Aの決意
「彼女が欲しい」
Aは何思ったのかそう呟いた。
「がんばれ」
俺は励ました。
「欲しいだろ、お前も」
「いや、いらん」
「今、はやりの草食男子気取りか?」
「枯れ草の間違いだろ」
「なんでそんな興味ないの?信じられん」
「めんどくさいだろうが。わざわざなんでそんなことに首突っ込まにゃならんのだ」
「お前には男としての本能はないのか?たぎる情熱はないのか?パッション!」
「ない」
「実はお前、本当は女の子とか言う設定?」
「そんな気色悪い設定作るな」
「海行こう。海」
「脈絡ないな」
「ひと夏のアバンチュール。俺に触れると火傷するぜ」
「行きたきゃ勝手に行け。一人で好きなだけナンパしてくりゃいいだろ」
「だって。その・・・一人で女の子に声かけるのって恥ずかしい・・・」
「だからって巻き込むな」
「いちごミルク、宇治金時、ブルーハワイ・・・」
「うっ・・・」
「夏の暑い日差しに、冷たいかき氷。おいしいだろうな」
「お前のおごりな」
「やった!って言うかお前本当に甘いもの好きだよな。女みたい・・・」
「好きなものはしょうがないだろ」
「ちょっと服脱いでみる?」
「こんなにヒゲ生えた女がいるのか?」
「うーーん」
「考えるな。さっさと行くぞ」
Aと俺は海に来た。
「帰ってもいい?人に酔った」
「いや、何しに来たんだよ、ここまで」
「かき氷食べに・・・」
「ちがーう。運命の女の子との出会いを見つけにだよ。まだ何もイベント起こってないし」
「じゃあ、さっさと振られてこい」
「ひどいよ。お前」
しょんぼりするA。
Aと俺は少し離れた公園でかき氷を食べていた。
「信じられん」
「本当だよ」
「なんで練乳売り切れなんだよ。普通あるだろ。ストックが。これじゃいちごミルクが、ただのいちごだろうが!」
「だから一人で行くの嫌だったんだよ。心に今も深々ととげが刺さってるよ。これもみんな甘いもの魔人のせいだよ」
「もうわめくな。うっとおしい」
「練乳一つで延々と愚痴言われる身にもなってほしい」
「もういいだろ。目の保養ぐらいにはなっただろ」
「お前意外とエロいな。澄ました顔で、いけない妄想大爆発だな」
「俺をそんな変態扱いするな」
「実は女の子だしな」
「その設定いつになったら消えるんだ」
「俺に彼女ができたら」
「じゃあ、お見合いけ。お見合い」
「・・・まだ、俺結婚ははやいかな?・・・なんて・・・」
「くねくねするな。うっとおしい」
「よし!彼女つくるぞ!」
「がんばれー」
俺はA を励ました。
栖坂月先生
やっぱりコメディは落ち着くなー。
すいません。最近夏ホラーのせいでホラー系ばかり書いてるもので。
軽快な会話ですね。描写がなくても成立するような工夫も見られて、特に引っ掛かりや混乱もなく最後まで楽しめました。Aという人物を描く、という点に関しては成功しているように思います。
ただ、会話にこだわったのかなーと見受けられたのですが、それでも小粋な合いの手としての描写は、もう少しあっても良かったのかなと思いました。それと、オチが必要かどうかは個人差もあるので強要はしませんが、少なくとももう少しシッカリした締めは欲しかったように思います。
とはいえ、会話そのものは楽しませていただきました。
また来ます。それでは。
緑ねこ
流行りの草食系→枯れ草の間違いだろは面白かった