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ダンジョンで接客業をしているが、職場がまさに戦場でしんどい。  作者: 森口デコ
上司がクソビッ◯でしんどい
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第31話 激突! その①

 サナギは、デュークのいるケイブペインティング・ルームへと戻ってきた。

 後から追いかけてきた二体の白銀の騎士へ、振り向きざまに鬼の金棒を打ち込む。


 白銀の騎士Aは身を引き、白銀の騎士Bがまっすぐに斬りかかる。

 サナギはこれを左腕一本で受け止めると、


「せいいいっ!!」

 

 あっという間に、恐るべき腕力で白銀の騎士Bを放り投げた。

 さらに、白銀の騎士Aが長剣を突き入れてきたのをかわすも、体がぶつかり片膝をついた。


 白銀の騎士Aは、さらに踏み込んでサナギの胴を斬り払おうとするが、


「しゃあっっっ!!」


 立ち上がりざま、サナギは堅牢な騎士の兜へ頭突きを喰らわせる。


「……」


 鉢が大きく陥没し、頰当てが砕け落ちる。白銀の騎士Aが転倒した。


 そこへ、体勢を立て直した白銀の騎士Bが襲いかかった。

 サナギが怒涛のごとく、鬼の金棒で横なぐりにする。

 白銀の騎士Bは長剣ごと装甲を砕かれ、もんどり打って倒れた。


 依然として、壁画の前に座っていたデュークは薄笑いを浮かべたまま、ふわりと立ち上がった。

 その気配を感じて、サナギがキッと睨みつける。

 髪は乱れ、肩で息をしている。

 額から流れ出る青い血もそのままに、眼鏡の奥の目は凄まじい光を帯びていた。


 サナギが前に出ようとすると、


「……!」


 次々と部屋に入って来たモンスター群が、隊列を組んで行手を阻んだ。

 さらに、甲冑を破壊された白銀の騎士達も無機質に立ち上がり、サナギに迫った。

 サナギの息が詰まる。だが、もう泣き出すことはない。

 汗に濡れた手で、鬼の金棒を握り直した。


 デュークの背中から大きな真紅の翼が放たれたのは、このときだった。

 ひらりと、デュークは一回転し、広間にいる自分以外の全員を破壊するような衝撃波の波紋を描いた。


 弾き飛ばされたモンスターは、他のモンスターも圧し潰し、巻き添えにして石壁に激突する。

 サナギは咄嗟に鬼の金棒を床に突き立て、なんとか防ぐことができた。

 その背後では、白銀の騎士も石壁に叩きつけられ、そのまま活動を停止した。


「……少し遊ぼうか。鬼の金棒を凌駕(りょうが)する力を見せてやろう」


 重々しくおごそかに、デュークは口を開いた。


 サナギとデュークは、ゆっくりと向き合った。


 デュークが大きく闇を吸い込んだ。

 闇の中で光の届かない穴が生み出され、デュークの身体が暗くて硬い鱗で覆われていくのがわかった。やがて、真紅の翼を持った、一つ目の巨大な怪鳥に姿を変えた。


 鬼の金棒がうなる音が手から伝って聞こえてきた。サナギの中が怒りで埋め尽くされ、恐れを押し出さんとする。


「クオオオオオッ!!」


 本性をあらわしたフェネクスは咆哮をあげ、サナギに向けて火炎をまき散らす。

 これに怯むことなく、サナギは鬼の金棒で頭部をガードしながら一気に距離を狭めた。


 サナギは棒立ちのフェネクスに向かって、鬼の金棒を勢いよく横に薙ぎ払った。

 強い打撃を腹部に与えるも、フェネクスは倒れない。硬い鱗が数枚、剥がれ落ちただけで、それもすぐに再生してしまった。


「おおおおおらあっ!!」


 さらに振りかぶった鬼の金棒を撃ち下ろす。

 しかし、フェネクスの首が少し傾いただけでダメージはまったくないようだった。それどころか、サナギの右肘は砕けて白い骨が覗き、青い血が滴り落ちた。

 まるで、ダイヤモンドの塊を殴っているかのようだった。


 フェネクスがサナギに、ズンッと大きな猛禽類の足をめり込ませた。

 サナギは、地を這うようにふっ飛んでいき石壁にぶつかる。衝撃音と共に石片が散乱した。


 だが、鬼の金棒を離しはしない。自由が効かなくなった右腕をそのままに、再びフェネクスに頭から突っ込んでいく。


「そのタフさ……それでも要は、鬼の金棒も恐るるに足らないということだ」

 

 フェネクスはほとんど身体を動かさずにこれをかわすと、腕を伸ばしてサナギの胴体を鷲掴みにした。


「あ……」

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