聞かない方がいい事もある
キリが悪いのでちょっと短いです。
ガラガラ……
馬車ってめっちゃ揺れるんだね。お尻が痛い。そろそろ移動し始めて1時間くらい経つ。旅路は私の尻事情さえ除けば順調そうに見える。
馬車は大きさで言うと5畳分くらいの広さの幌馬車で、私とフィントは馬車の操縦席に掛けている。で、他は中に入っている。私は隣で馬を操るオッサン1号、フィントを眺める。
今更だけどこの馬車何を運んでるんだろ。確か商品も無事だ、って言ってたから何か売り物を運んでるのは分かる。でもこんな一見ヤーさんの輩が護衛付きで運ぶのってなかなかに怪しいよな。
やっぱり非合法な薬物とかかな……。
や、中身は気のいいオッサンらだとは分かってるけどさ。うん、それとこれとは別だろ。
「フィントさん、この馬車って何を運んでるんすか?」
てなわけで率直に聞いてみることにした。
するとフィントが若干悪そうな顔をした。あ、これはアレかな。
「やっぱり、薬っすか?」
「やく?あ、薬草のことか?おめぇさんほんと頭の中薬草のことしか考えてねぇのな」
失礼な。んなわけねーだろ!
だからその残念な子を見る目を止めろ!
って言いたいけど、ぐっと我慢した。
「薬草ってのは行商なら持ってて売ってるかもしれねぇけど、俺らはそんなもん運んじゃいねぇさ」
「行商じゃないんだ?」
まあ、ただの商売人には見えないよねー。
「あぁ、おめぇさんにゃ興味はないかも知れねぇが、この馬車で運んでんのは、奴隷さ」
予想のはるか斜め上キターーー。
私は反応に困って、でもまあ納得した。
だって明らかにこの人ら、やばそうなことしてそうだもんな。やってることと性格ってのは必ずしも一致しない。
「そうなんすね。まあ、納得っす」
それにしてもこの国というか世界は奴隷制度があったんだな。何となくいそうだなーとかは思ってたけどさ、こんな初期にそれ関係に直面するとは思わなかったぞ。
フィントは面白そうに私の顔を見て、豪快に笑った。
何だよ、いきなり大声で笑うなよ。
「おめぇさん、俺が思ってたより反応薄いなぁ!亜人や獣人の奴隷売買は禁止されちゃいねぇが、一応嫌悪されてんだぜ?」
へー、そうなんだ。
でも、私には正直関係ないしねぇ。それより何より実感が沸かないというか。
てか亜人て何だ?聞いちゃダメそうだなー、世界の常識の範囲は聞かない方が変に怪しまれないだろう。
「まあ、自分にあんま関係ないですからね。それに、禁止されてないなら、それなりの理由もあるんでしょうし」
「はっはっは。おい、聞いたかノズ兄貴!俺はこいつを頭に会わせるぜ」
「あぁ聞こえてた。俺も同感だぜ!」
と、幌馬車の中から野太いノズの声が応えた。
はー?何言ってんのこいつら。言外に関係ないからどうでもいいって言ったんだよ?
あれか、関係ないなら関係もたせましょうとかいう、新手の嫌がらせか。
「さっきも言いましたが、私、結構旅路を急ぎたいんですけど……」
「おめぇさん、どうせ知らないだろうから教えてやるけどよ、ジバルは世界一の犯罪都市だぜ?いくら強かろうと丸腰でうろちょろするなんざ、誰かの庇護下じゃなきゃ半日無事でいれる保証はねぇ」
「……ふむ」
でもなー、奴隷商の庇護下って、勇者としてどうなんだよ?奴隷連れた一見ヤバイコイツらが向かうジバルって街が、ヤバイ奴らの巣窟ってのは分かるけどさぁ?
「あとよ、頭なら葉巻の入手場所も知ってるぜ?」
「是非とも会わせていただきたいですね!」
脊髄反射で口から言葉が発射されました。食とタバコ、これに関してはもはや誰にも止められないのですよ?
そうして向かった先が、私の、いや、世界の今後を左右する大きなターニングポイントだった。
※修正 空欄作りました