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28.新スキルの力で死の軍勢を退け、ボスに辿り着く


 輝く瞳から、先程のズーニーにも負けないほどの魔力が溢れ出す。

 一体何が起こったのかとヤマトナとファムファが見つめる中、グライクはヤオヨロズを抜いて片手で無造作に構える。

 溢れるほどの魔力はあくまで彼の目に宿っていて、いくら強靭な竜人とはいえ、一人でこの数の大軍を無傷でなぎ倒せるはずがない。

 しかし、一歩踏み出したグライグが剣をひと振りすると、三体のゾンビが同時に首を刎ねられた。


「なんと!?」

「今、何したにゃ!?」


 グライクには、全てが見えていた。

 今で言えば、ひと振りで三体を同時に斃せる剣の軌道が。

 そして、どうすれば触れられもせずにこの数を相手にできる位置取りができるか、が。

 ある一定の境地に達した者が、ある一定の集中力の領域に踏み込んだとき、その場の全てを把握できることがある。絶対領域ゾーンと呼ばれるその状態を、グライクは意図的に実現できるようになった。

 しかし、それは彼が得たスキル『天眼アイズ・オブ・ザ・ワールド』の、ほんの一端でしかない。

 そんな破格のスキルを、得た途端にここまで自在に使いこなせるのは、グライクが見ることに長けていたからだ。

 長年にわたり彼のコンプレックスだった「使えない」スキルであるところの『鑑定イズディスイット』が彼に与えた、モノを見るという経験のおかげであった。

 そして、それはつまり--


「若様の動きが速過ぎて、射撃は誤着の恐れがある! ファムファ、斬り込むぞ!」

「うががが、あたしにはあそこに飛び込むのは無理ニャ!  投げナイフで勘弁!」

「ええい、使えん! 行くぞマシンマル!」

「ゴ・ゴ!」


 グライクに続けとばかりにヤマトナとマシンマルが突撃し、『必中』があるファムファは後方援護に徹する。

 百を超えた敵は、瞬く間に数を減らしていき、ついには最後の一体を残すまでになった。

 そのミノタウルスのゾンビは、ボロボロに錆びた斧を振りかざし、グライクに挑みかかる。

 するとグライクは一歩だけ下がり、その刃が届くギリギリのところで斧は掠めていく。

 そしてその瞬間、グライクは剣を前に突き出し、前のめりになったミノタウルスゾンビの喉を貫いた。


「これで、終わり、と」


 突き刺した剣を上方に振り抜けば、ゾンビの頭が砕け散る。こうして、一行は全ての敵を駆逐することに成功したのだった。


「若様、その目は……!」

「ああ、魔精に願って手に入れたんだ。これがあれば、どんな敵がどれだけ現れても大丈夫だ」

「んー、さっきの魔力は凄かったけど、今見ると普通だニャ」


 仲間たちがしげしげと自分の目を見てくるのをくすぐったく感じながら、グライクは再び目に魔力を込め、部屋の中を見渡した。


「あそこ、扉になってるみたいだ。もう敵もいないし、罠もない。先へ進もう」


 開いた扉の先は、荘厳な様式の回廊となっていた。壁に灯る蝋燭はいやに強く光を発しているが、その色は紫で、とかく不気味に雰囲気を煽る。

 敵の気配はなく、今のグライクの天眼にかかれば隠れ通せるわけもないので、進むにつれて一行も徐々に警戒を解いていく。

 そうして辿り着いたのは、これまでになく重厚な圧力を醸し出す扉であった。刻み込まれた髑髏の紋様が嘲るように笑っている。

 その奥にいるのがボスであることは一目瞭然であった。


「辿り着いたね。もしかしたら、ここがこの迷宮のボスのいる部屋かもしれない。みんな、覚悟はいい?」

「はい! 若様のお力になれるよう、このヤマトナ、全身全霊をお尽くしいたします」

「どんなお宝が得られるか、楽しみだニャ!」

「ゴ!」


 事前にバフと治療のアイテムを使い、万全の状態に立て直した一行は、いよいよ扉に手をかける。

 そうして扉の中に入ると、そこはただただ真っ暗な空間であった。

 ファムファの夜目も利かず、ただグライクの天眼だけが、その暗闇の中に鎮座する大物の姿を捉えた。


「--いる。あれが、ボスだろう」


 グライクの宣言に、他の二人と一体が息を飲む。グライクの手にあるヤオヨロズも、青く光りながら僅かに震えて警戒を促している。


「敵は、偉大なる(グレート・)死者のリッチ。今では忘れられた遥か昔の悪魔の王が死後に甦った存在、らしい。魔術に気をつけて」


 グライグが天眼で得た情報を共有すると、眩い輝きが部屋を照らした。悪魔の血のように赤いその光は、リッチの全身から放たれている。

 おかげで全員の目がリッチの姿を認めることができたが、それは大きな負の効果をもたらした。


「こ、こ、こ、怖すぎるニャ!? なんだか分からないけど、怖くて見てられないニャ!」

「うぅぅ、若様、申し訳ございませんっ!」

「ゴ!」


 ファムファもヤマトナも、無機質なゴーレムであるマシンマルでさえも、死者の王の姿に猛烈な恐怖を抱き、目を逸らし、ガクガクと全身を震えさせながら膝をつく。

 唯一グライクだけは、リッチの放つ畏怖に対抗できていた。つまり戦うことができるのは、グライクだけである。


「仕方ない……大丈夫。これは俺の戦いだ。みんな、待ってて」


 そう言うと、グライクはヤオヨロズを手に、ゆっくりと前に足を踏み出した。


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