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ボムと爆発

長くお待たせしました。またよろしくお付き合いくださいませ。

 スティックボムという遊び分野があることをご存知だろうか。ドミノ倒しとか、ジェンガとか、そういった類のものなんだけど。

 かくいう私も遊びに飢えていたわけではなかったのでそんなものは知らずに生きてきました。


 中学3年の夏までは。


 中学3年と言えば大半の学生がそうであるように、高校受験に向けてガリガリと机に向かう時期。


 あれは忘れもしない夏休みに入ったばかりの蝉の音とむせ返りそうな湿度の高い晴天の日。当時ちょっとばかりやんちゃだった私でも流石に例に漏れず大人しく補習を受けに教室に向かっていたのです。


(かなめ)ちゃん」


 後ろからパタパタと近づく足音と共に控えめに声をかけられた。聞きなれた声と呼び名に振り返れば壮太がいる。


「何か用?」


 当時壮太は私の身長を追い越し気味で、これまで見下ろしていた目線が同じ高さなことに何となく屈辱を感じていた。おかげでいつも以上にぶっきらぼうに返事したのを覚えている。


 今振り返って思うことだけど、壮太は私のことを(かなめ)ちゃんと呼び、私は壮太のことを呼び捨てにしている。その時点でやっぱり(くつがえ)し用のない何かがある気がするんだけどね。


 ただ、身体が大きくなろうが中身はそうそう変わらなくって、犬のように懐く壮太に悪い気はしてなかったし、壮太も私のことを尊敬の念を込めた目で見る。強調でも何でもなく、そういう関係だった。


 この頃はまだ壮太に対するいじめの存在があって、私が矢面に立って壮太を守っている状態だったのが影響していたんだろう。


 受験シーズンてこともあってあまり話をする機会が無かったけど、どうやら苛められてる感じでもなさそうだった。


 そりゃそうだよな、塾や課題に忙しいもん、構ってる暇なんかないわな。

 なんて思ってる間に壮太は勝手に何か喋っていた。


「……でね、作ってみたんだけど、どうかなって思って」

「へー。見せて」


 当時から私は話の前後を聞いてなくても適当に合わせる派だった。壮太が何かを作ってきたらしいてのは分かったけど、肝心な所を綺麗さっぱり右から左へ受け流した状態で実物を見せてもらった。ま、この時ばかりはそのことを後悔したね。


「……何これ」


 壮太から受け取って見たのはアイスの棒のミニ版がコースターみたいに編み込まれた球体だった。


「だから、スティックボムの応用版だって」

「…………」


 すてぃっくぼむ?何それ初耳。

 何がどう応用されてんのかいまいちだけど、これだけは言える。


「こんなの応用させてる暇あんなら数学の応用問題解く努力しろよ」


 私の適切だと思われるツッコミに壮太はムッとむくれてみせる。と、無造作に私の手の中にある球体の棒一本を抜いた。


 途端に私の手の中が弾けた。


「ぅひゃぁっ!?」


 え、え、ちょま。何が起こった?!


 完全にフリーズしながら状況判断していく。


 さっきの球体が爆発したんだよな、何で爆発したんだ!?

 すてぃっくぼむのぼむってボムってことか!


 ん?てか、今の声、私か?!嘘だろ!


 一瞬自分の喉から出た声が信じられなかった。こんな乙女チックな驚き方するとは我ながら関心する。どぅわっ!とか、うわっ!とか言うと思ってたんだけど……。


 ぷっ


 暫く衝撃で固まったままの私を見て壮太が吹き出した。


「あはは、い、今、うひゃって!あの要ちゃんが、うひゃって……可愛い声、あははは」


 笑い声で我に返った。


 壮太を筆頭に、同じ廊下に居合わせた数人も通りがかりにクスクスと笑い去っていく。


 一気に顔が熱くなった。そりゃね、私も思春期のお年頃。なんか、とてつもなく恥ずかしい気がしたのですよ。


 そして無性に腹が立った。飼い犬に手を噛まれた衝撃と言うかなんと言うか……うん。まあそんな感じ。


 手の中でバラバラになった小さな板を握りしめ……


 ドカッ


「うぐぅふっ!」


 思いっきり壮太に腹パンを食らわせて、手の中に残った棒を壮太の頭に叩きつけた。


「壮太なんか大っっ嫌い」


 そう言って1週間くらい口をきかなかったっけなー。


 あー、懐かしの青春時代。あの時の私は若かった。今も世間的にはそんな老けちゃ居ないけど、中学高校の輝きってのはまた別次元だからね。なんだかんだあれからもうすぐ10年を迎えようとしてるわけだし、感慨深いな。


 しかしまあ、あの時壮太にしてやられた事が悔しくて受験勉強そっちのけでスティックボムに没頭したんだよな。希望高校受かったからよかったけど、落ちてたら最悪だったな。


 そんな経験が、まさかこんな異世界で役立つとは思いもしなかった。ま、普通異世界行くとか思わないか。


 てことで、簡単に仕掛けの説明をする。

 中心に軽く火で炙ったショウの葉をいれて、粉々にダガーで削った覇者の棍棒の木屑をおにぎりの要領でコーティングした。そして、その変にあった大きめの手みたいな形の葉っぱで更に軽く包む。続いてキオの枝を拾ってスティックボムの応用で作った球体を外枠として囲った、一種のくす玉を作り上げたわけだ。


 けど正直言って上手く行かないと思ってた。


 だって、ショウの葉っぱが案外曲者でなかなかパチパチしなかったし、キオの枝は形態記憶させられたのはたったの1本のみ。衝撃でパキッと折れる感じにした。他の枝は単純にしなり具合がちょうど良かったから仕方なく使ってただけだったし。


 手前側のえるふ10人程度にかかればいい所だろうと踏んでただけになかなかの好成績だわ。


 そう思いつつも、ぼやぼやしてる暇はない。隙を見てフィントとタダンに近寄って触れて呪いを解除した。


 振り返るとエルフ達は自分が呪いを受けたことに酷く動揺しているみたい。それも、「これは一体?!」「なんだこの呪いは!」と混迷を極めているらしい。

 自分がどんな呪い受けてるのかなんてステータス見たらわかる気がするんだけど……。


 何となく思ってたけどさ、『鑑定スキル』って皆持ってないの?


 ここでふと、とある案が頭に浮かんだ。


「その呪い、ステータスダウンとHP減少なので7聖泉の水浴びてないと徐々にHPが減って死んじゃいますよ」

「なんだと?!」

「そんな呪いをよくもぉお!」


 あ。意外と引っかかるもんだな。信じてくれたら儲けモン程度で言ってみたんだけど。


「えっと、早く行った方がいいっすよ?それともそのステータスの落ちた状態で私に殺されますか?」


 そう言ってこれみよがしに肉体強化をかける。笑顔を作って指をパキパキ鳴らしてみる。


 まあ、殺さんけどな。演技は大事。


「何というこしゃくな!」

「この外道が!」


 と、ここで漸く泥沼から抜け出してきたフィントが私の肩を叩いた。


「おい、3秒後に目を(つむ)れ」

「え」


 とりあえず言われた通りに目を瞑った。


 するとーー

 瞼越しでもわかる閃光が走った。


「ぐぁぁ!目が!」

「おのれ!!」


 と、前方のエルフ達から声が上がる。


 何だ今の!って凄く気になるけど、こんな好機を逃すのはそれこそ馬鹿だ。

 先行するフィント達についてその場を後にした。





「いやぁー、凄いっすね!あれ何だったんすか?」


 ノズ達と別れた岩場地点を通り過ぎながら尋ねた。

 だってマジで便利じゃん!

 ダーク連れてる時に危険な場面あったし、あーいうの要るよな。


「『注目玉』っつうアイテムだ。ちっと値がはるがこういう時に使えるんだ」

「ほうほう」


 『注目玉』ね、今度買おう。


「俺ァお前の仕掛けの方が気になるがな」


 タダンが肩を竦めながら苦笑いする。


 「まあ、子供遊びの類っすよ。上手く行ったのは運が良かっただけですね」


 さて、ここまででひと段落?なのかな。

 とりあえずエルフが追ってきている感じしないし。そう思考しているとフィントが声をかけてきた。


 「ところでカナメ、あの奴隷はどうしたんでぃ」

 「どっかに埋めてんのか?」


 「埋めるって何だよ!まだ死んでねぇし!」


 素でツッコミを入れる。

 まあ正直そろそろこのオッサン達に丁寧語で話さなくてもいい感じはするんだけどね。あんま気にしてないっぽいし。


 「ノズさんに預かってもらってますよ。一応何もしないように釘差しさせて貰ってますけどね」

 「「…………」」


 フィントとタダンが、いきなり無言になった。


 「因みにだがよ、どんな釘差ししたんでぃ」


 フィントが若干先頭を走ってたんだけど、軽く私に視線をよこしてきた。単純な興味から聞いているというよりは、どこか憐れみというか、同情の表情が読み取れる。


 何でこのタイミングでその顔?と、言いようのない不安に駆られてステータス画面を何度も見直す。


 うん、今のとこダークのステータスに変化はない。


 変化がないのを確かめてから、ノズに言った言葉を思い出した。


 「『ダークに何かあったり、したりしたら地の果てまで追いかけます』って言いましたね」

 「あぁ、そいつぁダメだな。だってオレらは……」

 「おい、フィント」


 フィントの言葉を遮ってタダンが諌めるように横槍を入れた。


 一体全体何だってんだよ。


 「タダン、俺ぁやっぱり今回の任務は乗り気じゃぁねぇや。もともとはカナメに巻き込まれたがよ、コイツはそのまま逃げちまえばいいのにこうして俺たちを助けに来てくれたんだぜ。俺たちはコイツに2回も救われてんだ。いくらなんでも、これ以上恩を仇で返したくねぇや」

 「…………」


 無言のタダンの反応を、了承と受け取ったらしいフィントは走る速度を緩めて私の隣についた。


 「いいかカナメ。俺たちはな……」


 フィントから紡がれた言葉に、私は全ての音が遠ざかる感覚にとらわれた。


 食いしばる奥歯が震える。地面を蹴る脚に力を込めて速度を上げる。フィントの話が本当なら、一刻も早くダークのもとに駆けつけなきゃいけない。


 ドクドクと早まる鼓動の音で吐き気がする。


 ずっと、ずっと心の奥底に押さえつけていた感情が、ついに蓋を突き破って逆流してきてしまう。


 「この世界、大っ嫌いだ」


 腹の底から絞り出すような声が口をついて出てきた。言葉が形を成すとするなら、噴火のマグマのように熱く、ドロドロとした形状だと思う。

 酷く私の耳にこびりついてきた自分の言葉は、きっとこの先なかなか消えないだろう。

結局スティックボムて何やねん(_・ω・)_バァンてなってたらすみません。スティックボムで検索したら出てきます。要は互いに押さえつけられた状態の棒の均衡が崩れると弾けてしまう仕組みです。


余談ですが球体バージョンを作るのは達人級です。


さらに余談ですが、フィントが言ってたダーク埋める案もありました。

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