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拒絶スキルって強いな

「で?これからどうするんでぃ」


 ノズが岩陰に巨体を隠しながら聞いてくる。


 フィントとタダンが殿になってくれたお陰でなんとかここに身を隠すことが出来た。


 あの数相手に2人でどうにか出来るわけがない。ここにノズ達と共にダークを置いておいてすぐにでもフィントたちの助けに向かいたいところだけど、フィント達を助けるにしても見通しがいる。


「私が今からフィント達の所に行って殿を交代します。こうなった以上何処かに身を寄せたいのですが、丁度いい場所ってこのあたりにないですか?」

「確か北にダンジョンがあったはずだ。難易度が高いから身を寄せるような場所じゃあねぇがな」


「なるほど、それは却下で。ダンジョンならばまっさきに捜索対象になりそうだし、難易度が高いなら針袋に飛び込むようなもんだし。他に隠れるのに適してそうな場所に心当たりはありますか?森の深い所や今みたいな岩陰が沢山あるような所です」

「……真東の方に切り立っちゃぁいるが岩山がある。奴らは風魔法で追ってくる。こちらが不利になるから勧めねぇな。深い森なら南東の方角だ。身を隠すならそっちの方がいいかも知れねぇ」

「なるほど」


 思考を巡らしながら近くに生えてた薬草を口に押し込んだ。


 まずい。

 あ、別に掛けてないから。単純に口の中が不味いんだよ?状況もまずいけどさー。そんなダジャレ言ってる場合じゃないんだよ……て、何でこんな無駄な思考してんだっ!私はアホか!


 1分ほど考えながらガムがわりに薬草を手当り次第に食いまくったお陰でHPが8割にまで回復した。


 つか、このあたり薬草生え過ぎじゃね?しかも単位あたりの回復量が高いし、流石大森林ってことかな。まあいいや。


「ノズさんがたは真東へ逃げて下さい。自分はフィント達にもそちらに行くよう伝えます」

「はあ?俺の話聞いてたか?南東の方が森が深いから……」


「エルフは大森林の守り人ですよ。森の方が彼らのフィールドなはず。私達を見失ったなら、まず自分の慣れ親しんだフィールドから探すに決まってます。岩山へ逃げて時間を稼ぎましょう何にしても時間がありません。ノズさん達は先にそちらへ向かってください。自分はフィント達と交代しつつ、なんとかそこに合流します」

「…………わかった。だがお前ぇ、殿へ1人で出るなんざ死にに行くようなもんだぞ」


 ノズが真剣な顔で私をのぞき込んでくる。

 任務外だからかな、ノズはジバルで太っ腹にも装備を立て替えてくれた時のような親しみのある声音だ。何だかんだノズは私に好意的な態度をとるから、単純に心配してくれているんだと思う。


「もともとは私が巻き込んじゃったからだし、なんとかします。だけど、ダークは連れていってください。この子を抱えながらはちょっとどころじゃなく、キツすぎるんで」

「そういやぁ、何でコイツ気ぃ失ってんだ?だいたいの想像はつくが」


 そう言えば言ってなかったな。


「簡潔に言うと、物騒な箱に入れられてた所を箱ぶっ壊して助け出したは良いけど、呪いみたいに悪夢を見続ける効果がついてしまったってところっすかね。長老さん曰く目覚めないらしいです」


 あれ、逃げるのに必死でコイツのステータスがどんな風になってんのか見れてなかったな。一応チェックしとくか。どんな常態なのか分かるかもしれない。


 …………


 結果。変化なし。


 あれ?流石に常態異常くらいは記述するんじゃないかなー?今までのノリでいくと何かしら書かれてもいいよな。


 ん?待てよ。呪いみたいな効果……?


 私はさっき自分が言った言葉を反芻しながら全体ステータス画面から、奴隷の受けている呪いの詳細画面へ移行した。


 あ。言語不理解の呪い(中)が悪夢の呪い(中)に変わってる。


 《『悪夢の呪い(中)』:対象者へ永遠の悪夢を見せ続ける。対象者は眠ったまま精神異常になり、死に至る。死後もまた精神が呪いから逃れることは無い。スキル『呪い解除』によって解除された場合でも、対象者が精神異常ならばその限りではない》


 いやぁ相変わらず物騒だな。

 しかも、最後の一行て、要は呪い解いても完全には消えないってことだよな。


「なるほどな。その箱ってのがエルフさんの大事なもんだったってことか?」

「あ、うん。そうなんすよ」


 ノズが話を降ってきたことでハッとわれにかえったあ。


「まあ、堕天者を背負うなんざ嫌だがなぁ」


 言いつつもノズはこちらに背を向けてきた。なんだよこのオッサン、ツンデレかよ。全くドキドキしねぇがな。


 心の中でツッコミを入れる。


 あーそれにしてもノズって背中広いな。流石巨人。

 〇ンダムのコックピットに乗せる心地で、ダークをノズの背中にのっけようとした。


 バチンッ


「うお?!」

「おっとっと」


 ノズが見えない何かに弾かれるようにうつ伏せに倒れた。私はと言うと、ダークを落とさないように抱えなおしてどうにかそれを阻止したところだ。


「何だぁ?今のは」

「うーん……」


 何となーく目星をつけながらダークのステータス画面に目をやった。


「やっぱり拒絶スキルかっ」


 ダークってば、もう!何で拒絶するかなっ!


 あんま開きたくなかったんだけど……背に腹は変えられない。このままここでウダウダやってられないわけだし、非常事態ってことで……。


 奴隷操作画面でスキルの強制停止っていう箇所にチェックを入れる。いや、正確には入れようとした。パリンと何かが割られる音が鳴る。


 《スキル『拒絶』を停止する権限が拒絶されました。以降、1時間のディレイタイムに入ります。同一権限執行に際してはディレイタイム回復後に操作可能となります》


「マジかよ」


 改めて、拒絶がやばいってのが分かった。奴隷が主人からの命令拒絶可能って、結構凄いと思う。人権的な面で所持者には嬉しいのかもしれないけどさ……。


 てかそこまで拒絶スキル行使してる割に逆に何で私は抱き上げられてんだ?呪い無効とかがなんか関係してんのかな?それとも、私には懐いてる感じ?


 もし仮にダークが「私」に対してのみ拒絶を緩めているとしたら、何で判断してるのかってことが上がってくるな。


 目は閉じてるし、身体のゴツさ……?はっきり言って、ふわふわマシュマロのような体格ではないし胸がーとかないから、ノズと相対的な部分は変わらない気が……ておい、何か虚しくなってきたぞ。考えるのやめたい。


 んで、もしかして?ってことで頭に浮かぶのは、昨日のメープルちゃんの言葉。


「んー、しょうがないな」


 ダークをとりあえず地面に横たえさせて、上の服を脱いだ。


「な、何してやがんでぃ」


 ノズが呆れたような慌てた感じで訝しんでくる。


 もちろん、下にはあのボロボロの布切れみたいなんを着ているから肌の露出とかないんだけど、確かにいきなり女が脱ぎ出したら慌てるよなー。


「いや、ダークが私のこと臭いで認識してるなら巻き付ければ大丈夫なんじゃないかと思って……」


 ダークの顔から胸にかけてを私の服で覆う。そして、ノズの背中へ……お。


「よし、成功!」


 私の推測は確かだったらしい。ちょっと嬉しい。


 当たったことも嬉しいけど、この子が私に対しては拒絶を緩めているらしいって事が分かったのが何とも言えない感じ。お腹のあたりが暖かくなるような……おっと、こんなボンヤリしている暇はないんだった!


「じゃ、私行きますね」

「お、おう。気をつけろよ」

「分かってます」


 ちょっと先の岩陰に居るポフォにも合図を送った。


「あ!」

「どうした?」


 大事なことを忘れていた。


「もし、ダークに何かあったり、したりしたら、地の果てまで追いかけるのでそのつもりで居てくださいね。ステータス画面から見張ってますから……私達は今、運命共同体なんですから、助け合いですよ」


 釘刺しは大事だ。

 だってコイツらは元々はダークを危ない目に遭わせようとしていたわけだし。


 私だってダークを置いてくことについては乗り気じゃないけどさ、こんな状況下じゃこうするしかない。今のダークは幸いとは言いがたいけど拒絶スキルがフルでかかってるからね。ノズ達も好きにはできないはずだ。


「ああ。分かった」


 ノズが私と目を合わせながら頷く。

 シーダーの家であった時とはまた違う表情。この顔が、目が、嘘ではないことを祈りながら私は岩陰から飛び出した。

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