第十九章 迫り来る影、そして“最後の転生者”
王都の晩餐会から数日後。
ジロウたちは《美食家の楽園》へ戻っていた。
「やっぱり……空気がうまいな」
ジロウはカフェのテラスで深呼吸をし、湯気の立つコーヒーをすすった。
「ジロウさーん、パン焼けましたーっ!」
リアナが大きなトレイを持ってやってくる。
「……温度と膨らみ具合、今日のは完璧ですね」
リディアも後ろから淡々と補足する。
魔王イヴァは厨房でクロワッサンの層に夢中だ。
だが、そんな日常に――王都からの一報が届く。
「《魔核》が盗まれました」
報告に現れたのは、王国の諜報部直属騎士隊長。
王都の地下に封印されていたはずの「魔核」が、何者かによって持ち去られたというのだ。
「……こっちに来るかもな」
ジロウは目を細め、席を立った。
森の中の出会い
調査のため、王都から来た魔導士と共に周辺を探索していたジロウ一行。
その時――
「……やっと見つけたよ、先輩」
背後から聞こえたのは、どこか懐かしく、そして冷たい声。
振り向いたジロウが目にしたのは、黒髪の少年。和風の服に身を包み、腰には魔剣。
「……お前は――カズマ……!」
ジロウがかつて異世界で魔王討伐に同行した青年、風間和馬だった。
だが彼はすでに死んだはず――第四回目の転生時、ジロウが現世に戻された直後に命を落とした戦友。
「カズマ……じゃない。俺は、“最後の転生者”」
彼は穏やかな表情のまま、異常な魔力を解き放った。
真実と対峙
「俺さ……ようやく気づいたんだ。異世界に召喚されるのって、ただの“運命”じゃないって」
和馬の声は静かだった。
「この世界の根幹に触れた者は、何度でも“やり直し”を強いられる。選ばれたように見せかけて、ただの使い捨てさ。あんたもそうだろ?」
ジロウは無言で構えた。
「だが、俺はもう繰り返さない。“支配する”側に回る。魔核は、そのための鍵だ」
リディアが囁く。「この魔力……精霊圧も混じってます。転生者レベル、完全にジロウさん級です」
「お兄ちゃん、あの人……本気で全部壊そうとしてる……!」
ジロウは一歩前に出た。
「やれやれ……飯も冷める前に、客が暴れだすとはな。――俺が料理してやるよ、“その歪んだ魂”をな」




