かくれんぼ
「どこへ行こうというのだね!」
部屋にいたら、階下から、カイルの大声が聞こえた。
少し楽しそうと言うか呆れている声だったので、マグノリアが何かしたのだろう。
「レオン! 匿って!」
マグノリアが部屋に飛び込んできた。
そして勝手にベッドに潜り込む。
確かにこの部屋で隠れるとすると選択肢は少ないが、それにしてもそれはどうかと思う。
脱ぎ散らかした靴をベッドの下に隠す。ついでにクッションやらシーツやらをいい感じにして、ぱっと見わからなくしてやった。
「レオン、こっちにマグノリアがこなかったか?」
カイルが、こちらはちゃんとノックをしてから入ってきた。
「ノルマが終わっていないのにふざけた事を言うので探している」
「こっちには来てませんねえ」
「一応見させてもらうぞ」
「どうぞ」
カーテンをめくり、クローゼットをあけ、机の下を覗き、ふとベッドに目を止める。
が、さすがにそれは無いと思ったのか素通りする。
「何でかくれんぼしてるんですか?」
「10分以内に僕が見つけたら大人しく勉強する、見つけられなかったら今日は一緒に出かける、と一方的に言いだして逃げた」
「楽しそうですね」
「邪魔したな。他を探す」
なんだかんだ付き合いがいい。
「行きましたよ」
「助かったー、これ以上は苦しかった」
ヒョコっとベッドから顔を出す。
目が合うと、誤魔化すようにえへへと笑った。
「咄嗟にやってから、これは見つかったら殺されると思って生きた心地がしなかったわ」
わかっていたようでよかったが、もう少し反省してもらいたい。
ベッドから降りようとするのを何気なく妨害して腰をおろす。
「少し静かに。カイルが戻ってきたかも」
「え」
深刻そうに言うと俺の後ろに隠れたので、シーツでくるんで捕まえた。
「む!? むー!?」
ジタバタしているがかわいいものだ。難なく片手で押さえてベッドに転がした。
「ちょっと、ほんとに苦しい!」
顔だけ自由にしてやると真っ赤な顔が出てきた。
「狼の寝床から無事で帰れると思ってる?」
結構頑張って男らしく言ったつもりだったのだが、マグノリアは一瞬、あちゃーやっちまったなーと言う顔をしてから、気を取り直してキリッと睨んだ。
「やめて」
「はい」
言うことは聞く事にしている。
大人しく離すとすごい勢いで逃げた。
「靴、ここです」
「ありがと」
履かせてやろうとしたら、靴をひったくられた。
少しは反省しただろうか。あまりしてない気がする。
「足音の方向からして、今ならカイルの部屋に潜り込めると思うんで、そっちのベッドに隠れてくださいよ」
「なななにいってるの!? そんな事出来るわけ無いじゃない!?」
意味を理解していない訳ではなさそうだ。
俺のベッドは何も気にせずに潜り込める場所である。安心安全を提供できているようなので、本望である。
「でも絶対見つからないと思いますよ」
「そ、それもそうね……」
ソワソワしだしたマグノリアが、次は何をやるのか、そしてカイルがどんな顔をするのか、楽しみだ。
今日は出かける事になるだろうから、そのつもりでいよう。
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前回ので下書きが無くなってしまったので、次はしばらく開くと思います。
また更新しますので、お待ちいただけたら嬉しいです。




