シャ〇クス化したのでとりあえず赤毛になってもいいかなと思う
大変お待たせしました。
ノズじゃなくて本編です。相変わらず進まないけど、あと2話本編続きます、多分。
あと、夜型生活にシフトチェンジしたので夜中2時更新にします。
太陽もそろそろ赤く空を染めようかって頃になった。巣に帰っているのか鳥達の囀りが遠くに消えていく。
あの変な鳴き声のやつが居るかと思って身構えたけど、流石に辺境の地だといないみたいだね。耳を澄ましても普通の鳥の声だけだった。
「あの、さ」
「はい」
私達の姿勢は数時間前から変わっていない。隣で私の腕に相変わらずしがみつく(もっと言うなら不機嫌なお顔も変わらない)少年エルフに呼びかけた。
「ありがとうね」
「……え?」
咄嗟にパッと顔を上げて視線を合わせたダークの顔には戸惑いが浮かんでいた。
「いやぁ、色々聞いたり話したりしたいって思ってたけど、まずはお礼かなって思ってさ」
不機嫌真っ最中だったせいでちょっと萎縮しちゃったけどさ、この子にはまず、お礼を言わなきゃだよね。
そう思ってなるべく微笑みかけながら言ったんだけど、数秒後にはダークはその顔にいっそ怪訝な色を浮かべた。
「何で……」
「あんまり嬉しくなかったけど洞窟で庇ってくれたことあるよね。正直死にかけだったから、助かったじゃん?あれはホントにあんまり嬉しくなかったからもう2度とやって欲しくはないけどね。あとは、気を失ってた私を大森林まで運んでくれたんでしょ?さっきも滝から落ちてるところを魔法で助けてくれたし、傷の手当てだって頼んでないけど進んでしてくれて……ダークが居なかったら正直困ってたっていうか、死んでたっていうかさ……」
そこで私は怪訝を通り越して、段々と険しくなっていくオレンジの視線に言葉を切った。
おやおや。もしかして、これは悪化させたかもしれない?怒ってる感じがする。
「そんなこと、本気で言ってるんですか?それだけの事で礼を?……僕が、あなたを……助け、たと……っ」
そこでダークが苦しそうに顔を歪めた。
グッと喉に力を込めてるせいで言葉が詰まっているみたいだ。
背中あたりを摩ってやりたいけど生憎と両手が塞がっている。
だからとりあえず、聞き捨てならない部分の訂正だけでもしておこう。
「いや、それだけじゃないよ!朝ご飯にフルーツ採ってきてくれてたでしょ?あ、その前にジバルでも私が寝てる間にお湯用意してくれてたし、ザポンの実だっけ?アレ剥いてくれたでしょ。てか、ジンラミー対決の時!!あれめっちゃ助けられたし!私1人じゃ、とんでもない借金が生まれてたからホントに有難かったんだよ。だから、お礼はそう言うのも全部込みで言ったんだよ」
ほんと、色々感謝する部分はあったんだよ。言葉で伝えられるなら先に伝えなければいけないでしょう。
ま、一緒くたにするのもちょっと失礼かなって思うけど、とりあえずって事でね。後からちょくちょく言われるより、まず最初に言うほうがいいかなって思うし。
「お礼の言葉貯まってたからさ、嬉しいよ。語彙力ないから一言にしかなんないけど。せっかくならさ、最初に言いたいなって思ったんだ。だから……」
ほんとはここで頭とか撫でたいんだけどね、無理そうだから額と額をくっつけた。
コツンとした硬い感触がおでこにあたる。
「ありがとうね」
ダークは相変わらず苦しそうな顔だけど、ギュッと唇を噛みながら八の字に眉を作って私の腕に顔を埋めた。
…………。
なに、泣きそうなの?怒ってると思ったけど、違ったのか。
前々から思ってたけどさ、ひょっとしてダークは涙脆い系?
涙脆いの代名詞って、壮太じゃん。
うーむ、先の事考えると壮太×2は勘弁して欲しいかなぁ。お守りはするけどさー、面倒臭いのはお断りだよー?
「で。一段落したので本題に入ると、実はさっきHPが1/25以上になったんだよねー」
「……そっちを早く言って」
目を潤ませて泣きそうなところを押しやって、すかさず華麗なタメ口で返したこの少年はツッコミの才能があるのかも知れない。
そう思いつつも、かれこれ数時間前のことを思い返してみる。
ダークが私の腕をギュッと抱きしめたまま唐突に言ってきたのだよ、「自分のHPの1/25以上になったら教えてくれ」と。
どうせ口を効くならお礼からっていう私のちょっとした行動でダークの不機嫌な顔は崩れたので、ミッション成功と言えよう。
若干呆れが入ってる気がしないでもないダークに笑いかけた。
「先に感謝の言葉を言うのは大事でしょ」
「……ご主人は、色々間違ってる」
スッと目を細めて再度眉間に皺を作りながらも、笑ってるように見えなくもない不思議な表情でダークは答えた。
で、そのまま私の左手を握りながら立ち上がって、私の正面に向かい合わせに座る。
曖昧な顔ではなくて、真剣そのものなダークにつられて私も何となく緊張する。
え、なに?何かするの?
疑問符を浮かべる私をよそにダークは慎重に私の右手に片手を被せた。
「ご主人、右手の親指動かせる?」
「え?……痛そうだし嫌かな」
「痛いのは我慢してやって欲しいんだけど」
「はい」
この有無を言わさぬ感じ、何なんだよ。「はい」以外は返事じゃない的な?コイツ将来大物になるわ。
まあそんなアホなことを考えながら右手の親指を動かす。いや、動かそうとした。
「ふんぎぎぎぐぎぃ……」
痛い。マジで痛い。
でもひたすら痛いのに数ミリすら動く気配が無かった。まるでコンクリートで片腕を固められたみたいに右腕を動かす感覚が途切れていく。
どんなに歯を食いしばって格闘しても肩から下が微動だにしない。
「……ご主人、もういい、よ」
あー。これ、ヤバイヤツなのかな。
何となくそう直感した。直感の根拠を端的に言うならダークの暗い顔が、私の右腕の状態が喜ばしくない事を如実に語っていますね。
自分でもちょっとヤバイなーて思ってたけどさー。ガチか。ガチなのか。
「えっと、どんな感じ、なのかな?」
私の問いかけにダークは暗い顔のまま首を横に振った。
「HPが自然回復で1/25以上になっても機能しなければ、全回復してもその部分が戻ることは無いって聞いたので……」
oh……
異世界でまさかのシャ〇クス状態になるとは。
とりあえず言葉には表せない無念さがあるねぇ。
そっかー、右腕ダメなのかー。利き手困るなー。文字とか書けないし……あ、箸使えねぇ。
とまあ、そんな感じの憂いはあるんだけどね。まずは目の前のこととして。
左手をダークの手から離して湿気た面の上にある銀髪をぐしゃぐしゃとかき撫でた。
「まー、死ぬか片腕かだったら片腕だからなぁ。しょうがないっ!生き残れてよかったよね!」
きっと普通の人間なら怪我した本人よりも、怪我させたと思ってるやつの方が苦しい。痛みを代わってあげられない感じってもどかしいし、いっそ自分が怪我すれば良かったのにと思ってしまう。
このガキも例え寝てる間であったとしても責任とか感じてそうだもんね。
でもこの先しょんぼり状態で未開の地を旅するのとか、もっとゴメンだから精一杯明るく言い切ってやった。
ダークはオレンジの目に暗さを浮かべながら、未だに憂鬱そうに私を見つめた。
「動かないならしょうがないっしょ?でも、利き手だったからさ、君にはとりあえず人里に出るまでたくさんお世話してもらいたいんだけど、いいかな?」
動かないならしょうがない。
そんでもって彼が罪悪感を抱いているなら解消してもらうのが一番だし、私も助かる。
ウィンウィンの関係ですね、はい。
……ご都合主義ですが何か?
でも、案の定ダークは少し心外だという色を浮かばせながら息巻いた。
「当たり前だ、よ。許可なんてご主人は取るべき立場じゃないん……だよ。何でも言いつけてくだ……じゃなくて、何でも言いつけて欲しい、よ」
「ま、嫌だったら適宜拒絶してくれればいいしね」
「……はい」
若干戸惑う様に間をあけてダークが返したところで太陽が西の山に消えた。
お待たせしてすみません!気づけば新年度でした。
夏までのスケジュール次第ですが、週に2回掲載出来れば良いかなぁと甘い考えでおります。安定して日刊出来ず申し訳ないです!
とりあえず今週だけは日刊目指して頑張ります!




