表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/81

魔女ジルルキンハイドラへのお願い

深い森の奥に一人の魔女が住んでいた。

魔女の名は、ジルルキンハイドラ。

その姿は幼女の姿をしているが、数百年の歳月を生き、その知識は海よりも深く、ありとあらゆる妙薬の知識をもっていた。

そして、遠くを見渡せる千里眼をもち、彼女の知らないことなどこの世にはないとさえいわれている。

俗世を嫌い、一匹のペットと暮らしている。

ペットの名はトットルッチェ。

人語を解する稀有な黒いライオンである。

ある日のことである。

一人の男の子が、彼女のもとへ訪れた。


「すみません。ジルルキンハイドラ様はいらっしゃいますか?」

「ふぁ〜〜〜い」

ジルは両手にナイフとフォークを持ってやってきた。

そして、男の子を見るとその両方を床に落としてしまった。

「どうしたの、ジル。お客さん?」

少し様子がおかしいジルを見て、トットルッチェは奥から姿を現す。

「どうしよう〜、トットルッチェ・・・この子、可愛い・・・」

トットルッチェが男の子を見てやると、男の子はビクッとした。

「ジルの好みって、こんな子なの?」

ジルは、トットルッチェに向かって神妙にうなずいた。

「ふーん」

「僕、アトレイアっていいます。僕のお父さんが病気で。でも、お医者さんには治せないって言われて。だから、お薬欲しくって・・・」

アトレイアは、あくびするトットルッチェにおびえながら、ジルに説明する。

「要するにお父さんの病気を治す薬が欲しいのね?」

「はい!」

アトレイアは、話が通じたのが嬉しくて、満面の笑顔である。

ジルはその笑顔を見て、にへらと笑みがこぼれてしまう。

「でもタダってわけには・・・」

「・・・僕、お金あんまり持ってないです・・・」

しゅんとするアトレイアをウルウルとジルは見つめている。

「じゃ、じゃあ、体で払うってのは駄目ですか?」

上目づかいにジルを見つめるアトレイア。

ジルは鼻血の花を咲かせて、その場に倒れた。

「ジ、ジルルキンハイドラ様?!」

「ああ、大丈夫、大丈夫。ジルってば、男日照りの、耳年増だから想像力がたくましくって。あとで薬持っていくから、外で待っててよ」

「は、はい」

アトレイアはジルを心配そうに見つめながら、外へ出ていく。

「それでジル、薬は何処?」

「そこの棚の・・・上の段・・・右から三番目・・・」

ジルはひくひくしながら、震える手で指差した。

トットルッチェは薬と取ると、アトレイアに渡した。

アトレイアはトットルッチェにお礼を言うと、家へと急いで帰って行った。


「ジル、大丈夫?」

「うん、もう大丈夫・・・にへら」

「ジル、楽しそうなところ悪いんだけど。多分ジルの思っているような展開はないと思うよー」

「何でよ〜。何でそんな不吉なこと言うの?」

「野生の勘、かな?」

「そんなの信じないんだから〜。私にだって百年に一度のラブロマンスだって・・・にへら」

「だめだこりゃ」


数日後、アトレイアはまたジルのもとを訪れた。

「ありがとうございます。ジルルキンハイドラ様。お父さん、元気になったよ!」

アトレイアはジルの両手をつかんで、ブンブンと握手していた。

ジルの顔は緩みっぱなしである。

「これこれ、アトレイア。ジルルキンハイドラ様に失礼だろ」

アトレイアの後ろから大柄の男が現れた。

「お久しぶりでございます。ジルルキンハイドラ様。このたびは大変お世話になりました」

大柄の男は深々と頭を下げた。

「ええっと、どこかでお会いしましたっけ?」

ジルは見おぼえない男に、首を傾げた。

男はにっこりと笑った。

「覚えておいででしょうか?私、オルソンと申します。私が子供の頃でございます。よくこの森に友人たちとともに遊びに来ておりました。その折、ジルルキンハイドラ様ともご一緒に遊ばさせていただきました。後でそのことが大人たちにばれてこっぴどく怒られたものです。無知ゆえの無礼、その節は失礼いたしました」

「ああ・・・そんなことも・・・」

「それでこの度のお礼、私たちでできることでよければ何でもいたしますが・・・」

「おとうさーん!ここに畑あるよ!」

「ああ、そういえばメルフォキアが勝手に家の隣に人参畑作ってたねー。もうほったらかしだけど」

「それでしたら、私たちで手入れいたしましょう」

「でも、人参食べないしなー」

「では、ほかの作物を育てましょうか?」

「うん、そうだね。果物とか、甘いものならジルも食べるし。ね、ジル?」

「・・・あ?・・・そだね」

アトレイア親子は、畑の手入れを始めた。

彼らは作業が一段落つくと、また来ますと言って、家へ帰って行った。


「ジル、元気ない?」

「うん・・・なんか、オルソンたちと遊んだのって、つい最近なのになって思って。私だけ取り残されてるなあって」

「さみしいの?」

「うん。ちょっとだけ・・・でも今はトットルッチェがいるから、大丈夫」

「でも、いずれは僕も死んじゃうよ」

「うん」

「できるだけ、そばにいるから。ごめんね」

「うん」

その後もトットルッチェの命尽きるまで、ジルルキンハイドラの傍らにその姿はあった。

神村律子先生


むう?

高千穂某先生の「DPの云々」と同じで、シリーズものなのですね。

ジルちゃん、いいキャラっす(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ