第一章3 知識
今日の男は腰に何本か果物ナイフのようなものを鍵のようにぶら下げていた。ん?なんだあれは10本近くあるナイフのうち、1つだけやけに光っているのがある。それに気づくと何故か僕は拘束された手足をバタバタ暴れさせ体を男か近づいてくる方向と逆方向にひねろうとしていた。それはまるであのナイフはやばいと僕の化け物になった体が教えてくるようだった。
「あら、や〜だそんなに私を拒絶しているの?な〜んて冗談よあなたの体が反応しているのはこのナイフに対してじゃないかしら?」
男はそういうとその光ったナイフを岩のようにゴツゴツした手でひょいっと腰から取って僕に見せた。
「このナイフはね、あなた達アンデットに唯一強いダメージを与えることができる光属性の恩恵を纏ったものなの。本当はアンデットに使うと傷が治るまでの時間が長くなるから使わないつもりだったんだけど、あなたの回復力はアンデットの中でも異質だから使えるんじゃないかと思って持ってきたのよ」
そういうと男はニヤリと笑い僕の指を光のナイフでぶつりと切り落としてきた。
「っっっっぐわぁーぁぁぁぁぁーー」
痛い痛い痛い昨日の火炙りとは比にならない痛みが襲ってきた。まるで切られた断面からさらにナイフで肉を抉り取ってその中に溶岩でも流し込まれている感じだ。こんなの昨日と同じ時間近くくらったら正気を保てなくなる。
「う〜ん、なんとも良い断末魔、心地よいクラシックを聞いている気分だわ。もし再生に時間がかかるようだったら普通のナイフにしようと思ってたけどその必要はなさそうね」
そう言ったやつの視線の先を見るとそこには切られたはずの僕の指はなく、代わりに白い砂のようなものが大量にあった。それに加えさっき切られたはずの指は傷一つなくすでに治っていた。
「どうして...も..う治ってるんだよ...」
そう言って涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった僕の顔を奴は掴み上げてこう言った。
「さぁ続けましょう」
奴が僕に拷問を続けながら命令してきたことがある。それは、「奴が言ったことを繰り返し話せ」というものだった。奴は記憶喪失になっている僕のためにこの世界の常識を教えると言っていたが後に、それは僕に知識を与え、頭を使わせることでなるべく長い時間正気を保たせるためのものだと気づいた。
「この世界には魔神族、人間族、亞人族、という種族がいるの。まぁ他に魔物なんてのもいるけど、あの子達は知能が低いから種族として認められていないのよ。そして坊やはその中の魔神族に含まれるの。ちなみにアンデット族は元勇者とかが多いのよ。」
「この世界には魔神族、人間族、亞人族、という種族がいるの。まぁ他に魔物なんてのもいるけど、あの子達は知能が低いから種族として認められていないのよ。そして坊やはその中の魔神族に含まれるの。ちなみにアンデット族は元勇者とかが多いのよ。」
奴の口調に合わせながら話し、頭で反復させて、消えかけようとしている意識の中、痛みの中、僕は奴の言っていることを理解しようとしていた。
「ふぅー今日も結構遊んだわね」
そう言うと奴は僕の指だったはずの砂を近くにあった。金属のバケツにいれていた。バケツはおそらく8リットルは水が入りそうな大きなものだったが、僕の血が滲んだ砂でいっぱいになっていた。
「今日も楽しかったわ!また明日も遊びましょうね」
奴はそう言ってバケツとナイフを持って去っていった。その後、昨日と比較にならないくらいの疲労と痛みに悶えていたそうして時間が経つと、
「、、、はは、はははははははははは、はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
意味もなくずっと笑っていた。そんな事をして笑いづかれると僕は瞳を閉じた。目を瞑ると先ほどまでは働かなかった頭が少しずつ奴の言っていた事をまとめようと働いてきた。奴が言ったことはとても理解し難いことだったが、この自分の状態から察するに、非現実的なことが起きているのは間違いない。その事と、奴の話していた事を合わせて考えると、どうやら僕は異世界転生でもしたようだ。
「はっ、そんな事本当にあるのかよ。しかも死にたくて死んだ僕が今度はアンデットて、とんだ皮肉だな」
小さな蝋燭から出ている妖光に照らされた部屋で、僕は胸の中にあった苛立ちを吐き出していた。そうする事で少し楽になっため、更にこの世界について奴が話していた事を頭でまとめることにした。この世界は今魔神族と人間族が対立している。たが、2年前突如魔神族の王である、前魔王が現魔王に殺され、その後魔神族の一人一人の力が強くなったらしい。そうして、人間族は魔神族に対抗するために1週間近く前に異世界から勇者を召喚した。その日から5日後に僕が森の中で倒れていたということらしい。それに加え、奴の拷問の目的はなく、ただ拷問そのものが好きと言うことも奴の今までの言動からわかった。それ以外にもまだ何か言っていた気がするが、今日はもう限界だ。1日目は気付かなかったが、こんな目にあっても僕は眠気がしっかりあるらしい。
「もしかしたら心まで化け物になっちまったのかな」
そう呟くと祐也は今度は眠るために瞳を閉じた。
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