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自殺志願者のアンデットライフ  作者: 柊 誠
第一章 死の変化
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第一章5 兆し

ポタポタ水が固い鉄の床にあたる。

どうやら意識を失っていたようだ。

部屋の隅に視線を向けると、白百合さんが洋人形のように床に座り込んでいた。

そんな彼女が着ている服は布切れ一枚で、それもかなり汚れている。その姿はこれまで凄惨な目にあっていたのが一目でわかる。

そして彼女の透き通っていた目は、死体のように虚ろな目をしていた。


「白百合さん!」


僕は元いた世界にいたころを合わせても、7年ぶりに大きな声を出した。しかし、彼女は少しこちらを見た後、すぐにまた下を向いてしまった。考えてみると、今呼びかけたとしても元居た世界で彼女が必死で泣いて、呼び止めてくれたにもかかわらず、それを無碍にした僕が何を今更言えるというんだ。鋭く響く水滴の音だけだけが部屋中に響き渡る、静寂な時間が流れた。その時白百合さんとは別の方から男の声が聞こえた。


「生榊、お前ようやく目覚めたのかよ」


声のする方を向くとそこにはクラスメイトの山口光がいた。こいつは僕をいじめていた4人の内の1人だが、基本残りの3人についてくるだけで言葉以外では、直接僕に何かをしたことはない。


「なんでお前がここ―—」


僕が質問を言い終える前に山口が話し始めた。


「お前本当に化け物なんだな。なんども指も腕も切られてたのに、今はもうしっかりくっついて生えなおってんじゃねーか」


僕は疑問に思った。なぜこいつは、こっちの世界の僕と以前一度あったことがあるような口ぶりなんだ?ただ、今はそんなことを気にしている時間はない。一刻も早くここから出ないと。幸い白百合さんの体には凶器を向けられた跡はない。必死になって僕は何度も白百合さんに話しかけたが、1回目以降全く反応してくれない。


「無駄だぜ。白百合ちゃんはお前や、あいつが拷問に受けているところを見せられて精神がいかれちまった。かく言う俺もお前の姿を見るまでは同じ状態だったんだがな、、、」


そう言った山口の向いている先を見ると、そこには頭が転がっている。よく見てみると顔はこっちを向いているため、目をさらに凝らして見た。声にならない叫びが自分の中からこみあげてきた。そこに転がっていたのは目や鼻に木の棒が刺さり、瞼が糸で縫われた山崎の顔だった。「おえっっえ」何も食べていないから僕の中から胃液だけがあふれた。どんなに嫌な奴で殺したいと思っていても、ここまで残虐な死を目の当たりにすると喜びなんて感じられない。ここに来てもう何度吐いたかはわからないが、まだ経験したことがない気持ち悪さを感じている僕に山口は続けて話した。


「山崎はあいつに殺された。しかも2日間にわたって拷問された後にな。」


僕はあのイカれ野郎の狂気を再確認させられた。しかし、この死体が白崎さんのではなくてよかったとも思ってしまった。クラスメイトの死体が目の前にあるのにそんなことを思う僕ももう狂っているのかもしれない。


「おい、生榊、俺はあのイカれ野郎を絶対に殺す。たとえ俺がそれで死のうともだ。けど今の俺には火花程度の火属性魔法しかねぇ。だから協力しろ!」


覚悟と殺意のこもった目でこちらを見てきて山口はそう言った。あまりの圧に視線をそらすため、自分の足下に視線を向けると大量の砂があることに気づいた。これは俺の体が聖属性魔法によって傷をつけられたときに出たものだ。その剣はすぐそこの机の上に置いてある。そして、山口は火属性魔法、、、はっ


「思いついたぞ!ここから逃げ出す方法を!」


そう僕が言い終えると、山口に早速その方法を教えた。


「確かにそれならいけるかもな。まあ、お前がもうとっくに心まで化け物になっちまってんのには驚いちゃいるが、生榊のわりにはやるじゃねえか。」


山口の上から目線の誉め言葉に少しイラっと来たが、今は白百合さんを助けるためにも協力して行動しなくてはいけない。これは山口がいないと成り立たない計画だからな。


「そうと決まったら早速準備しよう!」


僕がそういうと、山口はナイフを手に持ち、つばを飲み込むと勢いよく僕にふるった。









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