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聖女?の娘  作者: いぶさんた
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町長夫人サリーナ

昨夜沐浴したおかげかノースリー国へ入って安心したせいか今朝は体も頭もすっきりとして起きる。


「おはよう」

「おはよう。お母さん。もう着替えたの?早いね」

母は昨日のゆったりした寝具のワンピースを生地のしっかりしたウエストにタックのとってあるワンピースに着替えていた。

キャトリさんが準備してくれた同じ形の色違いの服を私も着る。


少し遅めの朝食を部屋で食べていると


「奥様から食事の後お会いできないかと連絡が来ております」

キャトリさんが給仕をしながら伝えてくれる。


「奥様?」 

「はい。町長夫人のサリーナ様です」

「わかりました」

『マナーなんて学校でちょっと教わっただけなのに町長夫人に会うなんて緊張する』

「沙彩…さあや」

母に呼ばれて顔を上げる。

「沙彩、何考えていたの」

「えっと。マナー?」

「そうね。町長夫人に会うのだから私も心配だわ」

母はうんうん頷いている。

「キャトリさん、夫人と会う時に何か注意する事はありますか」

「サリーナ様はとても気さくな方なので気楽になさって大丈夫ですよ」

キャトリさんにそう言われても、今までそんなに偉い人に直接会った事なんてないから緊張する。





食事後、テラスに案内されるとそこにはぽっちゃりとした可愛らしい女性が座っていた。


私達に気がつくと立ち上がりこちらに近づいてくる。

 

「ようこそ。こちらへどうぞ」

テラス席に案内される。

「はじめまして。シューイの妻サリーナです」

「ヨーコと娘のサーヤです。お世話になっております」

握手なの。それとも淑女の礼と言われる挨拶なのか。淑女の礼が見られるのかも。とワクワクしていたけれどお互い軽い会釈ですむ。

キャトリさんが紅茶とお菓子をテーブルに並べてくれる。


「私は今は町長夫人なんてしているけれど元は宿屋の娘なのよ。だから気楽にしてね」

サリーナ様は私達の緊張に気がついたのか和やかに話を始めた。




サリーナ様はこちらの世界と日本との生活様式の違いに興味をもち、特に学校について詳しく聞きたがった。


「明日にはもう領都に向かわれるのですね。もっとお話がしたかったわ」


サリーナ様が名残惜しそうに席を立ちお茶会は終了した。




部屋に戻り母と2人になる。

「沙彩、何か変わった事はない?」

「何もないと思う。どうして」

「聖女として召喚されたから何か変わるのかと思って」

「そうだよね。私はかわりないよ。お母さんはどう?」

「私も何もないわね」


母と話をしているとキャトリさんが部屋に入って来たのでこの後どうするか話し合った。

明日領都に向かうけれど馬車は普通に走っても1日かからずにつくので準備も然程必要がない。

「町には出られませんか」

「すみません。護衛の兼ね合いもあるので難しいです」

「そうですよね…こちらの事を知りたいので屋敷の中を見せてもらうことは出来ますか」

「はい。良いのですが鬘をつけてもらうことになりますがよろしいでしょうか」


この国に黒髪の人は少なからずいるけれど黒髪黒目は珍しいらしい。町の人が入れる区画もあるので念のために鬘をつけたほうが良いとなったけれど、

「こちらの客室は町長の私室になりますので許可のある者しか入れませんのでご安心下さい」

キャトリさんから説明され、私室ならあまり人に会わないですむようだと安心する。




軽い昼食を食べた後屋敷を案内してもらう。部屋でダラダラ過ごすのも勿体ないからね。


「どこか見たいところはありますか」

「ゆっくり回ってもらえれれば」

何処とはないけれど珍しいので全て見たい。

「私はキッチン…料理場が見たいです」

母は主婦目線になっている。

「最後に書庫とか読んで良い本がある所をお願いします。時間があったら本も読んでみたいです」



「お母さん、こっちの文字読めるの?」

「読めるわよ。沙彩も読んでいたじゃない。ほら」

母が指指したのは

『沐浴室』(お風呂)と『不浄室』(トイレ)だった。

そっかぁ。読めるから何も気にせずに使っていたけれどノースリー国の文字だったんだ。


「出来れば聖女の事を詳しく知りたいわよね」






廊下を通りいろいろな場所を見て歩く。

どんな説明がしてあるのかわからないがすれ違う使用人は私達を見ても会釈をするだけで通り過ぎて行く。

確かに黒髪や焦げ茶髪の人はいたけれど黒髪黒目の人には出会わなかった。


庭や応接室を案内されて料理場に着いた。中には料理人や下働きの人が8人ほどいて作業をしている。

火は薪でおこして竃を使っていた。水は魔石と桶を使い分けているみたい。

料理場を見たいと言っていた母は竃をじっと見ている。

「これから私達も竃を使うんだよね。難しそう」

母に話しかけると

「そうね」

と気のない返事がかえってきた。

「おぉぉ」

そんな時大きな声が聞こえた。そちらを見ると中華鍋のようなものに火が入り火柱があがっていた。

「水をかけろ」

誰かが叫ぶ。

「水は駄目です」

母が大声でいう。

「蓋をしろ」

料理長のような人が指示を出して蓋をした。まだ隙間から火が出ている。

「濡れた布をかぶせてください」

母の声を聞いてキャトリさんが布を持って来て渡している。濡れた布を被せると火が消えた。


「お母さん、濡れた布なんてよく知っていたね」

「主婦の知恵よ」

「素晴らしいです」

キャトリさんも興奮している。

料理長や料理人のお礼を受けて私達は部屋を出た。

母は何度もお礼を言われて照れているのかと思ったけれど何か考えているようで顔が固い。



次は図書室へ行きましょう。キャトリさんの言葉に頷いた。


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