表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/81

一途な思いと、秋の空

『ねえ、ねえ、愛美ちゃん好きな人いるでしょ?』

麗子がそう行った時、私はぞっとした。

ついに、ばれたかと。

『ねえ、誰なの?教えてよ〜』

どうやら、ばれていなかったようだ。

私は、ほっと息を吐いて答える。

『そんな人いないわよ』

『ええ〜、嘘〜。だって愛美ちゃん、恋する乙女の目してるよ』

『どんな目だ?それは。だいたい私は麗子と違って、乙女モードには縁がないの』

事実そうであれば、私の心はどんなに楽か。

『そんなのさみしいよ。絶対恋愛したほうがいいよ。好きって気持ちすごく大事だよ』

『それはうまくいっている人の言葉でしょ』

私は思わず、口を滑らせた。

しまったと思いながら、麗子を見ると、彼女の瞳はキラキラと輝いていた。

『やっぱり恋してるんじゃん。しかも叶わぬ恋って奴?誰誰相手って?もしかして不倫?』

野次馬根性丸出しである。

その気持ちは分からないでもないが、友人に対する態度としてはどうかと思う。

しつこく聞いてくる麗子に対し、イライラを覚えながらも、もうどうにでもなれと告白してしまう。

『雅臣。あんたの恋人の雅臣よ』

眉間にしわを寄せながら、麗子を見ると、麗子は固まっていた。

『・・・マジ?』

『マジ』

それから私たちは言葉少なに、相談した。

私はずっと眉間にしわが寄ったままで、麗子は薄い中途半端な笑顔を張りつけたままであった。

それから何でこの結論に至ったのか、よく分からないのだが、

「麗子から事情は、聞いてるわよね?分かってると思うけど、別にあんたと麗子の間をどうこうしようって気はないから。私のけじめだから」

「ああ」

雅臣は私の前にいる。

彼女に言われたからって、ノコノコ来んじゃねえと思いながらも、来てくれて嬉しい自分も半分いることが、悲しかった。

「じゃあ、言うから」

「ああ」

私は深呼吸を三回して、雅臣を睨めつけた。

「・・・私はあんたのことが好きだ」

雅臣の表情は、私の言葉には一切動じず、ただ私のことをじっと見てくれていた。

期待なんてしていない、でも。

「知ってる。いや、知ってた。でも俺、麗子のことが大切だから・・・」

「ごめん。それ以上は・・・お願い・・・」

私は彼の言葉をさえぎり、泣き崩れていた。

彼はその姿を見ていた。

慰めてもくれない。

冷たい男だと思った。

でも、好きだった。

「こういう時は、抱きしめてくれるもんじゃないのか?」

涙声で、精一杯の強がり。

「でも、麗子そこにいるからなあ。後で変な誤解されても困る。というか絶対するしな・・・」

彼を見上げると、困った表情をしていた。

彼の差す方向を見ると、隠れているつもりの麗子がいた。

頭隠して尻隠さずとは、よくいったもので、彼女の姿を見れば一発でばれるだろう。

しかし、そんな彼女にも気付かないほど、私はテンパっていたのだと思うと、苦笑してしまう。

「じゃあ。何?麗子がいなきゃ、抱きしめてくれてたって訳?」

意地悪な私の質問に、雅臣は悩んでしまう。

「何迷ってんのよ。そこは迷わず、否定するところでしょ」

「いや、どう断ったら黒木を傷つけずに済むかなっと・・・」

「その言葉が一番傷つくっての!」

私は雅臣の腹に、空手初段の正拳突きを喰らわすと、崩れ落ちた雅臣をおいて、麗子のもとに向かう。

「麗子!」

あわてふためく麗子。

だが、やがて観念したのか、ばつの悪そうに出てきた。

私は彼女に感謝していた。

素直になれてよかった。

だって、今。

泣きながら、笑っていられるから。

午雲先生


泥沼の三角・関係・・・心ここにあらず、絶えず彼女(麗子)に気をつかってる、雅臣くんが哀れです。幻想・粉砕を期した正拳突きっ!?愛美の幻滅した気持ちがよく現われて居ると見えました(汗)。話してみたら、秋の空ってヤツですかね(微笑)。しかし、雅臣くん、かわいそ過ぎるーー!?感想でした。


八町先生


僕と作者とでは、年が違うのか、それに併せて性別も違うのか分かりませんが、相手に対する思いやりの面で、違和感を覚えました。もっともこれが今の若い人の恋愛感であれば、それはそれで仕方ないと思いますが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ