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すみませんが状況に追いつけません。説明求む。

長らく空いてしまい申し訳ありませんでした。

また暫くお付き合いお願いしますm(*_ _)m

以下、簡単なあらすじ。

幼馴染のソウタを助けに異世界へ殴り込んだカナメ。王都から身一つで投げ出され命の危機を何度かくぐり抜け、たどり着いた街ジバルで出会ったのは大罪を犯して呪われたという少年エルフ。カナメは少年を助けるため、やむを得ず彼を奴隷として引き受け、ダークと名付けた。

紆余曲折を経て、エルフの住む大森林へ聖剣を受け取りに訪れたが村に住むエルフを挑発してしまい、追われる身となった。決死の逃亡の末、カナメの右腕を代償にたどり着いたのは「果ての森」と呼ばれる地。逃亡成功を安堵するのも束の間、カナメとダークの前に現れたのはチョウと名乗る不思議な生物(幼女)。チョウはカナメの動かなくなってしまった右腕の蘇生をかって出たが、ダークの警戒は強い。カナメの仲介も虚しくダークとチョウの仲は険悪なままであった……

 太陽の傾き始めたところを見計らって、一旦野宿の準備に入った。もはや野宿も慣れたもので、薪は途中で拾いつつ平地を探した。テントすらないから、ものの2分で準備は終了する。


 あぁ、そもそも私達がどちらの方向へ歩いていたかというと、西だ。だから夕陽が目にしみる…眩しいから進行をやめるとか、そんなことはないんだよ、決して。単純に人数も増えたし色々あるかなって思うじゃん。決してギスギスに挟まれることに耐えかねたとかでもないから、うん。いや、ちょっとはあるけどな。


 ダークが言うには世界の概念図は、ヒトの国2カ国を中心に北が大森林、西がドワーフのいる鉱山地帯、西南に亜人の国(というより小集落の集まり)の砂漠地帯があるらしい。果ての森は大森林の北部に当たるんだけど、西に行けば鉱山地帯に突入してくれるのではないかと予想を立てた。


 そうすれば、大森林に戻ってエルフに再度追いかけられることもないのである程度身の安全は保証されるはずだよね。


 まあ、どのくらいの距離か全く不明なんだけどねー。ダーク曰く、ジバルから大森林くらいとのことだけど、私正直途中気絶してるし、距離わかんねーよ状態だわ。一週間くらいかな?


「そう言えばチョウちゃんは、私のあとをずっとつけてたよね?」

「んー?そうなのぉ?」

「えっ」


 準備が終わって薪に火をつけるタイミングでふと思い出したことを聞いてみた。案の定、惚けたような気だるげな返し。記憶喪失だから予想はしてたけどね。


 空気が入るように組んだ薪に火魔法で火をつけたダークがびっくりしたように振り返る。ダークの反応に呼応するかのように火が一瞬ボワッと跳ねた。


 あれ、ダーク気づいてなかったの?

 そう言えばあの鳴き声がある時ってダーク何だかんだ居なかったな。


「多分。あのグゲェウケって鳴く声、今までに2回くらい聞いたよ。もしかしたら同種族かも知れないけどさ」

「ふーん」


 ふーんって。全然興味無さそうだなぁ、おい。あんたに近しい情報なんだよ?


「それはどうでもいいけどぉ、カナメの腕の蘇生終わったよー」


 ド直球でどうでもいいって言ってきおったわ!

 私は思わずガクっと身体を傾ける。この子、ほんと何なの。


 まあ確かに私にとっても右腕が動くことの方が大事なんだけどさー。何となく、こう、もやもやというか……。


 そう思いつつ、右の手のひらを動かそうと試みた。


「おお?!」


 まるで何事も無かったかのようにスムーズに肩から先が動いた。私の右手は操作通りチョウの手を離れて顔の前でグーパーを繰り返す。


 若干腕を動かす感覚に違和感を覚えるのは、やっぱりそれまで無感覚だったからだろうか。問題なく無事に蘇生されたらしい。


 まあでも、動く!素晴らしい!!

 ふっ、右腕が疼くぜ……って、中二っぽいな。辞めておこう。


「すごーい!!ホントに動くようになってる!」

「チョウのおかげみたい」

「おかげだね!!ありがとう」

「えへへー」


 チョウの調子は変わらず平坦で無機質だけど、そこそこ自慢げに受け取れる。結構見た目通りの純朴さはあるのかもしれない。


 治った右手でチョウの頭を撫でようと手を翳したその時……


 バシッ


 チョウが吹き飛んだ。


「?!」


 私は一瞬何が起きたのか分からず、茫然とした。


「ご主人の治療が終われば用済みです。さっさと消えてください」

「ちょ、ちょっと、ダーク?!」


 チョウは100mくらい吹き飛んだ先で、無言で立ち上がる。どうやら拒絶スキルを発動したらしい。詠唱聞こえなかったしね。


「空かける我が風の盟友よ、汝の力を以て我が敵を切り裂け」

「ちょ、おい、ダーク!やめなさい!」


 思わず止める私の頭にパリンと割れる音が響いた。


『行動阻止の命令が拒絶されました。以降、同一命令に対して1時間のディレイタイムが発生します』


 え、今のって命令に入るのか?!まあ拒絶されたけど…って、それどころじゃない。


 私は即座に頭に思い浮かんだ第二の阻止方法を実行に移すため、ダークと繋いでいた手を振り解く。


 すると間一髪でチョウの眼前まで迫っていた風の刃が掻き消えた。


 あー、発された魔法も途中で消えちゃうんだね。この先の実戦を考えるとなかなかに不便だと感じたけど今回ばかりはその設定に感謝する。


 ホッとしつつ、暴走少年の頭にゲンコツを下ろした。


 バキっ


「うぐっ?!」


「なにしてんの、このバカたれ!」

「痛いっ」

「そりゃ痛いでしょうよ。本気で殴ってるし。あんた今何しようとしたか分かってる?」


 ダークは頭を抑えてフラフラとしゃがみこんだ。


 あ、やべ。HPが一気に1に減ってる。あぶね。冷や汗かいたのはとりあえず心の中だけに留めておく。


「あれー?チョウ、お前のこと、知ってるみたい?」


 思いのほかすぐそばで声がかかって、びっくりする。発生源は私の顔真横だった。


「おわっ」


 顔の上半分が黒い羽根で覆われ、赤い目のカラスのような異様な顔がそこにあった。先程の幼女とは打って変わったその異常性に、思わず背筋がぞわっとする。


「来るな!」


 頭を抑えながらもよろよろと立ち上がったダークは、再度拒絶スキルを発動させたらしい。だけど今度は数メートル離れただけだ。


 私はというと、どうしたらいいのか分からずとりあえず目を白黒させるのみ。

 チョウに対するダークの警戒心を信じるべきなんだろうけど、片やチョウには右腕の恩があるわけで。


「あはは、面白ーい!カナメ、面白いの連れてるー。面白いみたいー!あはは」


 おいおい、私に話を振られても困るんだが。

 つーか何が面白いのかさっぱりだよ。声が直接頭に響いてるんじゃないかと思うくらいに彼女の声が思考をつんざいてくる。


「あはは、あははは」


 下半分の人間の口が大きく開けられ嘲笑のような声をあげ続ける。


「カナメ、いつ切る?いつ切るの?カナメ、呼ぶみたい?私を呼ぶ?呼んでね。ふふふふふ、あはは。楽しみみたい!」


 すまん。意味不明なんだが。

 とりあえずキチガ〇さんのようだ。壊れたように、これ以上無いくらいにおもしろおかしいという顔して笑い続けている。まあ目はカラスの様に無感情にも見えるんだけどさ。


 得体の知れない緊張感が沸き起こる。ダークの警戒通り、流石にこの状態を目の当たりにするとこの子は危険な感じがする。


 つーか私がダークを切るはずないでしょうが。てか、切るってなんだ。奴隷として切り捨てる的な?そんなことするわけないでしょうに。


 ダークは意味わかるんだろうかとダークの方を見てみるけど、ダークも理解しかねているらしく、眉間に皺を寄せている。

 いや、眉間の皺はもはやデフォルトだけどね。表情からも、何言ってんだこいつって思ってるのが読み取れた。


「あー、面白いみたい、ふふ。カレンに言うの。面白いこと、言うの。一緒に楽しむみたい」

「あの、チョウちゃん?」

「カナメ、呼んでね。ちゃんと切る時、チョウを呼ぶの。カナメの力になるの。それまで私カレンのところにいるみたい」


 チョウは完全にデカいカラスになり、地を蹴った。彼女(?)の羽ばたきで軽く風が発生したけれど、すぐにその姿と共に掻き消えた。


「………………」


 しーーーーーん。


 一気に静まり返った。先程ダークが起こした焚き火もいつの間にやら消えている。


 日が半分くらい落ちているのだろうか、気づけば森の葉が赤々としていた。


 呆然とする。それはしょうがないだろう、私の理解の範囲を超えたキチガ〇さんの発言をどう消化しろというのだ。まあ、とりあえずいうとしたら、


 カレンって、誰やねーーん。


「………………」


 ダークは、手負いの獣のように怒りのこもった瞳を先程までチョウのいた空間を睨みつけている。光の加減だろうか、瞳が赤い。チョウの瞳は赤黒い妖艶さがあるけど、ダークの目はどちらかと言えば夕陽の赤だ。


 てか、やっぱりダークとあの子って知り合いなんじゃね。それも、仲はあんまり宜しくないような……お互い物騒だしね。


 というか、待てよ。チョウってほんとに記憶喪失だったの?


 出会い頭にダークの事を奴隷と断言していたのに若干の違和感はあったんだけど、それは右手の甲を盗み見たんだろうと思っていた。けど、先程のやり取りで推察するに、記憶喪失はウソだったと考えるのが妥当ではないだろうか。


 いや、途中までダークのこと気づいてなかったみたいだよね?


「ご主人……」

「ん?」


 私が出口のなさそうな思考に囚われ掛けていると、声がかかった。

 ポツリと、それでいてジェンガを抜く時のような慎重な声音。あ、例えが悪い?でもそのくらいの丁寧さで慎重さというかね、ちょっと怯えているような。


「……ご主人の称号、勇者じゃない……よね」

「ん?うん。違うね」


 違うねの前に、今はをつけたところでこの先再度勇者の称号になれる見込みは無い。だから正直に現状を表しておく。つーか見習いだったしな。



 ダークを改めてしっかり見ると壊れそうな顔をしていた。壊れそうなって何だよって思うかもしれない。でもその表現が一番しっくりくる。ヒビの入ったガラスのようなそんな儚い表情で、私を見ている。


 先程私が殴ったからとか、そんな理由でこんな顔になるのだろうか。結果としては確かに彼女(?)は危ない感じがしたし、助けられたわけで。


「あ、さっきは殴ってごめんね。急だったし一応恩人だと思ってたから失礼だとは今でも思ってるけど。ダークはダークでちゃんと考えてくれてたんだよね」

「いや、それは、全然。……あれとの関係は、僕の問題でもある、ので」


 うむぅ、やはりその事についての表情ではないらしい。相変わらずダークはどこか心ここに在らずの状態で反応する。


 となると、ダークにとってはあのキチガ〇言語の何かが地雷だったのだろうか?


「ご主人は……」


 と、私も思案しているうちにダークの方が先に口を開いた。


「ご主人は、僕をいつか……」

「切らないよ」


 キッパリはっきりと食いつき気味で断言した。

 うすうすだけど、ダークが引っかかるとしたら、そこだろうかと思いいたった。


 ダークは堕天者だ。ユウキの発言からも推測するに勇者は堕天者も殺すらしい。だから先程私が勇者かどうか尋ねたと考えるのも妥当だ。


 でも、私がこの先ダークに手を出すことなんか絶対にない。

 あ、いや、さっきみたいにゲンコツとかはあると思うけどね。


 それでも、ダークは宙を見ている。信じてないんだろうか。それもそうか。なんだかんだ、私たちの共有時間は少ない。そんな短時間で信用なんてそうそうできはしないだろう。


 私はしゃがんでダークの手を再度取る。今度はダークの両手をそれぞれ両手で持って正面に回る。手には力を込めてしっかり握った。


 下から覗くと一層フードの遮りはなくて、橙色の微かに揺れる瞳を持った、無表情な子供の顔が顕になる。陽もそろそろ青みがかり、彼の表情も段々とくらみにきえていくかのように見える。


 ただ、細い陽の光を辿り、斜め下からすくい上げるようにその瞳を見据える。


「私はダークを殺さないし、殺させない。絶対に。絶対にだ」


 大事なことは、相手の目を見て伝える。けれど、これは嘘の常套手段。これを嘘だと感じられない様に、私はダークには嘘をつかないようにしよう。このことを霞ませないために。不安にさせないように。


「っ!」


 私の正面から伝えた言葉は通じたんだろうか。彼は私を見つめ返しつつ、一層眉間に皺を寄せて、口を真一文字に……いや、唇噛んでるな。ぎゅっと何かに耐えている様子だ。それでも、その防衛戦は上手くいかなかったらしい。みるみるうちに瞳が潤んでいく。


 あーこれは、泣くのかな。やっぱりこの子も泣き虫の素質があるね。

 このまま完全に泣くのを見守るのもいいんだけど、可愛いし。何より私のサドっ子気質が疼くわけだけども。


 この歳の頃を虐め倒すとソウタが出来るという検証結果が図らずもあるわけで。まあそれに、よそ様の子供を泣かしまくるのも気が引ける。


 私は立ち上がって、軽く彼の華奢な身体にハグをして頭をポンポン叩く。


 私はダークに寄り添えているだろうか。私の言葉はダークの中でどんな風に消化されただろうか。心を閉ざして全く別のことに対して涙をこらえていることだって有りうる。


 それでも可能な限り寄り添いたい、彼にとって私が世界で唯一の味方なら、そうであり続けたい。

 でも、いつまで続くんだろうね。


 私はソウタを連れて帰るんだよ、ここに住み着くつもりは毛頭無い。そして本来ここへ来た一番の目的を動かすつもりは無い。


 それはつまり、私と(ダーク)の関係にはいつか終わりがあるという事だ。

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