表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/81

トットルッチェの追憶

深い森の奥に一人の魔女が住んでいた。

魔女の名は、ジルルキンハイドラ。

その姿は幼女の姿をしているが、数百年の歳月を生き、その知識は海よりも深く、ありとあらゆる妙薬の知識をもっていた。

そして、遠くを見渡せる千里眼をもち、彼女の知らないことなどこの世にはないとさえいわれている。

俗世を嫌い、一人で暮らしている。

ある日、一匹のライオンが彼女のもとを訪れた。


その時どこをどうやってその場所まで、たどり着いたのか分からなかった。

若いオスにハーレムを追い出され、森をさまよっていた。

偶然見つけたシカを襲おうとして、逆にその角で足を怪我してしまった。

もう満足に獲物を追うこともできないだろう。

僕は死を覚悟し、死に場所を求め、たださまよっていた。

「あら?珍しいお客さんね〜」

声がしたその先には、人間の女の子がいた。

その女の子は不用意に近づいてくる。

襲おうと思えば襲えたが、何もやる気の起きなかった僕は、ただ彼女のなすがままにされていた。

彼女が小瓶に入った薬品を僕の足にかけると、熱い痛みが走った。

思わず低く吠え、彼女に爪を立てそうになるが、

「ごめんごめん。しみるよね〜」

そう言いながら、僕を押さえつけ、彼女は容赦なく液体を流し込むのだった。

「よおし!こんなものかな?」

彼女は僕の足に包帯を巻き、腰に手を当てて胸を張った。

僕は足に違和感を覚えた。

先程までの痛みがウソのように消えている。

僕は良くなった足に驚き、目を丸くした。


「さあ、もう何処にでも行ってもいいよ。ちゃんと治ったからね」

「・・・」

「どうして動かないの?・・・そう、もう戻るところが無いんだね。子供は殺され、今まで君を慕ってきたメスたちは、他のオスに夢中か・・・」

「・・・」

「だったら、居たいんだったらここにいてもいいよ。私も一人じゃ暇な時もあるし」


その後、彼女は家からナイフを一本持ってきた。

彼女はナイフの先を見ようとはしないで、危なっかしい手つきで、指先を少し切った。

ぽたぽたと赤い雫が垂れている。

「居たいんだったら、舐めると良いよ。でも、もしほかに行きたい所があるなら、やめといた方がいい。大変なことになるから」

何か含みのある言い方に、警戒してしまうのだが、僕は血のいい匂いに誘われて、その雫をひと舐めしてしまった。

瞬間、背を鈍器で殴られるような痛みに襲われ、軽く呼吸困難になる。

心臓を鷲掴みにされたように、締め付けられる。

全身の血管を蛇がはいずるような感覚に襲われた。

僕は転げ回り、何とか体に入った毒のようなものを出そうとするが、何の抵抗もできなかった。

気がつくと、全身の毛は黒色へと変化していた。

「ようこそ。私はジル、ジルルキンハイドラよ」

彼女はもうろうとする僕に、手を差し伸べていた。


「トットルッチェとジル姉にもそんな過去があったのね♪」

「あの時血に誘われて舐めないでいたらとか、少し考えるけどねー。まあ、舐めちゃったもんは仕方ないしねー」

「初めて会った時ってそんな感じだったけ〜。私が覚えてんのは、トットルッチェが熊に追われて『助けてー』って印象しかないんだけど」

「あ、あれ?ジル。いつからここにいたの?」

「初めからいたよ〜。二人がお話しをし始めてからずっと」

「もしかしてトットルッチェ。今までのお話って全部ウソだったの?」

「そ、そんなことないよ。大まかにはあってるよ。嘘じゃないよー。ティナ、そんな目で見ないでー」

その後、ジルルキンハイドラの妹、ティナエルジカに新しい従者ができたのは、間もなくのことである。

栖坂月先生


よく出来たでっち上げでした。

それっぽい話にしっかりと作ってあり、トットルッチェの利口さが垣間見えます。リアリティの表現として、とても勉強になりましたね。

それにしても『助けてー』とかライオンが悲鳴を上げていたりするのは、かなり情けない話ですな。トットルッチェが隠したくなる気持ちもわかります。といより、最初から人語を話していたんですな。

また来ます。それでは

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ