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死ぬ度合い

「うう、死にたい……」

 また、夕日さんの『死にたい』が始まった。そう言いながら死んだ事なんて一度もないのに。

「夕日さん、なんでそんなに死にたいんですか?」

 俺は疑問に思った事を直接ぶつける方だ。それで喧嘩になる事も多いが、俺の性格上仕方ないと思っている。

 案の定、夕日さんも喧嘩腰で呻いた。

「真昼君は死にたいと思った事がないからそう思えるんだ」

「俺にだってありますよ」

 俺の発言を聞くと、夕日さんは目を丸くした。

「子供の頃、カッターナイフで指を切ったんです。そしたら、中が見えて、筋肉繊維なのかな。ピンク色で綺麗だな、と思ったら、中を覗いている間に血が溢れて見えなくなって。また、あの中身を見たいと何度か思いました」

 夕日さんは少し考える素振りを見せて、俺に話しかけて来た。

「……綺麗だから、死にたいと思った?」

「綺麗だから、ですかね」

「死に綺麗なんてないよ、真昼君。死は空虚だ。嗚呼、でも、その感覚がないから、私は凡人なんだ。死を美化する新鮮な感覚……感受性が足りない……」

 虚ろな目で夕日さんが言うのに、俺は首を捻った。

「俺は今は、人間、足掻いてでも生きていた方が良いと思いますけどね」

 だって、死んだ後は何もないんだろう。生命保険も自殺には力を貸してくれないんだ。死亡保険は自殺したら降りない。『自ら殺す』のは社会的に何も生まれないのだ。

「……私は生きて、生き続けて、何になるのかが分からない」

「小説家になるんでしょ?」

「職業の話じゃない!」

 夕日さんが頭を抱えて泣き喚いた。

「分かってない!君は何も分かってない!」


 夕日さんがいなくなったのに気が付いたは、その数時間後だった。

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