私の心臓は小動物の如く
「あなたが好きです」
私は天井に向かって言った。
もちろん私は、天井が好きなのではない。
言うはずの相手を想像して、一人で盛り上がって、ベッドの上でぬいぐるみを抱えてゴロゴロする。
告白を決心したのに、どうしたらいいのか分からなかった。
やっぱりメールで告白したほうがいいのだろうか?
なんか面と向かってだと、緊張してちゃんとできない気がしてきた。
あらかじめ書いておいた紙のラブレターを携帯の画面に写しながらそんなことを思う。
本当は、直接会って告白したいんだけど、相手のことを考えただけでどうにかなりそうなのに、本番で正気でいられる気がしない。
携帯の画面は、あとは送信するだけで相手に届く。
やっぱり直接告白しよう。
もし呼び出すことさえできなかったら、メールで告白。
二人きりになって、その時にテンパっちゃたら手紙で告白。
よし、そうしよう。
でもやっぱなあ・・・
など考えが堂々巡りしていたら、眠くなってしまって、いつのまにか寝ていた。
朝、いつもなら携帯のアラームで起きるのだが、その日はなかった。
まさかっと思って携帯を見たら、案の定電池切れである。
昨日充電しなかった自分を呪いながら、今日の告白をどうするか迷った。
なんだか運が悪い気がする。
しかし、もう友人に今日のことを話してしまっている。
散々相談して、やっぱりやめるというのも気が引ける。
途中で何とか充電するとして、とりあえず彼を選んだ。
気合を入れすぎて化粧したら、逆に彼に引かれるわよと、友人の注意通り薄めに化粧した。
鏡の中の自分を見ながら、いつもと変わらない様子に不安を感じた。
こんなのでいいのか?
本当に?
もしだめだったら友人のせいである。
私はペッタンコのかばんをもって、学校に向かった。
その日の放課後、彼を待っていた。
奇跡的に彼を誘うことができた。
誰だ今日は運が悪いとかいった奴は?
「よう」
「うん」
彼が来た。
普段何気なく話しているのに、意識しているせいで二人とも気まずい。
「あのね・・・」
「分かってる。メールの話だよな」
メール?
彼には結局メールは送ってなかった気がする。
考えられるとしたら、寝ぼけて送信したかだ。
寝ぼけて何をしているんだ、私は!
いや、送信しただけだが。
まずい。
まだ携帯は充電機とともにカバンの中である。
メールチェックしてないよ〜。
「やっぱりこういうのはちゃんと、面と向かって言わないといけないよな。けじめとして」
それは内容次第である。
逃げ出したい!
逃げ出したい!
逃げ出したい!!
「俺と付き合ってくれ」
「え・・・うそ」
「嘘じゃないって、俺も前から好きだった。っていうか。まあ、そんな感じだ」
「なんか・・・信じられない」
「信じられないって。昨日メール送っただろ。あのメールのせいで今日寝不足なんだから。もしかしてお前メール読んでねえんじゃないか?俺があんだけ苦しんで書いたメール」
「そ、そんなことない・・・そんなことないけど」
私は泣いていた。
緊張から解かれて、涙腺もゆるんだのだろう。
「泣くことないだろ。わるかったよ。言いすぎた」
「ちがうの。別に・・・悪くない」
「なら、いいけど」
嬉しくて涙があふれた。
何でこんなに涙が出るんだろう。
そうか。
今まであった悲しいこととか、苦しいこととかが出ていってるんだ。
そうやって空っぽになった私に、彼が入り込んでくる。
これから幸せでいっぱいにするために、
私はそう思った。