外道って、どこからアウト?
「カナメ、俺達ぁ見たまんまを言っただけだぜ。ボスの任務とは関係がねぇ。まあ、確かにそう言われればシルエットはお前のツレに似てたけどなぁ」
ノズが、いきり立つ私とガッチリと目を合わせながら告げてきた。表情はいかにも弱った感じだ。
作られた表情。
ぱっと思った感想だ。
嘘つきな人間は嘘をつく空気を知っている。何故なら自分が嘘をつく時に細心の注意を払ってその空気を吸っているから。
目を合わせて弱り顔を作るには、少し表情が硬すぎる。あとは声の出し方も冷静過ぎるかな。
仮に別の任務中に、そういった目撃をしたのならもっと慌てて弁明するのが自然だったろう。ノズは、見るからに演技派じゃないし、そこは向き不向きがあるよね。
ただ、嘘かどうか勘で見抜いたとしても状況的には私の方が遥かに分が悪い。
ていうか私だって分からないことが多いんだよね。ダークが、もしかしたら本当に私の目覚めた泉以外にも行っている可能性があるし、その際聖剣に対して何かしらしているかもしれない。
正直なところ、確証をもってダークの潔白を表明出来ない。でも、この状況が悪いってのは明らかだ。
ただでさえ揉めかけてたのに、ここに来て大揉めだよ。どうしてくれんのさ。
何よりこの場に、あの子の味方が存在しないことが苦しい。どんな犯罪者にだって弁護士はつく。増してやあんな子供が犯罪者扱いだなんて、私が守るしかないじゃないか。
今、長老ってのがどんな対応をしてるのか知らないけど、ダークは私になら何か話してくれる気がする。
……まずはダークのところへ行くのが先決だな。
シーダーのところに駆け寄って服のはしを引っ張った。
「シーダーさん、私、やっぱり御主人様のところに行きたいです。今聞いた犯人像から疑われちゃうんだろうし、このままにするわけにいかないです」
冷静な灰色の目が数秒間私を映したけれど、逸らされた。
「……ダメだ」
「何故ですか?ダークは何もしてないはずなんです。彼が話さないなら私が代わりに何でも長老に言いますよ。もしかしたらダークだって私に対してなら何か発してくれるかもしれないし」
私の訴えにシーダーは眉間にシワを作りながら重そうに口を開いた。
「ヒトが口出しすることではない」
確かにここはエルフという種族の集落で、彼らには彼らなりの慣例があるはずだ。部外者がぎゃあぎゃあ言うのは鬱陶しいだろうね。でも、引くわけにはいかない。
「種族が何だってんですか。口出しするに決まってる。関係あるから口出してんですよ!」
「お兄ちゃん、カナメと何かあったの?」
私の恫喝が家まで聞こえたのか、メープルが降りてきた。
すっかり私のことを警戒対象から除外しているらしく、仔鹿のように無垢な顔して私のそばに寄る。厳つい兄貴よりも一回り小さな私の方へ来るってことは、ダークみたいに庇うつもりなのかな。
そのくらい私に心を開いてくれてるってことだろうね。
こんな小さな子供を盾にするつもりは無いけど……。
常識人としては決してとってはいけないだろう行動が頭に浮かんだ。
「…………」
はっきり言って、やりたくはない。
でも、やらなきゃこの場を打開出来そうにない。
「ちっ」
心からの舌打ちをしてメープルを強引に抱き寄せた。
「なっ?!」
「わ、どうしたの?」
シーダーの緊張感の走った声とメープルのとぼけた声が重なった。
「……連れてけ。これ以上言わさないで」
私の低い声での脅しはある程度効いている様だ。シーダーが凍った様に動かなくなった。
ったく。
何で私がこんな子供人質にしなきゃならんのだ。せっかく仲良くなったのに。
こんなの、勇者でも何でもなくただのチンピラじゃん!!子供の奴隷持って、子供を人質にしたなんて……状況を整理すればする程最悪だわ。何がかなしくて異世界来て人道を外れなきゃならんのだ。
メープルはいい子だ。だから変な偏見をもたせたくないんだけど。
人質にされた体験をしたなら、きっとヒトに歩み寄ることはなくなってしまうかもしれない。それは流石に私としても気が重い。
だから、なるべく傷は浅く済ませたい。
「いきなりごめんね。今、森の番人のシミュレーション訓練中なんだ。私が敵役してるから、メープルちゃんは人質役として大人しくしててね。あと痛かったら言って」
抱き寄せたメープルの耳元にコソッと小声で告げた。
「えっ、そうなの?!」
「しっ!訓練始まってるから、余計なことは話さないように!」
メープルは私の嘘を本気にとって気合を入れたのかフンッと鼻から息を出した。
「わかったわ!私、頑張る!」
「……頑張らなくてもいいよ」
寧ろ私の腕をギュッと抱えだしたから慌てて注意を重ねた。
咄嗟の嘘だから適当なんだけど、これ、信じちゃうんだな。無垢な子って恐ろしい。これは後でちゃんと教育するようにシーダーに言っとかないとな……話す暇があるかは分からんけども。
私がメープルを言いくるめてる間にシーダーの顔が目に見えて侮蔑的なものに変わっていた。
「見損なったぞ、その様な脅しで……」
「本気だよ。連れていってくれたら何もしない」
それらしく見えるように肉体強化のスキルを発動した。
ゴォッ
ん?何か周囲に風が巻き起こった。
前に肉体強化した時、こんな効果激しかったか?流石に風が巻くなんてことは無かった。
ま、いっか。そのへんは考えたところでよく分からないからな。
今はそんなことより、交渉事項最優先だ。
「で?返事は?」
「…………分かった」
シーダーは、妹の安否が気がかりなのか慎重に、且つ表情に怯えたような色を少し浮かべながら了解の意を示した。
「この子は長老の所まで行ったら解放するから、そのつもりでね」
「……ああ、分かった」
私はやや後ろにいる4人組を振り返った。
ノズ達はシーダー以上にカチコチに固まっていた。目が合うとビクッと肩がはねている。
もしかして、怖がられてる?
肉体強化しただけなのに?
てか、そっちから喧嘩売ってきたくせに、覇気のない奴らだな。
「邪魔、しないでくださいね」
ノズだけでなく4人それぞれを見据えながら釘を刺した。この4人に出てこられたら更にややこしくなる。せめて私がダークのもとに辿り着いて、対策たててからにして欲しい。
ダークも聖剣もさっさと貰い受けて、さっさと壮太を探さなきゃいけないんだ。
シーダーに先導されて一歩踏み出そうとした時、私の肉体強化の時間が切れた。
《熟練度が一定数を上回りました。スキル『肉体強化LV2』が解放されました》
お。肉体強化のレベル上がったんだね!
《『肉体強化LV2』:MP10を消費して3分間、自己のステータスを中up》
MP10かぁ……厳しい。今のステータスだとMP1になっちゃうんだよなー。
そう思いながらステータス画面を開いた。
名前:ウエノ カナメ
種族:ヒト
LV:18
称号:狂戦士
加護:泉恵の体
ユニークスキル:鑑定LV4、呪い無効LV1、挑発LV1、怠惰LV1、怒気LV3、威圧LV3
スキル:殴打LV5、不屈LV4、解体LV2、味覚耐性LV3、痛覚耐性LV1、危機感知LV4、歌唱LV3、休息LV1、投擲LV1、運LV1、隠蔽LV1、搾取LV1、肉体強化LV2、斬撃LV1、槍撃LV1、打撃LV1、連撃LV2
HP:4021/4123
スタミナ:6122/6932
MP:11/16
物理攻撃力:18279+1500
物理防御力:2791+10
魔法攻撃力:16
魔法防御力:13+10
回避力:546
テクニカルポイント:1800
…………。
…………。
ん?知らないうちに加護が付いてるんですけど。何ですか?これ。




