間話.街の噂2
「あの新人、なんと第二階層も攻略したらしいぞ。早くもこの迷宮の最高記録に並びやがったな」
「ああ、第三階層を攻略した奴はまだいないもんな。というか、最後に第三階層に挑んだ奴らはまだ帰ってきていないんだが」
「ま、それはつまりもう生きてないってことだからな。なんせ潜ったのが一年以上前だ」
「迷宮で死んだ奴は、一体どこに行くんだろうな……同じ階層構造は二度と現れないらしいから、死体も見つかりゃしない」
「『奇妙な迷宮に死して屍拾う者なし』とはよく言ったもんだ。装備品が落ちてることは稀にあるそうだが、肝心の本人は影も形もない」
「人骨の魔物がそれだって話もあるが、どうかな。たとえそうだったとしても、骨じゃ分かりゃしないもんな。浮かばれねえぜ」
「そういう因果の商売よ。当たりゃあデケえ、外れりゃあ死んで……後悔だけはないようにしないとな」
「違えねえ。それで、あの新人なんだけどよ、第二階層から何を持って帰ってきたと思う? なんと精霊石よ! しかも大量のな。第一階層でミスリルの斧を手に入れてきたのもたまげたが、一体どういう引きをしてやがるんだ」
「運が良すぎるぜ。そういう魔具でも持ってんじゃないか? ほら、そういう伝説があるだろう」
「ああ、なんて言ったかな。腕輪だったよな。でもその伝説じゃ、持ち主はひどい最期を迎えるんだよな。『運の切れ目が命の切れ目』ってな」
「なんにしても羨ましいが、どこまで行けるんだろうな、あの新人は」
「それがよ、第二階層の後ですぐ第三階層に潜って、ソッコーで引き返してきたらしいぜ。そんなにヤバイところなんだな」
「へぇ! あれだけ勢いに乗ってる奴でもそうか。俺なんかはまだ第二階層もろくに見れちゃいないがよ、それでもいっぱいいっぱいだってのに」
「これまでの生存者の報告によると、どデケエ熊なんかの魔物が出るらしい。小さい魔物じゃ蛇なんかもいるらしいが、こっちはわんさか群れてるそうだ。どっちにしたってまともなやり方じゃダメだ。何か事前に手を打ってから行かなきゃな」
「へっ! 俺が考えても時間の無駄よ。いつまで経ったって行けるかどうか分かりゃしねえ」
「はは、違いねえ! それじゃ、今日の命に、乾杯!」
「おう、乾杯!」