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自由の迷宮  作者: あんのうん
旅立ち編
2/22

裏切り

ミエラ捜索隊は、道なりに沿って辺りを注意しながら探していた。というのも盗賊や傭兵団がいつ何処から襲ってくるか分からないからだ。もちろん、そのような輩に引けを取るような柔な訓練をしているわけではないが用心に越した事はないだろう。


「ミエラ様ー!」


「ミエラ様ー!」


呼べども呼べども返事は返ってこない。

一体何処に行かれたのか、最悪の結末を考え始めた頃、1人の兵士が洞窟を見つけたことを報告してきた。さらにその近くにはミエラの物と思しき物が落ちていた、というのだ。


「騎士長! 洞窟の前にミエラ様の物と思しきペンダントを発見しました。」


その報せを受けたナリュートは、一先ず洞窟へ向かうことにした。


数分歩くと報告の通りに洞窟を発見することが出来た。そして中からは話し声も聞こえてくる。


「総員、警戒して進むように。」


ナリュートを先頭に洞窟の中へ進んでいく捜索隊。慎重に奥へ進んでいくと、一際明かりが強い場所を発見した。その中を覗くと、気品のかけらもない男たちが食事をしていた。


それを確認すると一旦、後続の兵士に進行を止めさせる。それぞれに武器の準備をさせ何かあった時に対処させる事にした。合図を出し武器を手に飛び出す。


「騎士団だ! 全員手を上げろ! 余計なマネはしないことだ。」


突然、飛び出してきた騎士団に驚く洞窟内の者たちをよそにナリュートは的確に指示を飛ばす。入り口を兵士で固めたことを確認するとナリュートは本来の目的であるミエラについて尋ねた。


「貴様らに聞きたいことがある。このペンダントの持ち主を知らないか?」


そう言ってペンダントを見せると、ニヤニヤとしたり隣の者と目を合わせたりと明らかに知っているような行動をしてみせた。


(知っていながら態と答えないつもりか。いや、それとも知らずして此方をおちょくって楽しんでいるのか。)




「もう一度尋ねる。この持ち主を知らないか?」


それでもニヤけるばかりで答える気のなさそうな奴等。何かあると踏んだナリュートは部屋の中に視線を巡らせると、奥の方に扉を見つけた。


兵士に警戒を怠らないように厳命し、扉へと向かった。ナリュートはその扉を開けて中を見渡すと複数の檻を見つけた。その檻の1つにはローブをまとった変なモノがいた。そしてその隣の檻には捜し続けたミエラを見つけた。





扉が突然開いたことにはビックリした。その男は少し中を見渡し、ミエラの姿を見つけると、優しい声で語りかける。



「あぁー、ミエラ様。よかった。ご無事で良かったです!」


一方のミエラもよく知る人物に会うことができてホッとした顔になり声をかける。


「うむ。ナリュート騎士長もご、」


「ご苦労」という言葉を最後まで言うことは叶わなかった。外からは呻き声のようなものが聞こえ、更にはナリュートのお腹から一本の剣が生えていたからだ。その顔は驚愕に染まり、次第に顔を歪ませたが、力を振り絞り外に向けて剣を払った。


「う、うらぁ!」



刺した人物はナリュートの攻撃を避ける為、剣を引き抜き後ろに下がる。剣を抜いたことでナリュートの口や腹からは血が流れ出る。ナリュートは自分を刺した剣を持つ男を問いただす。


「ハァ、き、貴様等、ハァ、何のつもりだ!?」


「何のつもりだ、じゃないですよー、隊長。」


周りをみると何人かの捜索隊は地に倒れ、鎧を着た兵士の何人かは洞窟内に居た奴等と顔を見合わせニヤニヤとしていた。


「ハァ、騎士でありながら、ハァ、う、裏切ったのか!?」


「お気楽な考え方ですねー。元からこいつ等の仲間でしてね。いやー、騎士道とか特訓だとか正直ウザかったんすわー。まぁ、それも今日で終わりなんですけどね。ギャハハ。」


「さてと、挨拶も終わった事だし、姫さんを連れて行くか。」


「ミエラ様に手出しは許さん!」


「前々から思ってたんすけど、そういう正義感はムカつくんだよ、ねっ!」


ナリュートは剣を構える。何度か攻防を繰り返したものの、本来の実力など出せる筈もなく、相手の蹴りによって簡単に横に飛ばされてしまった。


「さぁ、お姫様出ておいでーっと。」


「さ、触るな!汚らわしい!貴様等、ナリュートをどうした!?」


「自分で確かめてねー。それに、そんなこと言われるとお兄さんは傷ついちゃうな。少し黙ってね。」


そう言って振り上げられる手。その行動に瞬間的に目を瞑るミエラ。今、まさに叩かれそうになった瞬間だった。


「あのーすみません。俺のことも出してくれないですか?」


横から突如聞こえてきた声によって振り下ろされた手は途中で止まり、ミエラは叩かれることはなかったが、中途半端に邪魔をされた事によって募る苛立ちをエルが入る檻に蹴りを入れることで少しは落ち着いたのだろう。先程よりもイライラした感じは減り、質問に答えた。


「お前もヘボ騎士長と一緒にくたばってな。バーカ!」


「そ、そんな〜。助けてくださいよ〜!」


「何で助けなきゃなんねぇんだよ! その檻の中で死んでろ。」


そう言うと自分の前にミエラを置き部屋を出て行く。ミエラは部屋を出た後に洞窟の奴等と親しげな騎士や横たわる騎士、そしてナリュートの姿を見た途端、ナリュートに駆け寄ろうとしたが止められてしまう。仕方なく思いの丈をぶつける事にした。


「貴様等、裏切ったな! あれだけ面倒を見てもらっていながら! この屑どもめ!」


「もうそれはさっき彼処で横たわってる奴にも言ったけど裏切ってないのよ。元からこっち側の人間。気付かなかったお前等がバカなだけだって。それじゃ〜姫さまの街に帰りましょう!」


「ふん!私の街にはまだ副騎士長がいる。貴様等なんぞには負けん。せいぜい後悔することだな! ナリュート、必ず迎えに来るからな。」


これで準備は整ったとばかりに、眼鏡をかけた好青年風の男は高らかに告げる。


「さぁ!『ギデュア傭兵団』、僕等の新しいお家に帰るとしようか!」


「おぉー!」


「楽しみだぜ!」


そう言って彼等は洞窟を後にした。物陰に息を潜めて隠れていた男に気付くことはなかった。この事態が其々の運命をどう動かすのか、物語を進めてみたいと思う。

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