そもそもの切欠
俺は22歳のフリーター。何処にでもいる元気な男だ。体力だけはあるから、夜勤もこなすしダブルワークもする。手に職はないが、それなりの収入はあった。
だから、家を出る気になったのだが、「真昼、お前は家事をした事がないだろう。男一人暮らしの家事は結構大変だぞ。それなら丁度良い人がいる」との親の意見に乗ってしまった。
34歳の遠い親戚の男で、その男も家を出たがっていたと言う。家事の出来る親戚とルームシェア。それが親の提案だった。
「なら、その人と一緒で良い。34歳なら大人だ。確りしてるんでしょ?」
父は黙った。母は言葉を濁した。
「頭の良い人なのよ。大学も良い所を出ていて。ただ、身体が虚弱で余り仕事が出来ないの。在宅ワークをして暮らしているのよ。一定の収入はあるし、家事は得意らしいから」
そう母さんが言うのに、「それで良い」と頷いた俺は後から騙された気分になった。『一定の収入』が在宅ワークでの収入ではなくて、精神障害者で障害者年金を貰っているから、と言うのは余りに酷すぎやしないか。
俺、真昼と、夕日さんと言う人生破綻者が一緒に住む事になったのはそう言う理由だ。