ。――その料理、まだ調理途中ってことだろ?」




