表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/81

私の心臓は小動物の如く

「あなたが好きです」

私は天井に向かって言った。

もちろん私は、天井が好きなのではない。

言うはずの相手を想像して、一人で盛り上がって、ベッドの上でぬいぐるみを抱えてゴロゴロする。

告白を決心したのに、どうしたらいいのか分からなかった。

やっぱりメールで告白したほうがいいのだろうか?

なんか面と向かってだと、緊張してちゃんとできない気がしてきた。

あらかじめ書いておいた紙のラブレターを携帯の画面に写しながらそんなことを思う。

本当は、直接会って告白したいんだけど、相手のことを考えただけでどうにかなりそうなのに、本番で正気でいられる気がしない。

携帯の画面は、あとは送信するだけで相手に届く。

やっぱり直接告白しよう。

もし呼び出すことさえできなかったら、メールで告白。

二人きりになって、その時にテンパっちゃたら手紙で告白。

よし、そうしよう。

でもやっぱなあ・・・

など考えが堂々巡りしていたら、眠くなってしまって、いつのまにか寝ていた。


朝、いつもなら携帯のアラームで起きるのだが、その日はなかった。

まさかっと思って携帯を見たら、案の定電池切れである。

昨日充電しなかった自分を呪いながら、今日の告白をどうするか迷った。

なんだか運が悪い気がする。

しかし、もう友人に今日のことを話してしまっている。

散々相談して、やっぱりやめるというのも気が引ける。

途中で何とか充電するとして、とりあえず彼を選んだ。

気合を入れすぎて化粧したら、逆に彼に引かれるわよと、友人の注意通り薄めに化粧した。

鏡の中の自分を見ながら、いつもと変わらない様子に不安を感じた。

こんなのでいいのか?

本当に?

もしだめだったら友人のせいである。

私はペッタンコのかばんをもって、学校に向かった。


その日の放課後、彼を待っていた。

奇跡的に彼を誘うことができた。

誰だ今日は運が悪いとかいった奴は?

「よう」

「うん」

彼が来た。

普段何気なく話しているのに、意識しているせいで二人とも気まずい。

「あのね・・・」

「分かってる。メールの話だよな」

メール?

彼には結局メールは送ってなかった気がする。

考えられるとしたら、寝ぼけて送信したかだ。

寝ぼけて何をしているんだ、私は!

いや、送信しただけだが。

まずい。

まだ携帯は充電機とともにカバンの中である。

メールチェックしてないよ〜。

「やっぱりこういうのはちゃんと、面と向かって言わないといけないよな。けじめとして」

それは内容次第である。

逃げ出したい!

逃げ出したい!

逃げ出したい!!

「俺と付き合ってくれ」

「え・・・うそ」

「嘘じゃないって、俺も前から好きだった。っていうか。まあ、そんな感じだ」

「なんか・・・信じられない」

「信じられないって。昨日メール送っただろ。あのメールのせいで今日寝不足なんだから。もしかしてお前メール読んでねえんじゃないか?俺があんだけ苦しんで書いたメール」

「そ、そんなことない・・・そんなことないけど」

私は泣いていた。

緊張から解かれて、涙腺もゆるんだのだろう。

「泣くことないだろ。わるかったよ。言いすぎた」

「ちがうの。別に・・・悪くない」

「なら、いいけど」

嬉しくて涙があふれた。

何でこんなに涙が出るんだろう。

そうか。

今まであった悲しいこととか、苦しいこととかが出ていってるんだ。

そうやって空っぽになった私に、彼が入り込んでくる。

これから幸せでいっぱいにするために、

私はそう思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ