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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
第二章 グラスコードの悪魔

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43.エピローグ

 

「さて、かくして君は自由になったわけだが」


 どさどさと、テーブルに積み上げられるお見合いの釣書。


「そうなれば、まあ、自然とこうなる」

「……モテ期ですかね」

「何を言っているんだ。君は美しいんだ。それに僕の妹だからな。邪魔が無くなれば当然だろう」


 なぜか得意げな兄である。


「私、やりたいこともありますし、色々あったので暫くはそう言うのは……」

「全て相手にする必要はない。ただ」


 いくつかまとめて私の前に積んだ。それでもそこそこの数がある。


「彼らについては、君が選ぶなら僕は反対しない、と言うのが協力の条件だった」


 ……結局、知らないところで、私の人生は売られていたようだ。しかも結構な人数に。


「安心したまえ。君の意思を最優先すると言う事にはなっている。これとこれだけ残して、後は断っておくがいいな?」


 仕事の書類のように捌いていく。

 良いのだろうか。一応、条件にしたくらいなのに……


「ま、これなら断られても仕方ないと思わせるのがいるからな」


 渡された二人の名前は、レオンとブルー公だった。


「レオンについてはルージュ公の賛同の条件だ。だが、実はレオン本人とは話がついている。騎士の契約をしてくれるなら、結婚までは望んで無い。18まで誤魔化せれば上司は何とかすると」


 私の意思がどうのと言っておきながら、勝手に話を進めていく。

 ポカンとしていたら、カイルが言いにくそうに目を逸らし、少し早口で付け加えた。


「……少し都合よく端折った。もし君が望むなら、喜んで迎えるとは言っていた……つ、次だ」


 もう一つを指し示し、憮然とした表情になる。


「ブルー公爵については僕は面識がない。立場も向こうの方が上だしやりにくい。下手をすれば大きな問題になりそうで、こればかりは手を打てなかった。君が自分で作った逃げ道なのかもしれないな」

「逃げ道ですか?」

「そうだ、僕からのな」


 そう言ってカイルはニヤリと笑おうとして、……失敗して変な顔になった。


「お兄様?」


 カイルは机に肘をつき、眼鏡の下に指を入れて両手で顔を覆った。

 俯いて、目頭を押さえるようにしている。


「あー……何をやってるんだ僕は。せっかく君を自由にしたと言うのに、選択肢を消して回っている。これでは前と変わらない」

「あの、お兄様、そのお話ですと、私に他所に行ってほしくないように聞こえるのですけれど」


 しばらくの間があって、小さい声で返事があった。


「……そうだ」


 そうして、手で顔を覆ったまま指の隙間からこちらをみる。少し、顔が赤い。


「わるいか」


 破壊力が高すぎて私は死んだ。

 いや、死んでいる場合ではない。


「あちこちで言われたんだ、『まさか自分の恋心の為にやってるのでは無いだろうな』と。あくまでも君を自由にすると言うのを旗印にしていたから、僕は表立って選択肢になれない」


 落ち着いたのか、開き直ったのか、起き上がって眼鏡を直した。もう平然とした顔をしている。切り替えが早い。

 もう少し見たかったのに。


「いざ、君に自由があると思うと……どこかへいってしまうかもと思うと、落ち着かない。僕は、君がいるのが当然だと思っていたんだな」


 そう言って、真っすぐ私を見る。


「君と何か企むのは面白い」

「ねえお兄様。私、自由ならやりたい事があるの。だからどこにも行かないわ」

「何だ?」


 私は気取って扇を広げる。口元を半分隠してニヤリと笑って見せた。


「世界征服を狙う組織の女幹部」

「どう言う事だ?」

「お兄様が何をするにしても、補佐をすると言う事です」

「はははっ」


 それを聞いて、カイルは楽しそうに、少し安心したように笑った。


「君がずっと家にいたいと言うなら、僕は歓迎する。近づく蝿どもはすべて叩き潰してやろう」


 そう言ってカイルも、口の端を上げてにやりと笑った。


「そうだ、すぐにとは言わないが、幼い頃のようにカイルと呼んで構わないぞ」

「え?」


 突然の話に戸惑う私を無視してカイルは立ち上がる。


「さて、そろそろ出かけなければ。今日は王宮に行くから遅くなる。君も僕の補佐をする気なら一層勉学に励みたまえ」


 眼鏡を上げる。ついでにグラスコードの位置を直した。

 そのグラスコードは、最近家でたまにつけているもので。


「まってお兄様、その、それ、そのまま出かけられるの!? 恥ずかしいって申し上げたじゃありませんか!?」

「いいじゃないか。気に入っているんだ。それに」


 銀色の鎖と小さなアメジストのグラスコードが、カイルの目元で揺れる。


「このくらいは、アピールしても」




 end


ありがとうございました。こちらで本編完結です。

めでたしめでたし。


ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

よろしければ、ぜひ、評価をよろしくお願いいたします!


今後、いくつかエピソードを投稿する予定でいますので、よろしければブックマークもお願いいたします。



夢中で執筆した一カ月、とても楽しかったです。

ブックマークや評価、いいね、ありがとうございました。


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