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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
第一章 銀縁眼鏡の悪役

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24.被害者はどっちだ

マグノリアの長台詞は雰囲気を感じていただければ…読まなくても大丈夫です。

 カイルは完全にフリーズしていた。


 想定外のことに弱いのは、チャームポイントである。


「……眼鏡がね、私、眼鏡が好きなんですよ。そのすべてを魅了しちゃうような目を隠しているわけで、それがないと死者が出ますから。その眼鏡は優しさですよね。魅力という暴力を抑えるための優しさ。もしなかったらむしろカイルが通った後はすべての生き物が死んでしまう。アニメ雑誌のおまけのポスターで外してた絵あったじゃないですか。多分製作陣にカイルは眼鏡が本体派がいますよね。本編では一度も取らなかったですもんね。プライベートの特別感を出すイベントですら眼鏡のデザインを変えただけという徹底感が良くて、あっあのアンダーリムのデザインの眼鏡もいいと思うんですけど、丸眼鏡のほうがいいなって思っててこの間は本当にありがとうございました。いや、その話ではなくて、そういうところも眼鏡好きのポイントを押さえてていいと思ってたんですけど、やっぱりいざ外しているのを見ると、ええー、これは眼鏡ないと世界ほろんじゃうって思って、私アニメのほうはちょっと絵が違うなと思っていたんですけどあのポスターのために雑誌三冊買って……あ、すみません、何が言いたいかというと顔が良すぎるからその顔はもう凶器。凶器です。顔面が凶器」


 まったくカイルも動かないので、恥ずかしくなってさらにいろいろと言いつのってしまう。


 このままでは本当にまずいと思って、顎にかかったままの手を外そうとした。


 ……その場合ってこう、御手に、触れることになるじゃないですか。

 なんでだろうか。普段は手とかつなげてたのに。

 なんかスイッチ入ってしまったのか有難みがすごすぎて、恭しく両手でそっと包んでしまった。


「すっ」


 すべすべですねと言おうとして、さすがに変態さんになりそうで飲み込んだ。

 推しにどれだけ好きかを伝えたい気持ちってあるじゃないですか。でも怖がらせたり嫌われたくはないからやっぱりそういうのは飲み込んだ方がいいかなって。


 おとなしく私の手に収まる、大きい手。少し節が目立つ長くて細い指。


「好き、ほっ本当に、大好きなんですよ……つらいときとか、悲しいときとかも、カイルの顔見たら私ももっと頑張ろうって」


 少しテンションは落ち着いたのだが、カイルの白い手を見ていたら離し難くなってしまい、握手できたら言いたいこと、みたいな感じでつらつらと語ってしまう。


「全力でやっても上手くいかない事も、それでも最後までやり切って、結果がどうなろうとも最後まで自分らしく、ストイックに一直線で。そういう魅力って、やっぱり悪役ならではのものというか」


 ドンドン!!


 突然、廊下が騒がしくなり、がちゃがちゃという音がして扉が開いた。


「お前、私の娘に何をしている!!」


 飛び込んできたお父様がカイルを突き飛ばし、私を抱きしめる。


「まっ…マグノリア!! 大丈夫か!?」


 いつもならもう少し帰りが遅いと思うのだが、だれかが連絡したようだ。

 レオンもいる。お父様を連れてきてくれたのだろうか。


 皆、ものすごく心配してくれているが、おそらく被害者は逆だ。本当に申し訳ございません。


「お、お父様、お帰りなさい」

「大丈夫か? 何もされなかったか?」

「マグノリア、遅くなってすみません。ノワール公を呼んできました」


 レオンが駆け寄ってきて、私をカイルから庇うように立った。


「どうしますか、切りますか? つぶします?」


 物騒なことを言う。


「大丈夫よ、本当に何も無いわ。ちょっとお話してただけ。心配かけてごめんなさい」


 私の所業もなかったことにできないだろうか。


「き……君は、僕が怖くないのか?」


 呆けていたカイルが声を上げた。フリーズが溶けたらしい。よかった。

 むしろあなたのほうが私を怖がっていいと思います。本当にごめんなさい。反省してますので出禁にはしないでほしいです。


 あっ、でも私このセリフ知ってる。

 壁ドンイベントで、カイルのルートに入ってて、親密度が一定以上だと出るやつだ。

 ちなみに壁ドンの体制でやられるため、今みたいに尻もちついてちょっと間抜けな感じではないのだけど、これはこれで可愛くて良し。


「怖いわけないじゃない」


 ヒロインのようににっこり笑う。


「貴方は責任感が強い、真っ直ぐでとても優しい人。私にはわかるわ。大丈夫、まだやり直せる」


 推しに、セリフを振られれば、答えてしまうのがオタクの習性。


 カイルはぽかんと私を見上げている。少し眼鏡がずれている。貴重だ。



 +++



「カイル、どうしたんですか。最近は俺、意外と紳士なんだなって見直してたんですよ」


 レオンに引っ立てられるように書庫の外に出された。

 正直、無理に立たせてくれて助かった。なんだったのかまだ処理ができていない。


「僕は何もしていない、と、思うんだが」


 いや、しようとして反撃された……?


「突然、マグノリアに、綺麗だとか大好きとか言われて」

「あ?」


 まとめるとそういうことだったような気がするのだが何かが違う気もする。

 ほとんど何を言っているのか理解できなかったが、今まで感じたことのない量の……なんだあれは、愛情? 愛情なのか? なにかドロドロとした情熱のようなものは伝わってきた。


 最後は、いつもの可愛らしい笑顔に戻っていたが、早口で何か言っていた時は目が血走っていて口元がにやけていて、恐怖を感じた。僕を怖がらせるとは、さすがノワールの娘だ。


「それで驚いて、いたら、君たちが」

「……俺が聞いたのは、あんたが人払いして彼女を乱暴に引きずってったって話だったが」

「た、確かにそうだった、はず……?」


 なぜ秘密を知っているのか聞き出そうとして、怖がらせようと思いかなり乱暴に接したはずだ。

 マグノリアに怖がられて、嫌われる覚悟もしたはずなのだが。


「しばらく頭を冷やせ」


 レオンに乱暴に自室に放り込まれこまれた。

 正直、まだ、整理ができていない。


 ーー『貴方は責任感が強い、真っ直ぐでとても優しい人。私にはわかるわ』ーー


 ただ、聖女のような笑顔と言葉。



 それから、僕の手を優しく包んで「好き」と言ったことは、理解できた。



 +++



「怖い思いをさせたね、もう大丈夫だ」

「いえ、お父様、あの、ほんとにですね、むしろ私のほうが加害者というか」

「そうやって自分を責めなくて良いのだよ」


 お父様が放してくれない。


「家にいてやれなくてすまなかったね。しばらく聖堂はお休みするかい? 家にいるのがつらければ、ルージュに頼んでみようか。カイルはしばらく兄のところへ戻そう。……やはり、後継にするのは早かったな」

「本当に、本当に大丈夫ですから。お兄様もそのままで……ど、どうか私からお兄様を奪わないで」


 本人が逃げたがるかもしれないが。身の危険を感じて。


「私が心配なのだよ。聖堂へ行くのなら、レオン君に送ってもらいなさい。あんなことがあった後に馬車で二人きりなど絶対に許可できない」

「もちろんです。マグノリア、お義父様からしばらくこちらへ逗留する許可もいただきましたので、俺がつきっきりで護ります」

「ルージュの騎士がいてくれれば安心だな」


 レオンが帰ってくれない。

 いま、さりげなくお義父様って言わなかった……?


 大丈夫? 私、王子の婚約者の地位守れてる?


「君がすぐ知らせてくれたから大事にならずに済んだ。心から礼を言うよ、レオン君。これからも娘を頼む」

「もっと早くノワール公とお話ししておくべきでした。屋敷の中のことまではお守りできず、慚愧の念に堪えません」

「今回のことで家人も君のことはよく分かっただろう。そうだ、これからもいつでも来られるように、屋敷の中に君の部屋も用意しておこう」

「ありがとうございます。できればすぐに駆け付けられるよう、お嬢様の自室の近くに」


 まって、なんか外堀埋められてない? 本当に、大丈夫なの?


「お、お父様、私、アルフレッド殿下の婚約者ですから。あまり、男性を近くに置くのはよろしくないのではないかしら」

「マグノリア。大丈夫ですよ。俺はルージュの騎士ですから。絶対にあなたが嫌がることはしません。ルージュの騎士は、主人の幸せのために動くのですから。」


 うんうん、と、お父様まで頷いている。


 ほんと、騎士っていえば何でも許されると思ってるな……



ありがとうございます。次で第一章終わりです!

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