第一章4 新たな客人
「おっはようーアンデットちゃん」
顔を上げるとまたあの男が立っていた。奴の顔を見るだけで「殺してやる」そんな思いが込み上げてくる。今日の男は昨日とはうって変わりナイフのようなものはもっていない。代わりに全身防護服のようなものを着て、鉄で出来た虫かごのようなものを持っていた。奴はその虫かごを僕の顔の近くまで持ってきた。よく見るとそこには小さなサソリのようなものが数十匹蠢いていた。
「なにそれ?って顔してるわね。大丈夫例え記憶が戻ったとしてもわからないと思うわよ。これはね砂漠地帯にだけ生息するレッドスコーピオンというサソリよ。この子こんなに小さいのに、この子から出るたった一滴の毒で人間100人は軽く殺すことができるの。すごいわよねー、、、、」
そういうと男はは僕の左目を無理やり手で抉り取ってきた。
「グルグワァーーーーー」
昨日の痛みと比べると大したことなかったが、突然のことで叫んでしまった。右目を抉られたことで視野が狭まった。どうやら目の回復は他の部分よりも少し遅いようだ。僕がそうして息遣いを荒くしていてると奴が話を続けてきた。
「今からあなたのその空洞になった目にこのサソリを入れてみようと思うの」
そうすると、奴は僕の目に虫かご、いや小さな牢獄の扉を開き僕の目に押し付けてきた。ガリガリゴソゴソガサゴソ、気持ちの悪い音を立てて僕の目の中に一匹更に一匹どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんはいってててててててきたたたたらまたた。
「うわぁーグリュリュグリュ頭があだまがくるぐるぐるんまわってくれりゆわゃなぐるあだだだだだだだだまあがくりゅこわれ、、、、る、」
「おほほほほほはほほほ、あなたやはりサイコーよ。その声、顔、回復力今まで見てきた子の中でどれを見ても飛び抜けて良いわ」
そのあと奴はサソリが僕の目から出ないようにテープで僕の目を塞いだ。その間もその後もずっと耳障りな笑い声をあげていた。何時間経ったのだろうか、気づくと奴の笑い声は聞こえなくなっていた。今日は少し気分が良かったのか気絶していても起こされることはなかった。只、今もずっと頭の中で何かが動いているのがわかる。なんとかして出したいがテープがきつく取れる気がしない。気持ち悪い。
「うぇぇぇーー」
こっちの世界に来てから何度吐いたかわからないけど、吐いたあともずっと気持ちが悪いのは今回が初めてだ。
その後も祐也は絶え間なく吐き続けた。胃の中には最初からなにもないためずっと胃液ばかりが出てきた。本当に部屋中ひどい匂いになっていた。ようやく吐き気が無くなった頃にはかなり時間が経っていた。コツコツコツコツ奴がやってくる音が聞こえる。ただ今日はいつもより音が大きい。まるで何か重い物を運んでいるみたいだ。ギィぃぃぃ扉が少しずつ開いてきた。
「おっはよーう、今日はあなたのために大きな鏡を持ってきてあげたわよ。」
僕は言っている意味が理解できなかった。
「あなたが記憶を無くしてから今日で三日目よ。そろそろ今の自分の姿を見たいんじゃないかと思ったのよ」
そういうと奴は僕に貼らさっていたテープを剥がした。何時間ぶりに目隠しを取られたことによって電球の光が眩しかった。抉り取られた目は完全に治っていた。ようやく目が慣れてくると、目の前の大きな鏡に映る自分が見えてきた。僕は言葉も出ず、ただ絶望した。
「なにも、、、変わって、ない、そんな、」
その現実が僕の心をへし折った。気づくと歯の隙間から声が洩れ、涙が溢れてきた。僕は変わっていると思っていたのだ、異世界に来て、こんな仕打ちを受けて、多少なり、アニメや漫画の主人公みたいに白髪だったり、特殊な目が開眼していたり、そんな厨二病ぽいけどありきたりな変化があるんじゃないかと思っていたんだ。それが僕がこの生活を耐えるための希望でもあったんだ。
「くうっ くっくっ ううっ うっうっ うわぁーあん」
本当に赤ん坊のように泣き続けた。
「あらら〜どうしたのかしらそんなに泣いて、まだ今日はなにもしていないのに、そうだ今日は涙腺を焼き切ってみようかしら」
奴はいつも通りそんなことを言っていた。
こんなことが何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も続いた。自分の体が壊されていくと同時に自分の心も壊れていった。気づくともう奴に対する殺意も反抗心もなくなった。ただ奴の気分を良くするために過剰に声を出したり、もがいたりした。ただ一向に僕が解放されることも殺されることもなかった。
もう何日経ったかもわからない、ただ過ぎていく時間の中僕は少しずつ痛覚がなくなっていった。そんなある日奴がいつもの数段気分良さそうに部屋に入ってきた、ゴロン、何か丸いものを僕の足元に投げてきた。
「!!」
朦朧としていた意識が冴えて行くのがわかった。その転がってきたものは人の頭だった。それも、僕の見覚えのある顔だった。
「吉村!」
久しぶりに無意識に大きな声が出た。顔は拷問されたのか釘が何本も刺さっていて、歯も抜けていたが、この顔は確かに吉村だ。
「何でこんな所に吉村が...」
「あ〜ら、あなたの知り合いだったの?ごめんなさいね、すでに壊れちゃったわ。三日前くらいに拾ったんだけど、あなたと遊ぶ調子でやっちゃったからすぐ壊れちゃったわ。やだやだ次からはちゃ〜んと気をつけなくちゃね!」
そういう奴の右手には二つのチェーンが握られていた。
「じゃあこの子達もあなたの知り合いかもね!おいでー」
そういうと奴の入ってきた扉から見覚えのある男と白髪で水色の瞳をした女の子が入ってきた。
「白百合さん!!」
僕は咄嗟に彼女の名前を呼んでいた。彼女はそっと、こっちに顔を向けたがすぐに顔を下にしてしまった。一瞬見えた彼女の瞳は以前のような透き通った水色ではなく、濁った水の色に見えた。
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