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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
第二章 グラスコードの悪魔

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29.騎士に代役は務まるか


 数日後、聖堂の廊下。お昼の暖かい日差しが差し込んでいる。

 レオンを従えて歩きながら、長閑な雰囲気とは裏腹に私は次のイベントについて考えていた。


 猫イベントの二週間後、ダンスの授業のイベントがある。

 二年前、カイルと大喧嘩したきっかけの、あれの、本番だ。


 本来なら、アルフレッドとカイルでリリアンを取り合う。ゲームのプレイヤーであれば、どちらを進めるか決まるきっかけになるイベントだ。


 ここでカイルがいないとなると、アルフレッド一択である。仕方ない。ここは代役を立てるしか無い。


「レオン、来週、ダンスの授業があるじゃない。模擬舞踏会」

「はい」

「多分、アルフレッド様は一曲目、リリアンを誘うわ」

「わかりました。……つまり、アルフレッドが授業に出られないようにすれば良いですね?」


 ……それもありか? と、うっかり思ってしまった。


「暴力以外でできる?」

「監禁は暴力に入りますか?」

「入ります」


 だめだ。確実に暴力沙汰が起こる。


「それは無しで。……アルフレッドが踊った後、あなたがリリアンと踊りなさい。いい? 一昨年の私の時みたいに、全力でやるのよ。リリアンを自分に惚れさせなさい」

「……」

「返事は?」

「俺、あんまりダンス得意では無いんですが、練習させてくれます?」

「そのくらい付き合ってあげるわよ」

「あと、惚れたんですか? 一昨年」


 少しだけレオンの声色が変わった。何だか余計な事を言ってしまったようだ……


「いや、そういうわけでは」

「一昨年の舞踏会、今でも覚えててくれてるんですね?」


 背後に控えていたレオンが、何気なく私の前に回ってきた。視界を肩で遮られる。

 こうされると体格の違いを思い知らされる。顔を見ようとするとかなり見上げなければならない。


「そりゃ、……嬉しかったもの。助けてくれて」

「惚れたんですか?」

「いや、そうじゃなくて」

「……惚れそうなほど、良かったって事?」


 僅かに近づいてくる獲物を狙うような目を、気合いで睨み返す。


「やめて」

「はい」


 こういう時は、理由を考えずにやめるように言うのが正解。


 とりあえずゲーム通りに進むなら、こっちのルートに入ってからレオンの親密度をあげてもパラメータにあまり影響が出ないはずだ。


 カイルが帰ってくるまで、足を引っ張ってもらうにはちょうどいいだろう。



+++



 ダンスの授業イベントの日になった。

 聖堂のホールをパーティー会場に見立てて、各々正装で集まる。


 さすがアルフレッド王子様。絵本の王子様のような正装もお似合いで、女の子達にキラキラを振り撒いている。

 リリアンはとても可愛らしい、淡いピンク色のドレスを着ている。合わせたわけではないだろうが、アルフレッドと並ぶとまるで妖精の王子様とお姫様みたいだ。

 私もアルフレッドにそろえて、白銀のドレスにしてみたのだが、やっぱりなんか、しっくりこないというか魔王の娘感が強まってしまった。


「私と踊っていただけますか、お嬢さん」


 ほーら、やっぱりファーストダンスはリリアンを誘いやがった。

 一昨年は、いや去年も一応、私を誘いましたよね????


 ゲーム補正か? それかただクズになっただけか? いや、リリアンに真実の愛でも感じているのか!?

 ギギギと、ハンカチを噛みそうなくらいに悔しい気分になっていると、レオンが手を伸べてきた。


「マグノリア、落ち着いて」


 はあ、と、ため息をついて、とりあえずレオンの手を取る。

 一週間、結構練習したから、それなりになった。

 ただ……好き勝手に振り回されるのをどううまいこと合わせてどうあしらうか、みたいな。何だか武道のような感じになってしまう。


 アルフレッドとリリアンが気になる。白い薔薇の花びらが舞っているだろうか?

 あのエフェクトは踊ってる本人にしか見えないのだろうか?

 リリアンは、王子ビームに当てられて、惚れてしまっていないだろうか?


「マグノリア、まだ俺の番だよ」


 よそ見をしていたらグイっと引き上げられた。

 ふわっと足が浮く。一瞬レオンの視線が下になったので、相当高く持ち上げられたのだろう。


 目が合うとチカリと眼の奥に炎が散ったように見えた。


「ちょっと! 目立つことしないでよ」


 ムッとして言うと、レオンは僅かにつまらなそうな顔をした。


 一曲目が終わって、アルフレッドとリリアンがお辞儀をしているところに割り込む。レオンが私が教え込んだカイルのセリフ(少々レオンぽくアレンジした)をそのまま言う。


「今度は俺と踊ろう」


 リリアンの手を取る。そしてアルフレッドを見遣って続ける。


「貴方の相手はもういるでしょう?」


 若干棒読みだ。しかし、レオンなのでなんか雰囲気で誤魔化せてる気がする。この後、踊っている間にリリアンを口説くミッションも頑張っていただきたい。


 すかさず私はアルフレッドに微笑んだ。


 レオンとリリアンが踊り出す。狼と兎みたいだな、と、ちょっと思った。ある意味お似合いだ。


 それを見て、アルフレッドはゲームの通りに、やれやれとばかりにちょっと肩をすくめた。そして仕方ないなぁという表情を隠さず、私の手を取った。


 本っ当に……こいつ


 は ら た つーーー!!!



読んでいただきありがとうございます。


最後まで書きあがりましたので、平日は1日2回、土日は3回投稿します。来週水曜に完結予定です。


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