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魔女ジルルキンハイドラへの嫌がらせ

深い森の奥に一人の魔女が住んでいた。

魔女の名は、ジルルキンハイドラ。

その姿は幼女の姿をしているが、数百年の歳月を生き、その知識は海よりも深く、ありとあらゆる妙薬の知識をもっていた。

そして、遠くを見渡せる千里眼をもち、彼女の知らないことなどこの世にはないとさえいわれている。

俗世を嫌い、一匹のペットと暮らしている。

ペットの名はトットルッチェ。

人語を解する稀有な黒いライオンである。

ある日のことである。

ジルルキンハイドラの妹、ティナエルジカが彼女のもとを訪れた。


「やっほー、トットルッチェ、元気♪」

玄関に現れた色っぽい女性を、トットルッチェはたてがみを手入れしながら出迎えた。

「ああ、ティナ。どうしたの?」

「ジル姉は今どこにいるの?」

「寝てるよ」

「そう」

「起こしに行く?」

首をぶんぶん振りながら、ティナは答える。

「どうなるか分かってて言ってる?」

「うん。僕が初め起こしに行ったら、髭を三本もむしられた」

「髭ならいいけど、私なんか腕一本丸ごと持ってかれそうになったわよ」

「寝ぼけてるから容赦ないもんねー」

二人は共通の悪夢を共感して、うんうんとうなずく。

「そういえば、ティナってジルの妹なんだよね。何でジルよりおっきいの?前から疑問だったんだけど」

「ああ、私はずっとウルばあちゃんのとこにいたから」

「もしかしてメルフォキアが・・・」

「ええ、いつも人参のフルコースをつくってくれたわ。おかげで今でも人参見ると・・・」

「なんかジルが野菜嫌いになったのも納得できるよ」

トットルッチェは、ティナの遠くをみる姿を見て、金色のウサギの悪夢を思い出してしまい、身震いを一つした。

「どうするジル起きるまで待っとく?」

「いえ、いいわ。まあ、間が悪かったみたいね。出直してくるわ」

「うん。そうだね」


「ジル、おはよ」

「・・・おはよ〜。トットルッチェ、誰か来てたの?」

「うん。ティナが。さっき帰ったばかりだから、追えば追いつくかも」

「いいよ〜。どうせティナのことだから、そこら辺にいるわよ」

「ああ、いつものね。そういえば、何でティナってジルのこと目の敵にしてるの?」

「さあ?私、なんかしたかな〜」


「ふっふっふ、早く出てらっしゃい、ジル姉様。今度という今度は必ずぎゃふんと言わせてやるんだから」

茂みに隠れているティナ。

「出てきたが最後、落とし穴で奈落の底に。そして底にはスライムの軍団が。哀れジル姉様は、口ではとても言えないようなとんでもないことに・・・」

ティナの高笑いが森じゅうに響いた。

ジルの家の扉が開く。

ティナはあわてて茂みに隠れ、様子をじっと見つめる。

「じゃあ、ジル。行ってくるよ」

(ああ、トットルッチェ、駄目よ。あなたが落ちても何の意味もないわ)

トットルッチェは、ひょいっと落とし穴を掘っているところを飛び越えると、すたすたと森の中に消えた。

(・・・まさかばれてる?・・・違うわよね。野生動物の勘ってやつよね・・・早くジル姉様出てらっしゃい!地獄を見せてやるわ!)

また森じゅうにティナの高笑いが響いた。

それから一週間が過ぎた。

「・・・何で出てこないの!ジル姉のことだから、本読んでるか、薬の調合でもしてるんでしょうけど、ひきこもるのもたいがいにしなさいよ!一言文句言ってやる」

怒り心頭のティナは、ずんずんとジルの家に近づく。

そして、

「きゃあああああーーーー」

落とし穴に落ちた。


「ジル、なんか声しなかった?」

「うん。今いいところだから。食事は後でいいや」

「いや、そうじゃなくて・・・まあ、本読み終わってからでもいいか」

その後、あらゆる意味で瀕死のティナが救いだされたのは、三日後のことであった。

水守中也先生


このシリーズ、いつも楽しく読ませてもらっています。

新キャラ登場で、さらに楽しくなりそうですね。トットルッチェとティナの会話に出てきた、ウルばあちゃんも気になります。


ティナの落とし穴にですが、ジルのことですから、ばればれだったというより、本気でひきこもっていたんでしょうね。あわせて十日間も(笑)


栖坂月先生


ジルルキンハイドラシリーズは、読んでて落ち着きます。

それにしても、姉のジルは何だかんだ言って利口者なので魔女という肩書きに違和感もないのですが、妹さんが魔女というのは違和感がありまくりですな。

それとも、この世界の魔女は『成る』ものではなく『生まれる』ものなんでしょうか。だとしたら納得ですね。ドジな魔女というのは、キャラ的にもおいしいです。

ただ今回、序盤のティナとトットルッチェのやり取りの中で、ティナがジルを目の敵にしているような描写が見られなかったので、ジルの口からそんな話が聞こえた時に、納得感がありませんでした。何かこう、人参をお土産に持ってくるような『嫌がらせ』があれば、しっくりきたように思いました。

それにしても、山羊ノ宮先生のペースは速いですな。しかも長期連載もしっかり進んでいらっしゃる。感心させられます。

また来ます。それでは

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