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夏は終わらない

「今度の大会、優勝できたら結婚してくれ」

「・・・」

負けられない。

俺はそんな気持ちから、自然とプロポーズの言葉を口にしていた。

彼女はいつ通り無言で、俺を受け入れてくれた。


さんさんと太陽が照りつける中、

屈強な男たちが皆、自分の球を磨いている。

「俺は強い、俺は強い、俺は・・・」

「ぬおおおぉぉぉぉぉ!」

各々が思い思いの言葉をつぶやき、時に叫び、自分の気持ちを高める。

俺の順番が来た。

アンモニアを鼻から吸い込み、咆哮する。

白線のサークルの中に入り、球を首に挟んだ。

いよいよだ。

俺は高鳴る鼓動を抑え、深呼吸する。

そして、

勢いをつけ、遠心力とともに彼女を放った。

「行けーーー!マイハニーーーー!」

ゆるい放物線をえがき、彼女は飛んでいく。

彼女はドスンと鈍い音を立てて、地面に落ちた。

審判員が彼女のもとに近づく。

「十五メータ、七十!」

俺の自己ベストだ。

この大会ではほかにこの記録を塗り替えれそうな者はいないだろう。

俺の優勝は決まったようなものだ。

俺は彼女、砲丸の球に愛しているよと囁いた。

人間の女なんてもうこりごりだ。

あいつらは嘘ばっかり。

結局俺の体が目当てだったのだ。

俺にはお前しかいないよ、ハニー。


「ああ!さっき砲丸投げてた方ですよね?」

「はい、そうですけど」

女の子のグループがわらわらと俺に寄ってくる。

ふん、貴様らになどもう興味はないわ。

俺にはハニーがいるからな。

「見てました!すごかったです。砲丸の球ってあんなに飛ぶもんなんですね」

「うわあ!すごい筋肉。触ってもいいですか?」

「いいけど・・・」

「腕、太!」

「胸板大きい!うわ、動いた。ほら、見て。ぴくぴくする〜」

「ほんとだ。すごーい」

俺はにんまりとした。

「よかったら、この後一緒に食事なんか行きます?」

「行きます〜♪」


男のカバンの中で砲丸は思う。

所詮人間の男なんて、そんなものか、と。

栖坂月先生


タイトルが似ていたので、夏の終わりと比較して読んでしまいました。

向こうが純愛だとしたら、こちらは偏愛でしょうか。しかも浮気性ときている。

サイテーです(笑)

実は私、偏愛って結構ネタ的に好きなんですよ。むしろこれこそ、素直で真摯な(あるいは紳士な)愛の形だと思ってしまいます。しかもそんな真っ直ぐな思いが、アッサリ肉欲に負けようとは、さすがは山羊ノ宮先生ですな。

楽しませていただきました。また来ます。それでは


午雲先生


山羊の宮先生、夏は終わらない、作品読ませてもらいました。暑苦しいというか、熱血というか、夏の終わり、との落差もあって、正直、笑ってしまいました。サッカー少年ならボールと一緒に寝るとか・・・時にはサッカーボールにキスをする夜もあるか知れません。マイ・ボールで独りボーリングに汗するおっちゃんなんて、見てると本当に球を愛してそう。プロポーズまではしなくとも、愛称くらいはつけてそうですね(笑)。これも一応、ハッピイエンドじゃないですか?人間的には・・・感想でした。


神村律子先生


はい、早速来ましたよ(笑)

なかなかわかり易い男の一面ですね。

ご本人の私小説ってことはないですよね?

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