表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/150

距離感が難しいと思うのは色々あるからで…

 「あ、あと丁寧語もやめてね、めんどくさいから」


 ダークから頭を話しながら言った。相手は長い耳をピンと立てて困惑気味な顔をする。


 「え、……丁寧語を?」

 「ん?うん」

 「分かりま……分かった」

 「…………」


 …………ミスったぁぁあ。

 ダークが言い換えたのを聞いて自分の言い間違いに気づく。


 尊敬語(もしくは謙譲語)はやめてねって言おうとしたのに、丁寧語と尊敬語間違えるって、バカじゃん!


 個人的には年下だから敬語使うのは普通だと思うんだけどさ。謙譲語とか尊敬語って改まって言われる側は気恥しいしさ、正直よく分からん尊敬語使われたら理解できるか怪しいんだよ。それを恐れて言ったことなんだけど……て、あれ、よくよく考えたらその思考自体が恥ずかしいな。


 や、まあ、主従関係って感じがして嫌だったってのがあるけどね?あ、これ言い訳じゃないよ?


 いくら気が抜けたとはいえ、ちょっとアホすぎる。んー、今更言い換えるのはそれなりに恥ずかしいぞ。


 ……まあいっか。

 数秒考えた末、この結論になった。ガキはガキらしくタメ口きいてくれ。私は何とも思わんよ。


 で、だ。

 さて。

 さてさてさて。


 状況把握の時間ですね。

 まずは、(エルフ)が追って来るかどうか。身の安全の確保です。言うなればダークの発する言語以上に大事なことですね。


 我ながら情けなるね、もっと早く考え至るべきじゃね?


 と、たった今落ちてきた滝の出どころを見上げる。


 「ぅうわー……」


 たっけぇ。軽く300mはあんじゃね?

 東京タワーよりは高い。確実に。

 落ちてる間は地面までの自分の距離考えるだけでいっぱいいっぱいだったけど、この高さを生き残ったってことが自分でも信じられないな。


 で、感心しながら暫く見上げたけど小粒程も人影は見当たらない。


 まー正直、崖から落ちて、滝から落ちてだから、追ってくる方も大変だとは思うけどさ。私達をそこまでして追ってくるかって言うと怪しいよな。


 「エルフ達、来るかなぁ」


 誰ともなしに独り言を呟いた。


 「……あの、ご主人」

 「ん?」


 腕の中から声が聞こえるとその声の主が身動ぎした。


 あ、いつまでもくっつくのは流石に嫌かな、失敬失敬。回していた腕を下ろしてちょっと離れた。


 離れたと言ってもお互い数cmの距離にある。

 なんでかっていうとダークが私の目の横に当ててた手を未だに外そうとしないからで。……くっつくの嫌な訳では無いのかな。

 それかこの目の横の傷、意識してないだけで実は大怪我だったりするのか?


 「状況が分かりませ……いや、分からない……ん、だ、けど。教えてくださ……じゃなくて、教えて欲しい……な」


 たどたどしいタメ語で遠慮がちに言葉を選びながら訊いてきた。目を下の方に向けて不安そうに漂わせながら、ついでに耳がへにゃっと下がり気味な感じ。


 だー!キュンってきた!


 私は心の鼻血を拭った。


 何その顔!困ったような、それでいて一生懸命な感じで……襲われたいのか!

 いや、私は襲わないけども。だめだ、これほっといたら危ないオッサンに危ない事されるよ、この子!いや、ほっとかないけどさ。


 で、また抱き締めたい衝動に駆られるんだけど、流石にちょっと不純な気持ちが混じってるし拒絶されかねないので辞めておく。呪いの影響関係無しに拒絶スキル使われてしまったら、いくら私でも3分くらい立ち直れないと思うし。


 あ、それよりダークの質問に答えなきゃだよね。自分の状況整理のためにも、簡潔に伝えておこう。


 「簡単に言うと、君の入れられた箱を私がぶっ壊して、君をさらってなんやかんやでここまで来たって感じ」

 「…………?」


 オレンジの目を瞬かせて暫くぼんやりとしていたかと思うと、眉間の皺を濃くして急に理解できないみたいな顔をした。


 「箱……って、口割りの……?」

 「ん?うん、そうそうそう」

 「ぶっ壊すって?」

 「そうそう。でさ、そのせいで君に悪夢の呪いが付与されて、眠る君をを抱えて逃げ回ったんだけど、なんやかんやでここにいるって感じ」

 「…………はぁ」


 ダークは暫く息を詰めるようにして思案してる風だったけど、短くため息をついた。


 「えぇーと。多分、そのなんやかんやとかを、省略されずに聞いた方がいい気がしま……気がする、んだ、よね」


 で、しょうがないので事細かに説明すること5分。依然として滝の方からエルフが来る気配はない。


 「ご主人の話の通りなら、ここは『果ての森』だと思いま……思う。だからヤツらは追ってこないで……こない、よ」

 「果ての森って何?」

 「大森林の外側を囲む森のこと、だ、よ」

 「なるほど」


 どうでもいいけどダークってタメ語下手くそだな。そこまで言い間違えるのか、ってレベルだわ。意識してわざと『よ』をくっつけてるのは何でだろ、丁寧さを出したいのかな?


 まあそもそも何で話せてるかって言うと、呪い無効と共に復活した加護『大森林の加護』の影響なんだろうな。まあ他にも復活してた、いかにもな加護があるんだけどでも、これは今は置いておこう。で、私の使ってる言語はダークにとって、もともとは外国語だし唐突にタメ語にしろってのは結構ハードルが高かったのかもしれない。


 タメ語縛りを取り消すのも手だけど、可愛いので続行してます。許せ、ダーク。

 タメ語で調子に乗りだしたら丁寧語の解除をしよう。


 で、元の話に戻ると、果ての森だとエルフは追ってこないのか。何でだ?


 「果ての森はエルフの間で『恵みの通わぬ地』とされているので、そこへ放り出された僕達は死んだも同然と見られているはずで……だ、よ」

 「出た、『恵み』!」

 「?」


 忘れたとは言わせねーぞ、お前「そんな恵はない」発言してただろ。

 しかしまあ、それは置いておこう。


 追手の心配はないなら次は魔物だ。


 「じゃこのあたりで危険な魔物はいる?」

 「……果ての森には誰も行かないので……」

 「どうなってるか分からないってことね」

 「はい」


 危機感知はそろそろ切れるな。でも私そろそろスタミナ切れるし……。


 「力が戻った今、あなたに害を成すもの全てを殲滅するつもりなので、ご主人が恐れることはないと」


 オレンジの瞳が強く煌めく。ピリッとした感覚が私の全身に走った。


 「はは、頼もしいな。あんた魔法使えるもんね。物理攻撃は私担当だし、なかなかいいタッグだよね」


 ニコッと笑ってそう言うと、ダークはちょっと不満そうな顔をして「はい」と返事した。その瞳には先ほどの鋭さは薄れている。


 なんだろう、さっきの、ちょっと危険な感じがした。


 「じゃ、服脱いでさっさとすることしようか」

 「えっ!」


 えっ!じゃないよ、私達は2人揃って濡れネズミ状態なのだよ。


 「このままじゃ風邪ひくでしょ。とりあえず結びつけたローブ外さなきゃ……」

 「……な、なんだ。そ、そそそうだ、よね」


 安堵したような顔が赤い。


 なんとなくその様子で何を勘違いしたのか分かる。


 こいつけっこうマセた思考してんのな。こんな場面でエロ的な事するはずないでしょうが。や、こんな場面じゃなくてもしないよ?!相手は未成年だからね?普通に犯罪者になるよ。


 左手で背中側に括りつけた結び目を解こうと試みるけど、めちゃくちゃ硬い。まあ、このおかげで荒波に揉まれても離れなかったんだけどね。片手で、しかも利き手じゃない方のみで外すのは無理だな。


 「あのさ、ちょいこの背中のローブ解いてくんないかな。片手じゃ無理そうなんだよね」

 「片手?」




 「…………」

 「…………」


 今、私達はザアザアと滝の飛沫がかかる先ほどの場所から数十m移動したところにいる。天気はいいけど冷えた風が来るので焚き火をしていて、パチパチと爆ぜる音を聞く。無言で。


 私はもちろん、この子と話せたら聞きたいことが山ほどあった。いや、過去形ではなくて実際聞きたいんだけどね。


 チラ見したステータスもツッコミどころ満載だし。ちょっと地雷的な所が多そうだからこれは機を見てって感じになると思うんだけど、それにしてもだよ。


 体感1週間近く話せなかった相手とようやく話せるようになったんだ。話したくないわけがない。


 でもダークは、何処から拾ってきたのか適度な大きさの枝と紐のようなツタを持ってきて甲斐甲斐しく私の折れた右腕の固定をしてくれている。無言で。もっと言うなら超絶不機嫌そうな顔で。更に、もっと言うなら明らかに何かに怒っているように歯を食いしばっている。


 そんな相手に、「何で堕天者なったん?」とか、「名前適当にダークにしちゃってごめんねー、金たまったらちゃんと名前つけ直すわ、あとちゃんと奴隷も解除するし許してな」とか、「さっきの魔法凄いねー、おかげで命拾いしたわ、マジ感謝っ!」とか、軽い調子で言えるだろうか。


 A(アンサー),私には言えません。


 でも流石にこの沈黙はキツイ。


 何だかんだいって私の思考は身体中の痛みでかなり鈍化している。多分アドレナリン的なものの効果がなくなってきたんだろうね。あのよく分からん命のかかった興奮状態からは冷めてきたし、正直ちょっとでも身体のどこかを動かすだけで全身に痛みが走る感じ。


 痛覚耐性もっと働けよぉ。


 と、いうわけで、つまり先のこと前のこと云々考えてる余裕はなくて、今この瞬間、どうやったらダークの機嫌が直るかってことにかなりの意識を消費しているのです。


 だって気まずいのって嫌じゃん!まだもうちょいこの子と一緒に行動するだろうしさ!


 改めてダークを見る。すこぶる不機嫌だね。


 不機嫌になったのは、私がローブを解くのを手伝ってもらったあたりからだ。段々痛みが増してきているのもあってなかなか動かない私の代わりに、ローブの拘束を外し、濡れたマントを脱がせてくれたあたりから機嫌が急降下している。


 アレか?自分が寝てる間に勝手に怪我した主人の手当とかやってらんねーよ的な?それとも、こんな情けない(もしくは弱っちい)主人の奴隷なんて先が思いやられるぜ的な?


 もしそうなら申し訳なさ過ぎる。もちろん「手当して」とか頼んでないけどさ。そこんとこは奴隷だししかたなく……とか思ってるのかもしれない。


 原因があるならはっきり言ってよぉ。こんな顔されながら手当されるとか、逆に心苦しいというかなんと言うか……。


 「えっと、あのさ?」

 「……はい」


 私の問いかけに、相変わらずの顔で返事をする。目線は私の右腕で、丁寧に枝に固定している最中だ。びっくりするぐらい丁寧だから、副木に結びつけるなんて確実に痛いはずなのにそこまで激痛じゃない。


 「あの、薬草食べればこんな傷治っちゃうし、適当でいいよ?」

 「……薬草って、回復薬はもう全部使い切ってま……使い切ってる、よね」

 「ん?いや、薬草だよ。そこなへんに生えてるじゃん。それさえ食べときゃ傷も多分治るしさ、そんな丁寧に手当してくれなくても……」

 「は?」


 こっわ。

 目が、意味わかんねえこと喋ってる場合じゃねぇだろ、このゴミが!って言ってる。

 冷凍庫より冷たい視線だ。


 思わず口を噤む。


 「……例え回復薬や薬草でHP回復を図るにしても、確実に元に戻るわけない、よ。こんな、骨まで木っ端微塵になってるのに」

 「え。マジで」


 回復薬や薬草で全部回復すると思ってた!だって初日でも怪我とか治ってたし。


 でもダークは嘘を言ってる素振りがない。

 ……確かにフィントの頭の傷跡とか、回復薬で回復できるこの世界じゃ不自然な感じはしてた。もしかして、一定のダメージ以上は跡が残る的な?


 「こんな酷い傷、回復魔法の『蘇生(リサステイション)』でも治るか怪しい」

 「なら、回復魔法の使え無い現状はやっぱり薬草食べるしかないじゃん」

 「は?」


 だから、怖いってば!

 その、いっそ喋ってくんなこのクソゴミカス!て目を向けないで!


 「薬草なんか食べないでくださ……食べないでよ。あんなこの世のものとも思えない味の薬草で気絶なんかされたくない、よ」


 や、気絶はしないけどさ。私だってHPが100切った状態で維持するのは不安なんだよね?全快状態だと4000以上あるのにその1/40無いんだから、ちょっとした恐怖を抱くわけですよ?


 でも、もう今の彼に抗議をするつもりは無い。だって、より一層不機嫌になってるし。


 この眉間の皺緩めてニコニコしてる方がよっぽど可愛いのにさ、コイツすぐ不機嫌になるよなー。


 ささやかな抵抗として眉間グリグリを決行しようと左手を頭に近づけたところでバチンと弾かれた。

 これは……!


 「呪い感染しないのに何で拒絶スキル発動すんのさ、傷つくよ?!」

 「邪魔、しないで欲しいので」

 「はい」


 もう、この子怖い。目がガチで怒ってるし、そんな目で睨まないで!


 私はとある暗殺一家の母親じゃないからそんな目を向けるようになるなんてとか言って悦に入ったりしないから!その目を向けられちゃ可愛いとか思えないからね。


 右腕の治療が終わったのか、ダークが私の腕から手を離した。


 治療に邪魔だったのと、もはや意味をなさないって事でダークの手には包帯がない。肌と肌の接触が消えた途端、ダークの身体は呪いのために暗くなる。

 そう、呪いは完全に解けたわけじゃないのです。


 《『ステータスダウンの呪い(上)』:HP、スタミナ、MP、各攻撃力、各防御力、回避力におけるステータスが全て10000分の1になる。但しその際1以下にはなれない。また、HPに関しては、被受者の身体が外的内的要因で全て機能しなくなった時、0となる。また、スキル『呪い解除』による解除は不可》

 《『死後の呪い(上)』:対象者がHP0を迎えた地点の半径200mは呪われた大地(1時間毎にランダムで1つ呪いを受けることになる地域)と化す。また、スキル『呪い解除』による解除は不可》

 《『呪い伝染の呪い(中)』:対象者に接触した者は同等の呪いが感染される。他の呪いが残存する限り、スキル『呪い解除』によって解除されることは不可》

 《『悪夢の呪い(中)』:対象者へ永遠の悪夢を見せ続ける。対象者は眠ったまま精神異常になり、死に至る。死後もまた精神が呪いから逃れることは無い。スキル『呪い解除』によって解除された場合でも、対象者が精神異常ならばその限りではない》


 この4つは私から離れた瞬間復活する。


 要は私の呪い無効の範囲が広まればいいだけの話なんだけどね、レベルアップまでに必要な熟練度値が微動だにしない。このメーター壊れてんじゃね?


 てわけで、対策として……


 ギュッ


 一通り傷の手当てをしてくれたダークは私の左側に来てしゃがむと、私の左手を両手で包んで更に私の腕ごと抱え込んだ。


 手を繋ごうって軽い感じで言ったつもりなんだけど、もはや私の腕ごともぎ取らんばかりのしがみつき様だ。そんなガッチリ備えなくても振りほどいたりしないのに。


 そんなに呪いが嫌か?あ、そりゃそうか。


 咎める理由も無いのでそのままにしておく。


 ダークはローブと上着を脱いで乾かしているから上裸だ。私はノースリーブの薄い服に短パンだから、ジワリとダークの体温が腕を伝って感じられる。トクトクと彼の鼓動も意識すれば分かる。


 痛みに段々麻痺してきてる中で何故かそこを敏感に感じるってのも不思議だけど。心地いいね。


 それにしても今日一日で何回落ちんだよって話だわ。木から2回に崖から1回、滝から1回……か。


 「ねぇ、私今日1日で合計落差1000m越えたと思うんだけど、凄くない?ギネス認定されそうだよな」


 焚き火あたりを見ていたダークが私に視線を戻す。そして、しばらく見つめた後に真剣な顔で確かめるようにゆっくり頷いた。


 「ご主人が、けっこう無駄な思考が多いってことは分かった」

色々回収系を書きたかったのに!3割も入れられない上に話が進まないことに驚愕してます。

次回は明後日投稿で、ノズ視点です(コイツなら話を進めてくれると信じてる)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ