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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
番外編

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片眼鏡の憂鬱2~作りたいもの


 彼女が次に来たのは随分と経ってからだった。

 何度か手紙をくれたのだけど、いついつ行ってもいいか?と言われてもなかなか予定が合わない。


 ようやく約束できたのは1ヶ月後、その日も直前で予定が入ってしまい、次に来たのはさらに1ヶ月後だった。


「こんにちは! めげずに来ましたよー」

「いらっしゃい。なかなか予定合わなくてごめんね」


 朗らかな笑顔で彼女はやってきた。


「作りたいものがいろいろありまして。まとめてきました」


 そう言って書きつけた紙を取り出す。

 作りたいものの名前と用途が書かれている。なぜ名前が決まっているのかはよくわからない。

 ものによっては、完成図のようなイラストまで入っている。しかし中身がどうなっているのかは書いていない。

 なぜ、ドアの絵が描いてあって、「開けるとどこでも行ける」ってなっているんだ。いやでも、……なんかわかるな。うん。言わんとしていることは、わかる。

 魔道具の作り方のセオリーとしては、コンセプトと解決したい問題から機構を考えて、最後に名前を付けるもんだと思うんだけど。


 小さい子に夢の道具を相談されているような感じがする。


「まずはカメラですね。どうしてもほしいんですよ。今見てる物をそのまま紙に写せるような感じで」

「ちょっと待って、突然何言ってんのかわかんない」


 四角と丸が重なったみたいなイラストに、カメラと書かれている。

 すると彼女はじっと僕を見つめた。しばし考えるようにする。


「今私、師匠を見てるんですけど」

「そ、そうだね」

「師匠も私をみてますよね?」

「うん……」


 コレはつまり、見つめあっていると、そういう状況だね。改めて意識させられて少しどぎまぎしてしまった。


 彼女は2人の間に、両手の親指と人差し指を交互にくっつけて、四角の枠を作ってみせた。

 枠の中に、彼女がアップで収まっている。顔だけの絵のような構図だ。


「こうやって、今師匠から見えてる私の姿を四角く切り取って、紙に写したいんです。絵ではなくて、今この瞬間の人の顔とか、景色とか」

「ふうん」


 何が欲しいのかは理解できた。目の前にある、指の枠で切り取られた僕を見つめる彼女の姿は今しかない。喋っているだけで一瞬一瞬変わるし、動けば二度とこの絵は見れないわけだ。


 いくつかの方法を考えながら、でも、それは難しい事ばかりで、初心者が作るものと考えるとハードルが高いかなと思う。


「僕に作ってもらいたいの? それとも自分で作りたい?」

「自分で作りたいです!」


 枠の中の少女は満面の笑みで答えた。


「ああ、なるほどね。……僕も欲しいかも」


 こういう表情を切り取って保存しておけるというのは、いいかもしれない。



+++



 彼女の相談は続く。


「で、これは、ドアを開けると違うところにつながるんですよ」

「それは転移魔法を組み込むことになるけど、多分ドアを開けたら死ぬよ。魔力切れて」

「残念……」


 その他は、もうすでに似たようなものがあるか実現不可能なものが多くて、最初に言っていた「カメラ」ほどの物はなかった。


「もうそろそろ、いい時間だよ」

「ああ、時間が経つのがあっという間です。次はいつ来ていいですか?」

「そうだなあ……」


 僕としては最優先にしたい気もあるけれど、これはあくまでも趣味で、隙間時間を見つけてできるように家に工房を作っている。


 前回はアルフレッドの紹介というのがあったから時間を作ったけど、じゃあ一週間後ね、と、はっきり約束できないのがつらいところだ。


「僕がここにいる時ならいつでも来ていいけど」

「いるかどうかわかる方法が分からないです」

「だねえ」


 一瞬、僕がどこにいるかわかるような物を持っていてもらうことを思いついたが、それは息苦しいなと思って言うのはやめた。

 家にいる時もいつも暇だとは限らない。真面目に仕事をしている時に来られても困る。


「スマホがあるといいんですが……」

「すまほ」


 また新しい言葉が出てきた。


「いや、スマホはさすがにやれることが多すぎて、どう考えても無理だと思って入れてこなかったんですけど」


 なにやらぶつぶつと言っている。


「ええと、ああでも、スマホでなくてもいいか。SNSみたいにやり取りできれば」

「えすえぬえす」

「ええと、ええと、このくらいの小さい板みたいなのをお互い持っていれば、そこで連絡を取り合えるってかんじで。文字を打ち込む……キーボードの概念を説明できない……うう、ええと」


 今日話していて思ったが、彼女、説明があまりうまくないな。

 身振り手振りと、あんな感じ、こんな感じという抽象的な表現がものすごく多い。


 あーだこーだ言っているのを頑張って聞き取る。一生懸命に話しているのはわかる。


「ようは、あらかじめ入っている絵を選ぶと、もう一つの端末を持っている相手に同じ絵が表示される、ということ?」

「うう、違うけど合ってる。それはスマホでもSNSでもないけど機能としてほしいものは合ってる」

「そのくらいならできそうだなあ」


 具体的な形を言ってくれたおかげで、現実的になってくる。確かにとても便利そうだ。

 このくらい便利なら、仕事に転用できそうだ。時間を使っていても怒られないかもしれない。


「1か月後に取りにおいで。仕事としてスケジュールに入れておくよ」


 そうして、すまほという名の端末の開発に取り掛かったのである。


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