プロローグ
焼け爛れているような空の下、僕は今学校の屋上から飛び落りようとしていた。
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朝目覚めたらばかりの高校3年生榊祐也は今日も始まる憂鬱な1日に嫌気がさしていた。そして、いつもの通り祐也の心とは反比例しているかのように窓の外は雲ひとつない冴えた空が広がっている。
学校に向かう道を錘のように重たい足を一歩また一歩と歩いていく。ほんの少しでもこの時間を楽しくいけるようにと昨日買ったイヤホンから流れてくる音楽も歌詞が全く頭に入らず右から左へとただ流れていくだけである。
教室に入ると祐也は誰にも気付かれないように静かに自分の席に座る。ホームルーム開始のチャイムがなるまであと5分あるが、この時間は早めに来ている陽キャ達の声で少し騒しいものの、祐也にとっては貴重な学校での安らぎの時間なのである。
そうして、机に突っ伏していると5分が経ちチャイムが鳴る、それと同時に4人の男子が入ってきた。
「あっぶねー!セーフ!!」
「アウトだよ笑」
これはいつも先生とこの四人がする会話である。そして、この四人こそが僕が学校に来たくない理由だ。
ホームルームが終わり先生が教室から出ていくと同時に、さっきの四人衆が俺のところにやってきた。
「おい、これやっとけよ」
そう言って僕に自分達の宿題を渡してきたのは僕をいじめてくる主犯格の山崎凱である。山崎はガタイがよく身長は180センチあり柔道の世界大会に出場した経験がある。そんな山崎は僕の内気な性格と運動音痴が気に入らないらしく小学校の頃から絡んでくる。ぶっちゃけこいつに関してはいつも殺したいと思っているがもちろんそんな勇気はなくただ従っている。(まぁもし殺りに行っても返り討ちにあうと思うが)
「わかった...」
それを聞くと山崎達は自分達の席に座り、いま奴らがはまっているゲームの話をし始めていた。
そんな調子で時間が進んでいき昼休みになった。いつも通り寝たふりをしようとしていると、
「ちょっと来い」
何故かいつもは昼休みに絡んでくることのないあいつらが、珍しく話しかけてきた。
「え?な...」
「よく聞こえねーな、いいから黙ってついてこいっつってんだよ」
そうして僕が言い終える前に口を出してきたのは最近流行りの黒髪センター分けをしている吉村陸だった。もちろん逆らうつもりはなく山崎達についていくことになった。
教室を出ていく寸前クラスのマドンナであり幼馴染の白百合葵と目があった。彼女の淡い水色の目は僕を心配してくれているように見えた。だが、直後すぐに目線を逸らされてしまった。
ドガッ
体育館裏までついていくと急にお腹を蹴られた。あまりに急だったためは全く防げず、溝打ちに直撃し、僕はその場に倒れ込んでしまった。
「ガッ...ハァ」
そうして苦しんでいる僕の前に山崎が話しかけてきた。
「お前なに教室で俺に刃向かおうとしてんだよ」
「そんなつもりは...」
ドガッ
今度は肺の辺りを横から思いっきり蹴られた。
「がはっ…」
「そう言うところだよ♪次はないと思ってね」
そう言ってきたのは流川透だった。流川は中性的な見た目で身長も160センチぐらいで金髪に星形のヘアピンを二個つけており山崎の側近的ポジションである。そして続けて山崎が話しかけてきた。
「まぁそれは置いといてひとまずお金貸してくれないかな?さかきくーん??」
「うっ...どれくらいですか?」
「う〜んまぁ、3万くらいかな?」
「え?」って声になりそうになったが先程蹴られたこともありそれをグッとこらえ、拳を強く握りしめた。
「渡したいんですが今は持ち合わせがなくて」
「じゃあ俺ら放課後5分間だけ待ってやるから早く来いよ、もし遅れたらそうだなぁー、女子トイレに全裸で入ってもらおうかな笑笑」
「ごっ...いや、わかりました」
「お利口で何よりだ、よろしく頼むぞ」
そうして教室に戻ろうとドアを開くと昼休みの賑わいが消え、クラスのみんなが一気に静まり返った。その理由は教室に入るとすぐわかった。俺の席には大量の雑巾とクラスに置いてある花瓶が置いてあった。枯れかけている花瓶の花がまるで本当に自分の死期を表しているようだった。そんな中教室の隅で何人かの女子が笑いながら動画を撮っているのが目にはいった。僕は昼休み終了まで残り7分間をその片付けに使った。思ったよりも机についた雑巾の匂いは落ちず、5時間目の授業が始まっても匂いはかなりした。先生は僕の横を通り過ぎる時顔も見ず一言
「匂うな、ちゃんと風呂に入れ」
と言って通り過ぎていった。
放課後山崎達は僕を見たとたんリュックを奪い5分間のカウントダウンを始めた。それを見た僕はある決意をして急いで教室を出た。本来三階にある僕たちのクラスから下にいき帰るのだか僕はここを屋上に繋がる階段へと走っていった。
屋上には当たり前だが誰もおらず、埃っぽかった。僕はそのまま奥のフェンスのへ近づいていった。いつもは人が飛び降りないよう肩まで高さのあるフェンスが今日はとても低く感じた。
焼け爛れているような空の下、僕はフェンスを超えてそこに立っていた。「綺麗だな」ただそう思った。今まで何回も死のうと思ったことはあるが結局勇気が出ず踏みとどまっていた。けど今だったらその一歩を踏み出せる気がする。別にいつもとイジメの内容が変わったわけではない。ただ気持ちが溢れてしまったんだと思う。
そうしてその一歩を踏み出そうとした時
「待って!!」
もう長い間しっかり聞いたことない懐かしい一人の女の子の張りあげた声が聞こえた。振り向かずそのままその子の声を聞くことにした。
「お願い思いとどまって!辛いのはわかる、苦しんでいたのもわかるけど死ぬのは違うよ!!覚えてる?昔私が近所の子にいじめられて泣いていた時君が慰めてくれたこと。」
彼女は段々涙声になっていた。
「普通だったらいじめられてる時に助けるもんだけど君は自分が意気地なしだから慰めることしかできないって言ってた。けどねその慰めがどんなに私の気持ちを支えてくれたかなんて君にはわからない、その時間がどんだけ私が嬉しいかなんてあなたにはわからない。私も君と同じで意気地なしだから、助けるなんて言えないけど君の話を聞いて少しは支えることはできると思うから...」
彼女は涙声を無理やり落ち着かせ
「お願い...死なないで」
と一言そう言った。
僕はそれが彼女の本心の気持ちだということがわかるし、なんとしてでも僕の自殺を止めたいという意思を背中越しに感じた。僕だって死にたいわけじゃない
けど...
「ごめん」
僕はそう言って彼女の方を振り向き、まるで母に身を任せる赤子のように宙に身を任せた。最後に見えた彼女の姿は泣いていたため目の周りが赤く、子供のように鼻水が出ており、そして美しい彼女の白髪が風で靡いていた。そんな彼女の表情は驚いているような呆然としているような顔をしていた。最後に見えた景色は夕日なんかより断然
「綺麗だった」
グシャ
自分の骨の音が軋み崩れていき、痛い花火のように血が飛び散り、痛い痛い次第に手足が動かなくなった痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
途切れ始める意識の中僕は次は死ぬことなんかない人生を望んだ。
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