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第1話 ジェンナ、ローゴブ狩りに精を出す。

男装の女の子が活躍するお話、はじまるよ。

「あっ、またローゴブ発見っと」


 その少女は今日もいつもの様に森の中をスキップしながら獲物を探して彷徨っていた。

 彼女の名前はジェンナ。

 十六歳の若き冒険者である。


 彼女はつい先ほど、木々の向こうに一匹のローゴブという魔物の姿を発見した。

 そしてその魔物へとゆっくりと足音を忍ばせながら近寄っていく。


 ローゴブとは、森の浅い場所に住む最弱の魔物である。


 身長は小柄なジェンナのお腹くらいまでしか無い二足歩行の緑の肌をしたヒト型の魔物だが、知能はかなり低い。

 この近辺にはいないが、上位種のハイゴブは武器を作成する程度の知能はあるのだが。

 それに比べてローゴブは素手、もしくは投石程度しか攻撃手段を持たない。


 そんな彼らだが、繁殖力だけは異常に強い。


 なぜならローゴブは単体生殖が可能なので一匹でも逃がせば気がつくと無限に増えている場合があり。

 そのせいで時折ギルドにまとまった掃討依頼が出される事もあるくらいだ。


「まぁ、奴らの出来る事と言えば畑荒らしがせいぜいなんだけどね」


 正直ローゴブは弱い。

 本当に弱い。

 どれくらい弱いかと言うと、小さな子供たちが小遣い稼ぎで倒すのに最適と言われているくらいに弱い。


 逆に言えば普通の冒険者は見向きもしないか、通りすがりに邪魔な雑草の様に切り払っていく程度である。


 だけれどジェンナにとっては彼らは『楽して儲ける事が出来る獲物』だ。

 しかもライバルが偶にやってくる子供たち以外いない。


 まさにブルーオーシャン。

 彼女だけの独擅場である。


 しかしそんなローゴブでもいざ倒そうとすれば、未熟な初心者程度だとそれなりに時間がかかってしまう。

 ギルドの討伐依頼でも無ければ、一匹倒しても食事代にもならない魔物はスルーされても仕方が無いのだが。


「これだけ近寄ればいいかな」


 彼女は飛び出せば直ぐに襲いかかれる程度の近さまで忍び寄る。

 そして獲物であるローゴブを見つめながら頭の中でスキルを発動させた。


『スキップ!』


 次の瞬間、ジェンナはローゴブがいたはずの場所に一瞬で移動していた。

 その足元には。


「魔石ゲットだ!」


 小さな虹色に光る石が転がっていた。

 魔石である。


 ジェンナはひょいっとその小さな魔石を拾い上げると、腰に下げた袋の中に放り込む。


 魔石は魔物が魔力のもとである魔素を取り込み、それを体内に蓄える事で出来ると言われている。

 詳しい仕組みは明らかになってはいない。


 魔物というのは不思議な物で、倒すと死体は直ぐに消えて魔石だけを残す。

 そのせいで魔物の体の仕組みについては未だに不明な部分が多いらしい。


 逆に動物は死んでも死体は残るが魔石は採れない。


 動物と魔物との一番の違いはそこである。


「おっ、あっちにもローゴブがいたっ」


 ジェンナはもう一度『スキップ』を発動させる。


 するとまた一瞬で視界が移動したかと思うと、足元に小さな魔石が先ほどと同じく転がっている。

 そしてローゴブの姿は無い。


「ほんと、このスキルって面倒くさがりの私にはぴったりのスキルよね」


 彼女のスキル『スキップ』は非常に特殊な能力である。

 初めて十歳の洗礼の日にこのスキル名を告げられた時、親や神官様たちですら聞いたことがないスキルらしく首をひねるばかり。


 それでも洗礼の時にスキルというギフトを与えられる者はあの小さな村では珍しかった。

 最初こそ神童だの期待の星だのと持ち上げられちやほやされて過ごした。


 しかしそれから数年。

 ジェンナに与えられた『スキップ』というスキルはまったくもってその効果や能力を発揮せずにいた。

 一生懸命ケンケンパしか出来なかった彼女がスキップを出来るようにまで訓練した事も意味が無かった。


 今でも森の中を歩く時に無意識にスキップするのはその時の癖が抜けていないからだ。

 そのせいでよく木の根で躓くので、直したいといつも思いつつ、治る気配は今のところ無い。


 やがて期待されていた反動からか、いつしかジェンナは村にとって腫れ物のような扱いをされる様になり。

 そして年の離れた兄が家を継ぐと決まった日、彼女は村を出る事に決めたのだった。


これからもジェンナの物語を頑張って更新して行きたいと思っておりますので、よろしければブックマークをポチッと押して頂けると幸いです。

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