はじまりのとき 2
連続投稿です。
―リアムside―
「皆さんは今年で18歳になりますね。そんな皆さんに大切な話があります。」
夕夏先生が真剣な表情で口を開いた。まぁ先生がふざけている様子なんて見たことがないが。
しかし,なるほど,今日はその話か。いや,やっと来たかと言うべきか。
「お、何々?何の話??」
飛鳥―稲上飛鳥は鳶色-赤暗い茶褐色-の短髪が特徴の活発な性格をしている―が話に入ってくると面倒だな。
「なるほど,俺たちが旅立つタイミングが今ですか。」
お,夕夏先生が目を見開いてる。普段そういう姿見ないから新鮮だな。
「・・・さすがですね。リアムさんは全部お見通しですか。ということはソフィアさんも?」
その言葉に俺はソフィアを見る。ソフィアは頷くと
「はい。でも全てわかっているわけではありませんので,説明をいただきたいです。もっとも気付いている,だけでいえば,ノア君もクロエさんもだと思いますが。」
そう話すとノアとクロエも頷く。
それはそうだろう。何年も一緒に先生たちと過ごしてきたんだ,この生活の不可解な点なんていくらでもあげれる。
ただ,バカコンビがなぁ・・・
「なあ鈴,こいつら何言ってんだ?」
「知らないわよ,旅って何?どういうことよ??」
「はぁ,私の教育が間違っていたのかしら。分かるように説明しますね。その前に復習です。この世界について知っていることを話してください。」
夕夏先生のせいでは絶対にない,この2人に学習系の類で期待する方が間違っています・・・
夕夏先生の問いに2人は言葉に詰まりながらも答えていく・・・
学,魔,妖,そう呼ばれる3つの種族がこの世界には存在する。学は学びの力を用い,身体能力の低さを補うために科学を極めていき,この世界で生活している。魔は体内のリトゥモと呼ばれるエネルギーを用いて魔法や魔術を極めていき,この世界で生活している。妖は身体を変化させることでその変化したものの能力を用いることを極めていき,この世界で生活している。この3種族は互いに干渉することはなく,種族ごとでまとまって生活をしている。
この話3日に1回くらい聞いてんだけどなぁ,まだ詰まんのかよ・・・
夕夏先生も呆れてんじゃねえか。
「まぁ,いいでしょう。よく覚えていましたね。ノアさんとクロエさんは感づいているのでいいでしょう。ではリアムさん,ソフィアさん,あなたたちが知っていること,気付いていること,全て話してください。」
仕方ない。バカコンビにも伝わるように簡単に噛み砕いて説明してやるか。
「まずは全員が気づいていることからな,まずなぜ俺らはここで生活している?夕夏先生,飛鳥,鈴音は妖,俺,ソフィア,オリバー先生は学,ノア,クロエ,ルイーズ先生は魔の種族だ。まずこの時点でおかしいだろ?」
「「何が??」」
・・・正直こいつらに分からせるの無理だと思う。
しかもこういう時だけ言葉も動作もハモるからマジでイラつく。
「バカコンビは黙って正座でもしてろ。口を開くな!!
・・・くそ,ソフィア,一旦パス,やる気そがれたぜ。」
ソフィアは説明が上手い。自分でも最初から任せるべきだったとは思う。
「学んでいる通りなら,3種族は干渉しあわない,つまりは会うことはないのです。なのに私たちはこうやって生活をしている。しかも,私たちは作為的に集められていると思われます。そして教育を受けている・・・しかもおそらくとてつもなく高度な教育を。この周辺に人がいないこともおそらく考えがあってのこと。私たちはなぜここに集められたのでしょうか,私たちの役割とは何でしょうか。色々と考えましたが,私たちは,というよりリアム君が最初に気付いたのですが…」
「調律者,とでも言うべきですかね,俺らの役割は。」
俺らがそういうと,オリバー先生が拍手をする。ニヤついてんのがたち悪いぜ。試されてんのが分かる。
だけどオリバー先生はそうやって煽りはするものの,俺らのことを思って話している。
「お見事です。100点を差し上げます。その通りです。」
「それで,僕たちの旅立ちがこのタイミングなのはなぜですか?」
「いやぁ,なんか最近キナ臭くてさ,なんか怪しい動きをしてるんだよな,学と魔の国が。俺の見立てだとそろそろお前らを送らねえとまずいことになる。お前らもいい年になったしよ,見てみろソフィアちゃんの育ち具合!最高じゃねえか!!鈴音ちゃんは残念だけどぶは!!??・・・だから俺先生だってのに…」
・・・そんなことはない気がする。しかも鈴音,先生相手にマジ殴りじゃねえか・・・
「うるさいわね!!まだまだこれから育つのよ私は!!・・・何よ飛鳥,その目は。ケンカ売ってんの?買うわよ?」
「オレ何も言ってねえし!」
「そこまでにしなさい。それで,ルイーズ先生。私たちが旅立つのはいつですか?」
クロエナイス。それは俺も聞きたい。
俺らは旅なんてしたことがない。それなりに準備期間がいるし,先生方もそれが分かっているはずだから,それなりに時間はくれるはずだ。
クロエの言葉にルイーズ先生は人差し指を立てた。
「一ヶ月後ですか?・・・一週間後?・・・まさか,明日とかですか?」
「一時間後です。」
「「「「「「はっ???」」」」」」
「一時間後,そうですね,学校の正門集合にしましょう。遅れた人は夕夏先生の厳しい指導が待っていますよ。」
何も言葉が出てこない。いち早く立ち直ったノアが
「そのご指導は物理的にですか?それとも精神的にですか・・・?」
そう振り絞って出した問いかけに,夕夏はにこりと口元で嗤い,
「どちらもです。今までで一番厳しくしますね。」
ひどすぎる。夕夏先生の指導は言葉にできないほど厳しい。とりあえず指導なんて受けた日には3日は立ち直れない。
「全員急ぐぞ!一時間後に全員いろよ!!」
飛鳥がそう言うのであればおそらく先生も本気なんだろう。こいつのそういう直感的なものは異常なほど鋭いからな。
そうと決まれば全力で・・・
「ルイーズ先生が指を立てた瞬間からカウントダウンが始まってますからね。2分くらいたっていますよ。・・・あと,1人でも遅れたら連帯責任で全員ですから,ね。」
「「「「「「鬼か!!!」」」」」」
先生なんて嫌いだ。俺は全力で走った。
―side 先生―
6人が全力で去って行った後に,オリバーは生徒には見せたことのないようなまじめな顔で,
「さ,俺たちも準備しましょう。ここから先は分刻みで時が進みますからね。全力で動きますよ。」
そう呟き,3人も去り,教室には静寂が訪れたのである。
世界観が難しいです。徐々に紐解いていけるように努力します。