伝説の屑
なろラジ大賞2投稿作品
彼女は特別だ。
クラスがおんなじで、帰る方角が一緒で、なんとなく話すようになった。
日が暮れたとき別れるのがなんか切なくて、駅のホームで人目も憚らずキスをした。そうするのが自然な気がしたから。何故か彼女も嫌がらなかった。
一緒にいるといい匂いがして気が休まるし、頭もいいから話していて楽しい。
抱きしめたりはするし、首筋に顔を埋めたりはするのだけど、エッチなことをしたいとは思わない。
そのことを友人に話したらEDなのかと笑われた。
結局のところ、多分、僕は彼女のことが好きじゃないんだと思う。
この感情の名前を僕は知らない。なんかよくわからないもの。今日も帰り道、君の小指を突っついて、そっと手を握る許可を取った。
「だからね、君の見てる世界と私の見てる世界が同一のものであるという確証はないわけじゃない」
「うん」
「だから人によってものに対する感じ方が違うっていうのは、それが原因なんじゃないかって思うんだよね」
彼女はとてもお喋りだ。クラスにいるときはそんなことないのに、2人だけになると世界の秘密を見つけようと躍起になる。
書割の世界、春夏秋冬の順番、涙の理由、etc…
だいたいが答えなんか出ず、そのまま時が過ぎていくものばかりで、言ってしまえば無駄な時間だ。
ただ真剣にそうした無駄なことに言葉を並べていく彼女は、とても不安定でいつ壊れてもおかしくない美しさがあった。
言葉を並べ終えると、いつも満足とは程遠い顔をする。そして暇そうに指で宙を撫でる。その指先がとても冷たい。
だから、
抱きしめたくなる。
キスを、したくなる。
壊れそうなくらい鋭角な彼女を、守りたくなる。
でも僕のものにはしたくない。
ただ見ていたい。
「君は、なんかいつも頷くばっかりだね」
「うん」
「私は楽しいけど、君は楽しいのかどうか、不安になるよ」
「僕は楽しいよ?」
「でも好きって言わないじゃない?」
「うん」
「なんで?」
とある日僕は理由を説明できなかった。
その言葉は僕の中にはなかったから。
抱きしめたい。
キスをしたい。
その欲求の全てはホンモノだったけど、別に好きではなかったから。
噤んだ唇を見たからか、彼女の目から涙が溢れた。
落ちた涙がコンクリートを濡らす。けれど、コンクリートはすぐに乾いた。
目の前では女子が普通に泣いていた。
悲しそうな音だった。
失恋を、「捨てる側」で罪悪感なく書いてみました。
気持ち悪い余韻が出ていれば良いですが、どうでしょうか?




