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聖女?の娘  作者: いぶさんた
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領都クロナンへ


図書室で聖女の事が載っている本を探したけれど、どの本も『危機に現れ救ってくれた』というものでそれ以上書いてある本は見つけられなかった。


突然現れた

聖女様が大発生した魔物を倒した。

聖女様のおかげで大寒波を無事にやりすごした。

聖女様の説得で戦争を回避した。

聖女様に怪我を、病気を治してもらった。

など、突然現れ何かをして救われたところは同じだけれど行った事は全く違う。

やはり創作なんだろう。


結局聖女はお伽話の中の出来事になっているようだ。






夕食はシューイさんから一緒にと言われて、シューイさん、サリーナさん、タクトさん、サントロさんと母、私の6人でテーブルについた。

私達に配慮してくれたのか大皿料理で侍女に食べたい物を言って取り分けてもらう形だったのは嬉しい。コースだったらどうしようと思っていたのでほっとした。


シューイさんだけでなく皆、日本の話に興味を持っていて話が尽きる事がないく時間が過ぎる。


食事が終わり部屋に戻り後は寝るだけとなったところでキャトリさんが灯りを消して部屋から出て行く。


「おやすみ。お母さん」

目を瞑る。

「ねえ沙彩。気のせいだと思うんだけど」

「なに」

「今日の料理場でのことなんだけれど」

「あぁ、鍋に火が入ったこと?」

「そう。あれね。お母さん見た事があるのよ」

「どういうこと?」

「夢でね」

「夢ねえ。夢を覚えてたの?」

「きちんと覚えてたのではなくて火があがった時にふと思い出したんだけど…」

「それで」

「夢では鍋に水をかけて料理場が大変な事になったんだけどね。そうそう、料理場もそっくりだったのよ」

「…それで水は駄目って言ったの」

「そう。どう思う?」

「聖女の力かもしれないって事?」

「自分で言うのも恥ずかしいけれどね」

「そうだね。まだ一度だからね」

「そうね」

「また何かあったら教えて」

「わかった。偶然だったかもしれないからね。寝ようか」

「うん。おやすみ」

「おやすみ」


母にはまだわからないなんて言ったけれど私は興奮している。

こちらの世界の料理場なんて今日初めて見たのに母は料理場がそっくりと言った。偶然とは思えない。


母が聖女?


本当に聖女召喚だったの?


まさかね。





###



「沙彩、今日は朝一番に出発よ」

いつの間にか寝ていた私は母に起こされた。


「おはよう」

「おはよう。起きられる?」

「うん。大丈夫。朝食食べたらすぐに出るのよね」

「そうよ」

支度をしているとキャトリさんが部屋に来て今から朝食を持ってきてくれると言って部屋を出た。


母が内緒話をするように私に近づいてくる。

「昨日の話、覚えてる?」

「料理場の事?」

「そう。それで今日も夢を見たんだけれど…」

「どんな夢だったの」

私は期待で心臓がバクバクした。

「領主様と夫人に会うのだけれど、顔はなんとなくでしか覚えてなくて、はっきりしているのは夫人が濃い紫色のドレスを着ている事だけど」

「えっ」

それははっきり言ってしょぼい。ぱっとしないと言うか。私はすごく期待をしていたみたいですぐに返事が出来なかった。

「これじゃあねえ」

母も自分で言って笑っている。

「ごめん。もっと違うことを想像していた」

2人で思わず顔を見合わせ笑った。



町長夫妻や使用人に見送られてグレスク町に来た時と同じ人達と領都クロナンへ向かう。今日の夕方には到着予定だ。




###町長執務室


「どう思った?」

シューイがサリーナに問いかける。

執務室にはシューイとサリーナ、執事のラインの3人だけだ。


「聖女の力はまだ表れていないようでしたね」

「聖女の力自体どんなものか誰も知らないからご本人もわからないのかもしれないな」

「そうですね。聖女の力は無くても異世界の知識には興味が湧きました」

「確かに、私達では思いつかない事があったな。国民全員が学べる学校などは素晴らしかった」

昨日の晩餐の時にした話を思い出す。


「それにしても、陛下はよく決断されたよな」

「そうですね。いくら250年前の国王様が言われたとはいえ聖女様を保護するのはセイナコウ教を敵に回ますから」

「そうだな。流石にそれは駄目だ」

この屋敷でも知っているのは今執務室にいる3人とキャトリだけだ。内密にする事を再度認識する。


「聖女様の知識はノースリー国を発展させてくれそうだな」

「陛下はその事をご存知でしたのでしょうか」

「そうかもしれない。私達にはわからない国の機密だろうな」


「聖女様にまたお会いしたいですわ。聖女様というだけでなくお人柄も良く話が弾みましたの」

「領都などすぐだ。領都に住まわれると聞いているから会いに行けば良い」

「そう致しますわ」

サリーナが嬉しそうに微笑んだ。


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