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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
第二章 グラスコードの悪魔

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28.やってきたヒロイン

「そういえば、リリアンの護衛って誰が行ったの?」


 レオンはゲームの通りとてもカッコよくなった。背が伸びた。表情は相変わらず乏しいがそれもまた精悍なイメージを与えている。

 目だけが鋭く光っているようで、何となく狼っぽい。以前は犬のようだなと思っていたのだが。


「騎士団に要請が来ていたので、適当なのを2人付けました。報告受けましたが、襲われたりすることもなく無事帰ってきたようですよ」

「そう。よかったわ」


 レオンルートの始まりは、リリアンが王都に来る途中で暴徒に襲われ、護衛として同行していたレオンが助けるシーンである。レオンはそもそも行かなかったが、モブと恋が始まっても困ると思って、2人以上つけて目を離さないように言ってあった。


 これで、レオンルートは大丈夫だろう。ルーカスはすでにリタイア宣言してるし。

 あとはアルフレッドルートだが、二年で立派なクズになったあの男に、ヒロインが靡くとは思えない。


 カイルの処刑もどうなるかわからない。

 反乱さえ……最悪、暴力沙汰さえ起こさなければ、殺されることはないと思うのだけど。


 カイルは幸せになってもらいたい。

 一番いいのはリリアンにカイルルートを進んでもらう事だろう。ブランの街で、カイルはリリアンに会い、とても褒めていた。

 ゲームがどうとか置いといても、カイルとリリアンはお似合いだとおもう。


「いつ頃帰ってくるのかしら……」

「カイルですか?」

「ええ。手紙もいただくけど、会いたいわ」


 手紙は中身をお父様が確認している。逆手にとって、何とか誤解を解こうと、あの日の話をちょっとマイルドにしてまとめてみたりとか(何かあったわけじゃないよ!というアピールである)、帰ってきたらまたお菓子作ろうねとか(仲良し兄妹アピールである)、頑張ってみている。

 しかしカイルからの返事は当たり障りないものばかりで、今どこで何をしているのか、いつ帰ってくるのかはわからない。

 無事だということがわかるだけ良しとしようと思ってはいるけど……ちょっと寂しい。


「ルーカスに聞いてみたらわかるかもしれないですね」

「え?」

「最近ジョーヌ公関連の仕事が増えたと言ってませんでしたか。ルドルフさんとも連絡つくかもしれませんよ」

「ちょっと聞いてみる!」


 今退出した教員室に再度駆け込む。


「ルーカス!! お願いがあるんだけど!!」


 ルーカスが、再度げんなりした顔で迎えてくれた。




+++




 リリアンが聖堂に通いだして、私たちはすっかり仲良くなった。


 マグノリアはなかなかのお嬢様なため、気の置けない同性の友達、というのがおらず、リリアンと友達になりたいな、と、チャンスを狙っていたのだ。前に会ったときとてもいい子そうだったし。

 ブランの辺境出身だからか、私が結構なお嬢様とわかっても、あまり変わらずに接してくれてホッとした。



 リリアンとは仲良くなったのに、まだカイルは帰ってこない。

 カイルが家を出たのは夏休み後だ。そこから二年とすると、そのあたりまでは帰ってこないのだろうか。

 ゲーム進行のイベントはどうなるんだろう。と思っていたら。




「あれ?マグノリア、何だか猫の鳴き声がしない?」


 ある日、門の近くでリリアンが言い出した。


 こ、これは……!!?


 猫の分岐イベントじゃない!?

 ちょっと待って!!カイルがいないのにイベント起こすのやめて!


 猫を助けるか助けないかは一つの分岐点だ。

 木に登って助けるとアルフレッドとカイルのストーリーに進み、木に登らないでレオンを待つとレオンとルーカスのストーリーに進む。

 まあ、この分岐を逆にした上でカイルとの親密度をあげまくると最後の処刑シーンが感動的になるのであえてそちらに行くというのもあるが、それは今は関係ない。というか、分岐を逆にするとカイル生存ルートはない。それだけはいけない。


 しかし、今!?

 ここで、アルフレッドしかいない状態で、そっちに進んじゃったら……アルフレッドと進展しちゃったりしないかな??

 でも、逆の分岐では死ぬしかないのだ。これは仕方ない、助けてもらうしか無い。

 私は木の上を指差した。


「あ、あそこに子猫がいるわ!」


 木の上に子猫が登って降りられなくなっている。ゲームの通りだ。


「どうしましょう、私、登れないわ」


 あえて私は登れない、と伝えることで、リリアンが登る、という選択肢を提示してみる。

 すると、リリアンは早速木に手を掛けた。


「このくらい、簡単よ」


 ニコッと笑って、スルスルと木に上り、子猫を抱き上げる。


「ほら、良かった!」

「君! 危ない! 何をしているんだ!」


 私に手を振っていたリリアンに、ゲームの通りに声がかかる。


「こちらへ!さあ!」

「しっかり受け止めてくださいね!」


 リリアンは猫をアルフレッドに向かって落とした。アルフレッドは猫をキャッチし、呆然としている。


 ゲームの通りだ。ああ、これで、ゲームの通りなら。


 ……アルフレッドがリリアンに一目惚れして、猛アピールが始まるはずだ。




+++



「ねえ、マグノリア、聞いてくれる?」


 聖堂の中庭の東屋。いつも明るいリリアンが、改まって話始めた。


「最近、アルフレッド様が……いろいろよくしてくださるのだけど」


 危惧していた通り、アルフレッドはリリアンに一目惚れしたようだ。


 ゲームではこの流れだと、カイルが頑張って妨害する。悪役令嬢のごとく妨害してくる。だが、残念ながら、カイルがいない。


 なので、アルフレッド、やりたい放題である。見ていてあきれるほど、リリアンにベッタリである。


 しかし、一つだけ、ゲームより私に有利な事がある。

 今の時点で、マグノリアとリリアンが仲良しで、リリアンはまともな人間だった、という事だ。つまり。


「その、アルフレッド様って、マグノリアと婚約をしていると聞いたのだけど。……私は本当に、そんな気は無くて。マグノリア、どうしたら良いのかしら。……こんな相談もあなたを傷つけそうで言えなかったんだけど……」


 リリアンは友達の婚約者に言い寄られ、困っていた。

 普通そうだよね。あなたの婚約者私の事好きらしいんだけどとか、あなたの婚約者クズよね、とか、言えないよね。


「相談してくれてありがとう。リリアン。私もアルフレッド様の行動は改めて欲しいと思う事は多いわ。でも、あなたのせいじゃ無いっていう事はよくわかっているから。私からアルフレッド様にお話しするわ」

「ありがとうマグノリア」


 ふふふ、と笑ったリリアンはとても可愛くて、アルフレッドなどにやるものかと心に誓ったのだった。



 そうだ、カイルはいないけれど、私とレオンで何とか出来ないか?

レオンはとってもかっこいいし、ゲームでのカイルのように、ヒロインの心を王子から奪う事ができるかもしれない。


 私も王子の婚約者として、もう少し頑張ってみよう。

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