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ダンジョンで接客業をしているが、職場がまさに戦場でしんどい。  作者: 森口デコ
上司がクソビッ◯でしんどい
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第1話 名物ロリ店長 その①

 シャトー☆シロのチーフコンシェルジュを務めるニナ・チャイルは、開店と同時に詰めかけた男達の対応に追われていた。店の客ではなく、店長の個人的な客である。


「ですから、当店は会員のお客様以外は入店をお断りしておりまして……はい、今、店長は探しております。申し訳ございません、私は確かにメイドの格好をしておりますが、当店はそのようなサービスはしておりません。


 ここはトライアルダンジョンでございます。


 そして、私はメイドさんではなくて、チーフコンシェルジュです。なぜ、メイドの格好をしているのかと言われましても、私には分かりません。エール店長に聞いていただけますか?


 ですから、店長は今探しておりまして……デートの約束ですか? 店長のプライベートに関しましては、私は一切存じあげません。あなたは店長とお付き合いされてるんですか?


 え? みなさんそうだと……ホント笑っちゃいますよね。いえいえ、そのようなことは……。は? あなたは借金の取り立ててで……ちょっとみなさん落ち着いてください! 他のお客様のご迷惑になりますので--」


 突然、糸の切れた人形のように男たちが膝から崩れ落ちる。


「おい、ニナ。ちょっとお願いがあるんやけど」

 

 ニナの正面には、同じ黒のワンピースにミニスカメイド姿の少女が仁王立ちしていた。


「エール店長……もう、探してたんですよ!」

 

 店長と呼ばれた超ロングの銀髪の少女は、ニナよりも小柄で、年もずいぶん若く見えた。


 エール・カルマンはシャトー☆シロの店長で、トレードマークでもある胸につけた大きな真紅の羽根が今日も神秘的に輝いている。


「ウチかて、ニナのことを探してたんや!」

 

 エールも負けじと言い返した。


「店内にいるんだったら、ヘッドドレス、つまりはインカムをつけてくださいって何回も言ってますよね?」


「へ、インカム? 何それ、下ネタ?」


「おい! あなたがここの責任者でしょ!」


「冗談やがな、冗談。そない青筋たてて怒らんでもええやんか、ニナちゃん」


「……て、これ大丈夫かしら?」

 

 ニナは、石造りの床の上で苦しそうに悶えている男たちを心配そうに見た。


 エールは、転がっている男たちを顎で指し示し、


「大丈夫やって。いつもの甘噛みやがな、あ・ま・が・み。ちょっと、警備の人! こいつら店の敷地の外に放り出しといてんか!」

 

 と、その中のひとりの尻を蹴り飛ばした。

 呼ばれた警備員たちが、慌てて男たちを担ぎ出していく。


「エールたん!」


 先輩冒険者が声をかけてきた。

 新米冒険者の袖を引っ張り、にこにこと笑っている。


「約束通り、友達を一人連れてきたよ」


「わあ、ありがとう! でも、ここではエールたんはやめて。ちゃんと店長って呼んでな」

 

 エールは、先輩冒険者の鼻を人差し指でチョコンと突いた。


「これで、今度の休日に一緒に映画館に行ってくれるな?」


「一人ちゃうやろ。ウチとデートしたいんやったら、新しいお客さんを五人連れて来いって言うたやろが」

 

 先ほどまでとは異なる低い声で話しているが、それに気づかないほど、先輩冒険者は名物ロリ店長に夢中のようだった。



「え、五人? いや、それは話が違う」


「何を言うてんの。アンタなら軽いもんやろ? そしたら、一生懸命サービスするし」

 

 エールは先輩冒険者を見上げると、その頬を冷たい手でするりと撫でた。効果は抜群。先輩冒険者は、完全に飼い慣らされてしまったように見える。


「わかった! 次、来る時は必ず五人連れてくる」


「そんな気張らんでええから」


「いや、約束するよ……エールたん!」


「まあまあ。今日のところはゆっくり遊んでいってな。そっちのお客さんも」


 新米冒険者はエールに微笑みかけられる。見た目は全くの子供なのに、どこか性的な魅力さえある。

 新米冒険者がとっさに顔をそむけると、ニナと目があった。


 ニナは丁寧にお辞儀をして、


「初めてのお客様でいらっしゃいますね? ようこそ、シャトー☆シロへ。まずは、あちらのフロントにて登録手続きをお願いします」

 

 と、さわやかな笑顔を見せた。


「うっ」


 言われた方は、にやにやして顔を赤らめる。


「……登録ですね。先輩、早く行きましょう!」


「おう!」

 

 肩を組んでフロントへ向かう二人を、ニナは見送った。

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