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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
番外編

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思ってたより拗らせている

番外編 エピローグの前。

カイルとレオン二人でグダグダと恋バナしている話です。


カイル視点

 


 すべてが終わり、日常が戻ってきた。

 とは言え、僕は仕事や生活が大きく変わり、なかなか落ち着かない。


 今日も遅くに帰宅した。マグノリアはもう寝ているようだが、レオンが起きていたので捕まえた。


「マグノリアのことで話がある」


 僕の執務室で向かい合って座る。

 彼とちゃんと話し合いの席に着くのは何だか不思議な感じがする。


「ルージュ公から条件を出されている。アルフレッドと婚約破棄をしたなら、結婚相手として君を推薦すると」

「はい」

「君自身はどう思っているんだ?」

「どうとは?」


 こういうのは恥ずかしいな。


「あ、愛しているのか? 彼女のことを」

「そうですね……」


 レオンは少し考える。


「俺は自分では愛してると思うんですけど、カイルが言うのとは違う気がする」

「どういうことだ?」

「うーん、愛しているからこそ、別に俺はどうでもいいというか。俺は別に、何も望んでないんですよ。ただ、俺のおかげでマグノリアが幸せだったらいいなと思うけど」

「?? ならば、結婚の話は君の意志はないということなのか?」

「……まあ、騎士の契約をしてくれるなら、どうしても結婚したいとまでは思わないですかね。ただ上司が……ルージュ公がマグノリアを異常に気に入ってるんで、せめて18になるまではこのままにしといて欲しいと言うか」

「そうか」


 本音が聞けて良かった。当人の気持ちがないのに進めるのは、やはりどうかと思っていたのだ。


「……そんなあからさまにホッとしないでくださいよ。俺あたりにしといた方が良いでしょう。舅との関係も良好ですし。で、」


 レオンが身を乗り出す。


「カイルはどうなんですか? 愛してるんです?」

「は? なんで僕に聞くんだ」

「俺にそれを聞くんなら、カイルも答えないと。自由にするとか言っておきながら、こんな風にこそこそ話つけようなんて。矛盾してません?」


 そう言われても、答えられない。


「ちゃんと、本人に、『悪かった、愛してるよ、やり直そう』って言ってやりましたか?」

「いやいや、なんだそれは」

「それ言うために頑張ってたんじゃないんですか!?」

「違う、僕はマグノリアから奪ったものを返そうと」

「だったらそもそも、俺がどうとか、関係ないですよね」

「そうだが……し、幸せになってもらいたいじゃないか」

「はー、わかってない」


 なぜかレオンが熱くなっている。少し押され気味だ。


「どこかに嫁にやって、幸せになってもらいたいなら、どう考えても俺を推すべきでしょう!? なのに俺を候補から外そうとコソコソと」

「その自信はどこから来るんだ!?」

「騎士なんで」

「君、結構騎士を軽んじているよな!?」

「だからカイルの話もしてくださいよ。マグノリア、カイルが大好きじゃないですか。さすがにあそこまで他の男は眼中にないと、もう応援するしか」

「大好きといったって……」


 大好きと言っても、彼女の大好きは、兄に向けてのものだ。それか眼鏡。

 以前、明らかに恋心を向けられていたからこそ、今のは違うとわかる。

 今の彼女は僕に何も求めていない。いや、何かするとたしかに喜ぶのだが、今まで頼まれた事って眼鏡取ってくれってくらいじゃないか?

 そう考えると、チクリと胸が痛んだ。以前は求められすぎていて面倒だと思っていたのに。


「カイルも、マグノリア大好きでしょう?」

「な、なにを言っているんだ君」

「違うんですか? 違うならさっさと他に行ってくださいよ。そうだ、マグノリアもカイルを別の女の子とくっつけようとしてた事もあったし。そうしたらみんな幸せじゃないですか」

「ちょっと待て、別の女の子とくっつけようとしてた……?」


 突然の話に衝撃を受けた。


 以前の……アルフレッドと婚約する前のマグノリアは、僕が他の女性と話しているのを見かけただけで泣きそうになっていた。


 正直、当時は面倒くさいとしか思っていなかったのだが、ちょっと変わりすぎではないか? いや、また泣かれても困るのだが、そこまで気持ちは変わるものなのか?


「仕方ないでしょう、カイルのためにアルフレッドと結婚するつもりだったんですからね。それは健気なものでしたよ。カイルを幸せにする子がどうのと」


 その通りだ。僕がそれをしていたんだから、何もショックを受ける資格はない。


「……だったらやはり、彼女の中では兄でしかないということだろう」

「カイルはどうなんですか。結構頑張ってたと思いますけどね。本当に、ただ妹の為だったんですか?」


  レオンの言葉が胸に刺さる。僕は視線を逸らした。


「僕は」


 レオンは言葉を促すようにこちらを見ている。くそ、こんなことを考えるのも人に話すのも初めてだ。


「……マグノリアを、ただの妹だと思ったことはない」


 幼いころを思い出す。従妹の可愛い女の子。父に将来は彼女と結婚するのだと言われ胸が高鳴ったこともあった。いつしか面倒な存在になり、駒だと思うようになり、最近は正直、ただただ可愛いと思う。


「しかし、だ。そもそも愛だとか好きだとか、その定義はなんだ」

「うわ、面倒くさいこと言いだした」

「君にしか言えないから言うが、可愛いだろう、彼女。でも昔から外見は良いと思っていたんだ。それは初めて出会ったときから今まで変わらない。客観的に見て彼女より美しい娘がいるか? 僕は見たことがない」

「それは主観ですって」

「以前はうじうじと陰気臭い顔でこちらに何かを求めてくるのが嫌だったが、それがなくなった今は完璧だろう? いや、正直今ならたまにああいう顔をされてもいい。あれはあれで今から思い出すと可愛いと思う。庇護欲をそそるというか独占欲をくすぐるというか。ちょっと頭を撫でればすぐ笑うんだ。それを見て優越感に浸っていた自分を殴りに行きたい。彼女が笑えば誰だって心を奪われるに決まっている。つまり僕も本当は虜になっていたのではないか。自分で気が付いていなかっただけで」

「思ってたより拗らせている」

「だが、僕だけの話ではない。君が付きまとっているのもブルーがすぐにサインしたのもアルフレッドが攫ったのも、彼女が魅力的だからではないか。つまり冷静に考えて、そんなに魅力的な女性に対して以前酷いことをしてしまった僕が、今更何か言えるようなものでは無いだろ」


 喋りだすと、言葉が止まらない。


「それに、僕が彼女を手放したくないとして、それは独占欲や所有欲と何が違う。それが愛だというのなら、つまり僕は彼女を愛しているのかもしれないが、であれば、兄妹であることと伴侶になる事と何が違うというのだろう」

「めんど……兄貴は妹の顔とか身体とかそんなに気にしませんよ」

「は? 今そんな話してたか?」

「俺の感覚ではしてましたが」

「マグノリアの顔が可愛い、スタイルが良い、それは事実であって僕の気持ちとは関係がない」

「だからそれはあなたの感想ですって。大体、久しぶりに会った時から挙動がおかしかったんですよ。あからさまに目をそらしてるし」

「いやだって、あれほど変わっていれば驚くだろう」

「避けていたのも、前より大人っぽくなってどうしていいかわからなかったんですよね?」

「……とくに用事がなかっただけだ。忙しかったし」

「寂しそうでしたよ。これは俺では代わりになれないなあと思うくらいには」

「……」

「少なくとも俺は、カイルが責任取れよと思ってますけどね」


 責任とは。僕は責任をとって、僕が奪った物を返したつもりだったのだが。


「カイルにその気がないんなら、俺頑張りますよ」

「結婚までは望んでないと、言ったではないか」

「カイルがずっとただの兄貴のつもりなら、話は別です」

「……」

「カイルもすぐにどうとはできないと思いますが、20になっても30になっても同じ感じなら、だんだんマグノリアも独り身だと肩身も狭くなってくると思うので。打算計算契約友情、俺はなんだってかまわない。いつでも迎えますよ」


 そう言って眦を微かに下げる。


「なので、頑張ってください」


 がんばれと言われてもどうして良いのやら。


「この間せっかく二人きりにしてあげたのに、どうせキスの一つもできなかったんでしょう?」


 突然言われて、思わず動揺した。

 ……いや、あれはキスのうちに入らないだろう!?


 そう思っても脳裏にすやすや無防備な顔で眠るマグノリアが浮かぶ。

 滑らかな額、さらさらと流れる髪の感触。


「え、まさか」

「していない」

「そうか。少し安心しました。考えすぎて何もできないんじゃ無いかと」

「していないぞ!?」


 絶対に誤解されているが思い込みが強すぎる。レオンは一人納得していた。


「いやほんと、頑張ってください。結局、カイルの隣が似合ってるんですよ」


 レオンはそう言うと、立ち上がった。


「そもそも。こーゆー話は、また飯食いながらでもしましょう」


 お休みなさい、と、勝手に出ていってしまった。


「くそ……」


 顔が熱い。

 妙にうるさい鼓動を気にしないようにしながら、僕は頭を抱えたのだった。



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