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26.死の軍勢と戦いながら進み、絶体絶命に陥る


 銃弾を撃ち切る寸前ギリギリで、ようやく静寂が訪れた。しばらくその場に留まって創造の壺で補充を続け、銃弾を十分に確保しておく。


「かなり危ないところでした。遠距離で戦えるこの武器が手に入っていたのは僥倖でしたね」

「それに、ヤマトナがその武器を扱えたこともね。俺とファムファだけなら、ここで一巻の終わりだったよ」

「いやいや、正直、この中の誰が欠けてもダメだったニャ。こんな幸運なこと、滅多にないニャン」

「ゴ!」


 苦難を乗り越えた後で互いを褒め合い、でへへっと照れ合う三人と一体。

 ゾンビは強さこそそれほどではないものの、一発でも貰えばアウトという異常な緊張感がある。その中にあって、グライクたちにはこれまでにない仲間意識が芽生えつつあった。


「じゃあ、そろそろ行こうか。慎重に、ゆっくり行こう。戦いは極力避けて、もし戦うにしても作戦としては、ほらあれ、有名な『いのちだいじに』だ」

「ええ、そうしましょう」

「警戒は任せるニャ。ゾンビがいたらあたしの毛にビンビンくるニャ」


 またマシンマルが先頭となりゆっくり進んでいく。味方への流れ弾を避けるべくヤマトナがその次、ついでファムファときて、盾をつけていて三人の中では最も堅牢なグライクが危険な殿を務める。

 やはりゾンビが現れることはあったが、先ほどのように大群としてではなく、一体、または二、三体であったので、ゆっくり落ち着いて的確に対処できた。

 しかしその中で、ある懸念が浮かび上がった。


「ゾンビの種類が、どんどん増えていますね……」


 また一体を片付け終えたヤマトナが呟く。そう、ゾンビは人や犬の死体だけでなく、熊やゴブリン、キメラといった魔物の成れの果ても出現するようになっていた。

 魔物のゾンビは同時に現れる数こそ少ないものの、基本的に人とは比べ物にならないほどタフで、一発では倒れない。単発式のみでは危うく、六連発をフルに撃ち込むことも多くなってきていた。


「今度はミノタウルスのゾンビ……第一階層ならボスじゃないか」

「ゾンビは知能が失われる分、そう単純に強さを比べられる話ではないけどニャ」


 ミノタウルスゾンビにはミスリルの弾丸を六発撃ち込んでもまだ足りず、マシンマルが押さえつけたところに動きが鈍ったところを至近距離から散弾で頭を吹き飛ばした。

 この階層は迷宮の名に恥じず、扉を開けるのに仕掛けが必要だったり、釣り天井の罠が仕掛けられた部屋があったり、はたまた行き先に迷う複雑な通路の作りだったりと、一行は存分に苦労を味わわされている。


「なんか、さすがに第四階層って感じだね。これまでも決して楽じゃなかったけど、ここは消耗度が段違いだ」

「一度戻って、態勢を立て直しましょうか?」

「いや、一度出たら次来たときにはまた迷宮の形が変わっていて、最初からやり直しになる。帰るにしても、その前に何かしらの手応えが欲しい」

「手応えって何だニャ?」

「たとえば、ボスの情報とか」


 グライクにとって、この迷宮の攻略はある種の試金石だ。かなりの財宝を得たとはいえ、彼の真の目的からすれば大したことはない。

 足踏みすることはなるべく避けたく、いわばグライクは焦っていた。


「若様、ヤマトナは力を尽くします。ですが、若様のお命は何物にも代えられません。どうか、いざというときにはご自重を」

「ああ、分かってる。それに、みんなの命もおろそかにするつもりはないよ」

「あたしは勝手に助かるから、お構いニャく~」


 束の間の休息を経て、再び一行は足を踏み出した。いくつかの通路と部屋を越えて扉を開くと、そこはこれまでの雰囲気とは異なり、かなり広い空間となっていた。

 ジメジメした土の地面に、岩肌の壁。その壁には蝋燭がかけられていて視界は利くが、どこか禍々しい空気に満ちている。

 そして、その理由はすぐに分かった。


「ここ……地下墓地だ」

「げえええ……あたしのセンサーにビンビン来てるニャ」


 墓地といえば--


「ウウゥゥゥ」

「オオオォォォ」


 地面の下から何本もの手が突き出され、続いて土が盛り上がってゾンビの顔と体が起き上がる。

 それだけでなく、毒々しい色合いの大蜘蛛や半透明のゴーストなど、地下墓地にふさわしい魔物が続々と現れた。


「モンスターハウスニャ!」

「この数、銃弾が足りません!」

「くそ、この数相手じゃどうしようもない! 引き返そう!」


 が、入ってきた扉はバタリと音を立て、堅く閉ざされてしまった。


「しまった、罠か……! くそ、何か手はないか……何か……」


 グライクが考えに没頭する中、ヤマトナの火筒が火を吹き、近くのゾンビを吹き飛ばす。ゴーストには銃弾も剣も効かないので、ファムファが火の玉や聖水を使って成仏させていく。そしてマシンマルが大蜘蛛を叩き潰すが--所詮は多勢に無勢。圧倒的に手数が足りなかった。


「考えろ、考えろ! 持っているアイテムでどうにか切り抜けるんだ--そうだ、今こそアレを使うしかない!」


 そうして顔を上げたグライクの目が捉えていたのは、彼の右手の人差し指に嵌められた、一つの指環--強力な魔精を呼び出すアイテムだった。


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