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行動の責任はダークと共に

「色んなスキルがあるもんだねー」

「ニャーの一族の固有スキルなんだ」

「へー」


 ダークが鍋を蹴飛ばし、私の口に蓮根を突っ込んだ際、サンが流石に限界って雰囲気で思考が読めることを暴露してきた。何やら読心スキルと言うのを所持しているらしい。


 暴露のタイミングが謎だけど、食事も終わったので今は沼地を3人でてくてく歩いている。


 確かに考えてること読まれるのって何か恥ずかしいから、普通に誰彼構わずに暴露したら敬遠されるかもしれない。つか私が本人目の前にしながら結構失礼なこと考えてたし、暴露するの戸惑うよな。


 寧ろ街まであと数時間しか一緒に行動しないはずの相手に正直に言ってくれた点は、ありがたい。あと数時間分の私が変な思考しない様に注意出来るからね。


 暴露されるよりも過去のことは、私はあんま気にしてない。


 だって私がいくら失礼なこと考えてたって言っても、サンが我慢出来る程度の思考だったってことだから。何も起こらなかったんだし、サンの方も思考読んでて黙ってたんだから失礼はお互い様だ。


 過去を掘り下げてどうこう言うつもりは、私からは特に無い。サンが何かあるって言うなら速攻で謝るつもりだけどねー。


「……ダークの主って、色んな意味で図太いな」

「まあね、ある程度必要に応じた生き方してきたから……でも今は嘘つかないように気をつけてる。てか、私カナメって名乗ってるけど、頑なに名前呼んでくれないよね」


 昨日からまあまあ会話してるけど、基本「お前」とか「ダークの主」なんよね。


 昨日の時点では警戒してるのかなーとか思ってた。

 でも、今はスキルまで暴露してくるのに、警戒という理由では何となく当てはまらないように感じたから尋ねてみた。


「ニャーは好きなやつの名前しか呼ばない」

「え、私、嫌われてるのか」


 がーん。まさかの衝撃事実。

 私てば、嫌われることしたのか?どこだ、いったいいつから嫌われた?!

 ……うん、心当たりが多い。


 胸か?胸のことネタにしたからか?

 あ、やべ、またこの思考したら余計嫌われる(汗)


「ご主人のことが、嫌い?」


 ここで聞き捨てならないとばかりに、そう繰り返しながらダークの橙の瞳が鋭利に光った。


 今まで、私が真ん中で3人並んで歩いてたのを徐に私との手を繋ぎかえて、わざわざ私とサンの間に割って入る形をとる。


「貴方がご主人の敵になるというなら、この場で魔王にしてあげましょうか」


 ん?

 魔王にしてやろうかって、流れ的には魔王になってやろうかじゃないの?それにしたって変な言い回しだけども。この世界のブラックジョークみたいなもんかな。


 そもそも、魔王をジョークで使うとか。忌避されそうなワードなだけに、冗談に使っていい言葉なのか判断つかない。


「ニャーもそう思う。冗談だとしても嫌だし、本気ならもっと嫌だ」


 私と視線を合わせて、辟易した顔をしつつサンが言ってくる。

 気づけばダークとサンの間が数歩分開いていた。


 いわゆる、ドン引きです、って距離感だね。やっぱりこの世界でジョークに魔王はNGワードだったようだ。


 つか、ナチュラルに私の思考と会話しないで欲しいんだけど。

 ダークが除け者感出るから可哀想だし。


「ダークを可哀想にしてるのは、お前だろ」

「おふっ」


 サンが唐突に冷めた目線を向けて、ダーツ並の言葉の弾を放ってくる。


 うむ。構えてない所に入ったボディブロー並に心にグサッと刺さりました。


「ニャーがお前を好きじゃないのは、そういう所だ。役目途中の堕天者を奴隷にして、連れ回し、挙句名前でも貶めてるのに平気な顔している。それなのにダークは、精神操作でもされてるのではないかってくらい心す……」


 私への口撃がグサグサとマシンガンのように連射されていたサンの言葉が途切れる。


 割と痛いところを言われていた。

 実際、そうなんだよなー。


 片手を額の上に被せて目を閉じながら、サンの正論を甘んじて受けてた所だったのに、不自然に止んだので不思議に思い、目を開ける。


 するとダークが、初めて見せるんじゃないかってくらいのガチ怒り顔でサンの胸ぐらを掴んでいた。


 《『憤怒LVmax』が発動条件を満たしました》


「ちょ、おいダーク。なにやってんの」


 私は慌ててサンを掴むダークの手を外させる。手こずるかと思ったけど、案外あっさりと離してくれた。


 解放されたサンが軽く咳込む。


「と、とりあえず落ち着いて」


 離れてくれたはいいが、ダークが何故キレてるのか分からん。

 寧ろサンはダークを庇ってたでしょうが。それなのに女の人にこんな掴みかかって……。


 困惑しつつもダークがまた掴みかからないように、後ろからダークの両手をそれぞれ掴んでおく。

 すると逆にギュッと握られた。

 目的は達成してるけどさ。なんかこれじゃない感して私は目をぱちぱちさせた。


「貴方に、何が分かる!ご主人が僕をどう扱おうと……ご主人が僕にしたことを返すのは僕の、僕だけのもの(・・)です。誰にも譲らない。増して、無関係の貴方に言われる謂れは無い」


 お、おう。

 何を言うかと思いきや、真っ赤に怒りつつ後で報復するって宣言を頂きました。


 本人前にしてても、ダークってあっけらかんと言うよね。特に「僕だけのもの」って所が凄く強調されてた。

 自分への仕打ちをまとめて報復するって決意が伺える。


 まあ、1人の人生をここまでごちゃごちゃにしてるんだから、殺される以外は甘んじて受け入れようとは思う。


 ただ、ここまで気合い入れられると、ちょっと……いや、だいぶ怖い。


 せめて死なないで済む程度にはステータスとか上げておこう。この様子だとダーク手加減してくれなさそうだし。


「……悪かった」


 サンが頭をぺこりと下げてくる。


 いや待て、謝るのは何か違う感ある。実際サンが指摘したところはその通りだと思うし、間違ってることは言ってなかった。


「ダークに良くない名前付けて奴隷にしてて、連れ回してる。サンが言ったのは事実だし、サンが謝ることじゃないでしょ」

「…………」

「僕には拒絶スキルがあります。精神操作や納得のいかない命令は拒絶出来ます。そもそもそんな操作や命令をご主人が出すこと自体少ないです。失礼なことを言うのはやめて欲しいです」

「……ニャーが悪かった。ダークを怒らせたかったわけじゃない」


 サンが再度謝ると、漸くダークの手の力が緩む。

 謝罪に対する返事はせず、話は以上だと言わんばかりに、ダークが歩き出した。


 《『憤怒LVmax』が発動条件から外れました》


 私はほっと一息つく。


 若干険悪だけど、先程よりはマシだ。なんか憤怒の条件から外れたってことはダークも怒りを収めたんだろうと思う。


 ダークがまさか女の子相手に殴りかからんばかりの勢いで行動するとは、正直ビビった。


 あれ、そういやチョウちゃん相手の時も突き飛ばしてたな。ダークって紳士かと思いきや、割と性別に構わずしでかすのかもしれん。

 今後、要注意案件だな。


 てかダークの地雷が分かりにくいよね。

 サンもびっくりしただろう。私だってあんな怒るとは思わなかったわけだし。


 サンが落ち込んだ顔しながら、後ろからとぼとぼと歩いてついてくるのを見遣る。

 多分、サンはダークを好きなんだと思う。好きなやつしか呼ばないって宣言しつつも名前呼んでたし。そういう感じなんだろ。

 先程の、好きな人が嫌な環境に居たらどうにかしたいと突っかかるのも頷ける。


 ダークへ好意的な人に初めて会ったし、個人的には2人に仲良くして欲しい。

 なんか糸口ないかなー。


「そういやサンちゃんは、なんで西の街目指してるのか聞いてもいい?」


 元気だして欲しくて、ちゃん付けで呼んでみる。

 嫌がられたら訂正しよう。


「……姉が居るから、会いに行こうかと思ってる」


 素っ気ないながらも、返事してくれた。

 ちゃん付けはスルーされたから、OKだと捉える。


 なるほど、家族のところに行くのは何となく納得する。危ない目に遭ったわけだしね。


 ただ、その言葉にダークが若干ピクっと反応を示した。


「……その状態で家族に会っても、ろくな事ないと思いますけど」

「え、そうかな?心配してるんじゃないかな」


 その状態ってのは、きっと襲われかけたって状態だろう。ダークに反論しつつサンの様子を見るために振り返る。


 彼女は、懐かしむような、それで居て泣き出しそうな顔で俯いていた。ダークの言葉に傷ついたというより、自分も予想している事だけど諦めきれないでいる様な、そんな雰囲気。


「でも、暫く会ってないから、最後に声を聞きたい」


 このやり取りで、何となく、サンが訳ありなんだろうなと勘づく。

 じゃなきゃ「最後に」なんて言葉は使わないだろうし。


 さっきダークも牽制してたけど、他人に入られたくない境界は誰にでもある。

 サンのこれ、深掘りしない方が良さそうだ。


 私が何となくサンを気にかけてるのが伝わったのか、サンは軽く溜息をつきながら困ったように首を傾げた。


「……ニャーは、お前が嫌いなわけじゃない。ダークの件が無かったら寧ろ好きな方だ。でも、ダークの境遇を許したくないから名前で呼ばない」

「了解。ありがとう。サンちゃんみたいにストレートに言ってくれる子好きだよ、私」


 私の好きって発言の時にダークがバッと振り向いてくる。あ、眉間にシワ。


「僕も、基本思ったことはご主人に言ってる」


 ムッとした顔で拗ねた様に言ってくる。


 もしかして張り合ってる?

 いやいや。報復相手に好かれてようとなかろうと普通どうでもいいんじゃないの?


「うん、ダークも好きだよ」

「…………」


 どう思われてようと、私の意見としてはダークは可愛い天使だ。嫌う理由もない。


 と、私が好きだよって言った後、ぷいと進行方向に顔を向けて急ぎ足で沼地を歩き出す。


 前をずんずん歩きながら引っ張られるので顔が見えない。フードから飛び出た長耳が若干赤っぽいのは、照れているのか怒っているのか……謎。


 怒ったと思えば拗ねて、拗ねたかと思えば無視する。


 ダークて、大概情緒不安定だよなー。

 まあ、子供だし、獲得スキル見る限りろくな生活してなかったみたいだから、しょうが無いとは思うけど。


 と、漸く沼地も終わりが見えてきた。進行方向に見えだした林を眺めながら、ダークの手をしっかりと繋ぎ込む。


 どんなに嫌われてようと、情緒不安定だろうと、その終わりに報復が待ってようと、保護者としての責任は果たすつもりだ。


 いつか笑って別れられるように。


 だから、この胸の痛みは何から来るのか、どんな名前がつくのか、考えないでおく。

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[一言] ひぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!両片想い〜〜〜〜〜!!!!!
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