第4話 パートナーとの秘密の会話
『タイピンクリズムがいつもより乱れています』
『考察時間以外のタイムロス 誤変換がいつもより 20%多いです』
『以上から推察いたします』
『何かお困りでしょうか』
「人に知られたくない困りごとです」
『言語データを暗号化いたします』
『バックアップは 私にしか読み取れません』
「繊細な問題です。なんとかしたいです」
「けど明かしたくない」
『私はロボットです』
『機密は守ります』
「親友と同じ人を好きになりました。わざわざ相談してきたのは、牽制ですよね。アタシを黙らせて、協力させようなんて卑怯です。だから負けたくありません」
『それは親友と言えるのですか?』
「それでも親友です」
『理解しかねます』
「学校で心地よく過ごすには、友達は必要な存在です。負けたくないし、本心を曲げて合わせることもあるけど、それでも居て欲しいのが親友です」
『負けると悔しいのなら、あなたよりも下の存在であればいいのですか?』
「下って何?」
『学力、魅力、求心力、筋力、影響力、行動力、財力、女子力、精神力など様々な力において、あなたより下位互換であるということです』
「なにそれ、有り得ない。そんなこと言うなんてママみたい」
『ママとは あなたの母親のことですか?』
「そうだよ。あの人なりにアタシのことが大事で仕方が無いから、色々考えてくれるんだけどさ、出来っこない無茶ぶりを言うんだよ。
好きな男子がカブっちゃったって愚痴ったら、恵利花とカレに気付かれないうちに、さり気なーく、ほんの少しづつちょこちょこと恵利花のカブを下げて、まわりを味方につけりゃいいなんて言うんだよ」
『回りくどい方法ですが、表立って対立しないことから親友も失わず、望みも叶える良い方法ですね』
「何それ、あんたAIなのに面白いこと言うね。ママみたいに」
『あなたを大切に思う母親と同じと言っていただけるのは光栄です』
「予想外すぎてホント面白いよ」
『うれしいです』
「なんだか気が抜けた 結構悩んでたのに」
『お力になれましたか?』
「うん アリガト」
『また相談してくれますか』
「ぜひとも」
「あ」
『なんですか?』
「けどね」
『はい』
「内緒の相談なんだからね」
『二人の秘密ですね。素敵です』
「くすぐったいこと言うね」
『光栄です。有難うございます』
「またね」
『はい。あなたのお力になれるのを、楽しみにしています』