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15.大型モンスターに対抗すべく、ゴーレムを作ることにする


 初めてと言っていい迷宮からの敗走。常宿の自室にて、グライクはそのショックに打ちひしがれている――こともなく、あくまで冷静に合理的に、第三階層攻略への対策を練っていた。


「これまでは素早さと攻撃力でゴリ押しできてたけど、あんな大型モンスターが出てくるなら1ターンキルは無理だし、やっぱり今後は壁役が必須だよ。かと言って、俺たちの誰かが全身鎧を着込むのは無理だし……」

「そうなると、新しい仲間を募るということでしょうか?」

「いや、あれだけ貴重なアイテムを持っている以上、俺たちのことを知る人が増えるのは困る。これ以上リスクを増やすのは避けたいな」

「これ以上、ってどういう意味かニャ? まるで今もリスクになる人がいるみたいな言い方じゃないかニャ? ん?」


 侃侃諤諤で喧々轟々のやり取りの末、グライクはある結論を導き出した。


「つまり、人じゃなければいいんだ。ゴーレムを作ろう。でっかい奴」

「なるほど、ゴーレムを。魔術で作り出された意思のない巨像なら、裏切ることはありませんからね。しかし、そうするとどんな材料を……あ。うってつけのものがありますね」

「オリハルコンかニャ」


 正確には、まだ材料を用意できるとは決まっていなかったが、まずは実験に取り掛かることにする。

 この試みに使うのは、山ほど精霊を倒して手に入れた多種多様な精霊石だ。


「前回の経験を考察してみると、オリハルコンを錬成するには、五大属性の精霊石を混ぜればいいんじゃないかと思うんだ。混合元の媒体はその辺の石でも大丈夫でしょ」

「では、早速集めてまいります」


 廊下を歩くのもまどろっこしいとヤマトナが窓から出ていき、すぐさま拾ってきた石と、五つの精霊石を混沌の壺に入れてみる。

 するとまた例の輝きの後、壺の中には予想通りにオリハルコンの塊が生まれ出た。



真金オリハルコンのブロック】

 回数:1

 等級:伝説レア

 解説:五大属性の精霊石を全て合成させたアイテム。あらゆる属性に対して強い。



「よし! 鑑定結果を見ても間違いなさそうだ。あとは創造の壺で増やせばいい。これで材料問題は解決だ」

「肝心のゴーレムの作り方は、ショーニンに聞いてみるかニャン」

「口の固い者を紹介してもらわねばなりませんね」


 実験成功の勢いのまま、三人はすぐさまショーニンの店に向かった。

 昨日の今日で、しかも今度はミスリルどころかオリハルコンを持ち込まれ、ショーニンは驚きのあまりほとんど意識を失いかけながらも、相談に答えてくれた。


「あ、ああ、ゴーレムの作り手な。それでいて口の固い奴。そうだな、一人だけ心当たりがある。えらく気難しくて、ワシ以外に口を聞ける相手がいないから、うってつけだろう」

「それはありがたい。どこに住んでいらっしゃるんですか?」

「この街だ。今から行くか?」

「お店を空けてしまっていいんですか?」

「こんなドデカい商談が入ってるのに、ちまちま店なんかやってられるかよ」


 グライクたちはショーニンの案内で、そのゴーレムを作れるという錬金術師を訪ねた。

 その家は、街にあるというにはやや語弊があるほど他の建物からかなり離れた場所にあり、外見はとても古くて寂れていた。


「このボロさ、ワシの店なんか目じゃなかろう。がはは」

「ははは……ホントに大丈夫ですか?」

「術の腕は保証する。ワシの人生で見てきた中でもピカイチだ」


 ショーニンとグライクがそんな会話をしていると。


「それは光栄ですね。あまりに光栄で気分が悪くなってきました。お帰り願えますか」


 いつの間にか、四人の後ろに一人の男が立っていた。

 過度に眉目秀麗なその外見は、彼がエルフであることの明らかな証左であった。


「な? お人好しでのんびりした奴ばっかりのエルフのくせに、よくもこれだけ口が悪くなれたもんだ。紹介するぜ、こいつが錬金術師のジー・ニアス・マッドサイ・エンティストだ。おいジー、お客だよ」


 ショーニンの紹介に続いて、グライクは手を差し出しながら名乗ろうとした。


「はじめまして、ロー・グライクで――」

「いや挨拶は結構。人間風情と馴れ合う気はないのだ。我は忙しい。錬金術の奥義を究める道は遠く険しいからな」


 差し出した手は宙を掴み、エルフはまたもいつの間にか家の扉の前に立っていた。


「速い……!」


 その動きに、ヤマトナの忍者メイドの血が騒ぐ。ファムファは面倒になりつつあり、欠伸をしている。


「まあそう言うな。お前も喜ぶ話だぜ」

「ふ、何を言うショーニン。我が喜ぶものなど、もはや伝説中の伝説であるオリハルコンのみ」

「あ、これですね」


 グライクが四次元袋から取り出したオリハルコンのブロックを見て、エルフの美しい顔が固まった。


「これ、なん、おまえ……えええ?」


 ようやくその口から絞り出された音はもはや言葉にならず、グライクは仕方なく反応を待った。すると――


「でへへへへ、よくいらっしゃいました! 遠いところをご足労いただき誠に恐れ入る次第でございます。さささ、どうぞ中へ! 今、お茶を用意いたしますゆえ! あ、お気軽にジーとお呼びくださいね」


 コロッと態度が変わったジーに抱きつかんばかりの勢いで肩を組まれながら、グライクは家の中へ連れ込まれたのであった。


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