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親の心子知らず、

お色気シーンを含みます(真顔)

苦手な方は薄目でお読みください。

 水の匂いがした。

 生臭い感じじゃなくて、よく澄んだ沢辺のような匂いだ。


 次いでサワサワと風が渡って私の頬に触れた。今の風に促されたのか、近くで、遠くで葉が擦れる音がする。


 バシャッ


 離れたところで水が跳ねる音が聞こえた。


「はー……」


 長い間息を止めてた様な、そんな感覚に囚われながら深くゆっくりと息を吐いた。


 瞼の向こうは明るい。直射日光ではないけど、目の裏を赤く照らしてくる。


 今は、お昼かな?暖かい……。


 バシャッザバッ


 また水が跳ねた。そして何かが水から上がる音が続く。


 ぽかぽかした空気に和みながら、ゆっくりと頭が動き始めた。


 ……あれ。私、何してたんだっけ。


 確か……異世界に壮太を探しに入り込んで……それから?


 頭の回転が白い霧で包まれてるように鈍い。


 ああ。なんだ。夢見てたのか。

 目を開けたら、あの秘密基地で寝転がってる、みたいな。有り得るよね。


 確かにそれなら川の音がするのもうなずけ……ん?いやいや、これ、秘密基地の川の音じゃないよ?それは流石にわかるぞ?

 街を流れる川の音って意外と煩いからね?


 それに、こんな澄んだ匂いしないし。どっちかというと生臭い感じの……。


 目を開けてみた。葉っぱの影がその奥の空を網の目のように覆い隠していた。こんな葉っぱの形、見たことない。手?みたいなジャングルっぽい感じ。


 あー。やっぱり、異世界か。


 さっきまであんま気にしていなかったけど、ステータス画面が意識の端に復活している。


 隷属者の項目を見て、すぅっと記憶が戻り出した。いや、霧が晴れる感じの方が正しいね。


「ダークっ」


 ガバッと起き上がった。

 隷属者の項目で見る限りはダークは無事みたいだけど……。


「……て。ここ、どこよ」


 確か最後の記憶は洞窟の中だったはず……。でも、ここは明らかに外ですな。


 状況確認のためにあたりを見回してみる。


「わ、綺麗な湖」


 流石異世界っていう言葉はちょっとおかしいかもしれない。けど、人工的なものがなくて手付かずな感じが異世界を強調してくれている。日本にあったら秘境100選とかに選ばれて、そこそこ観光客で賑わいそうだもんな。


 と、こんな感想を抱いてしまう程度に、私は実はあんまり綺麗な景色に興味がなかったりするんだけど。


 綺麗だなとは思うんだよ?でも、それで?みたいな冷めた態度になってしまう。ま、思ったことは口に出す質だから、呟いてみたって感じだね。


 パサッ


「ん?お、これ、ダークの……?」


 クリーム色のローブが私にかけられていたみたいだ。というか、毛布みたいなマントは、私の着ているのに加えてもう1枚、私の身体の下に敷かれている。それから、毛布の下には葉っぱが大量にあった。


 だから、ふかふかでポカポカだったのかー。


 うん、流石にここまで見ると落ち着いてきたわ。ダークがこの湖まで私を引きずるなり背負うなりして運んできたんだろうね。


 で?ダークは何処だろ。


 バシャバシャッ


 また水の音だ。魚にしては大きめの音だから気になってたんだよね……。


 音のした方を眺める。


 少し強めの日差しと、それを照り返す湖とで眩しい。目を細めてみると、10mくらい離れたところに、人影がある。


「ダーク……?」


 後ろ姿だ。

 その子の背中あたりまで伸びる銀の髪が水に漂っている。で、丁寧に髪を水にすかしている。

 (あら)わになってる背中も肩も酷く華奢……。

 体つきからも、特徴的な長い耳からも、あの子がダークだろうってのは分かる。いや、分かるんだけどさ。分からないことまで分かったっていうか……。


「やっべー。ダークって女の子だったの?!」


 いや、男女平等っていうのは確かに掲げられてるよ?でもさ、やっぱり扱いってちょっと変わるじゃん?


 女の子って知ってりゃ、もうちょいこう、丁寧にした気がしなくもなくもないって言うかぁ……。ちょっと雑に扱い過ぎた感はあるし……。


 パシャッ


 私が悶々としてるうちに髪をとかし終わったのか、ダークは湖の中に潜った。


「ぷはっ」


 ザバーッ


 私の真正面の岸に上がってくる。そして、オレンジの瞳と目が合った。


「「…………」」


 私は無言で視線を下げた。


 なんだ。付いてんじゃん。

 やっぱり男の子かよ。つか、その年頃の壮太より立派なんじゃない?ま、私の比較対象が壮太しかいないから、よく分かんないんだけどさ(笑)


 と、たっぷり10秒間くらいダークの象さんを眺めた後、視線を顔に戻したら、これでもかというほど顔が赤くなっていた。


「ーーーっ!」


 バッシャーン


 ダークは自分の身体をを手で隠しながら、つい今しがた上がったばかりの湖に飛び込んでいった。


 私は未だにポカンと眺めてるんだけど。


 バシャバシャッ


 ダークが顔と手だけ水面から出しながら、あっち向けってジェスチャーを必死でしてくる。


「あははっ女子かよ!」


 何ていうか、気が抜けた。

 ツッコミを入れながらも、笑いが込み上げてくる。


 一頻り笑ってから、いい加減キレそうなダークの主張の通りにした。


「よかった……」


 正面に座ってムスッとしながら自分の髪をふいてるガキンチョを眺めてたら自然とそんな言葉が溢れた。


 でも、私のその言葉の意図を分かったのか、ギロッと一瞥して、ぷいっとそっぽを向いた。


 ダークはまだ恥ずかしいのか、ちょっと顔が赤い。


 あー、まあ、年頃の男の子だもんねぇ。流石に眺めすぎたよなー。


「あー、ごめんごめん。女の子かと思ったからさー。つい見つめちゃったよ。許して?」


 ふんっ


 ありゃー、怒ってる。まあ、私は一応謝ったし、後は時が解決してくれるよね。


「よし、私もひと浴びしてくっかな」


 一応ダークに覗かないように指示出しをして、服を脱ぐ。

 けっ、誰が見るかよ、みたいな糞ガキの表情にゲンコツぐりぐりしたくなったけど、何とか抑えた私は偉いと思います。


「ま、見られたとしても、減るもんじゃないし気にしないけどさ……見ない方がお互いのためだよね」




「あー!気ん持ちよかったー!」


 私は焚き火に当たりながら上機嫌に独り言を発した。


 身綺麗になったし、あとは飯を食べる。まだ明るい昼間だけど関係ない。

 で、その後状況判断だな。


 順番が違うじゃないかって?良いじゃん!だってここ、あんま危険な感じしないし。


 それに空腹がヤバイ。


 ぐるるるるる


 これはダークの音だ。例によって顔を(しか)めながら体育座りする。髪はとっくにローブの中にしまわれて、いつものダークの姿だ。


 育ち盛りだねぇ。気にすることないのに。


 前回の反省を活かして倍の量のおかゆを作る。味は……まあ、材料が米と塩しかないので想像に難くないでしょうが。最悪ダークが食べきれなくても私が食べきれるでしょう。


「……にしても、何でいきなりHP1なんかなったんだよ?洞窟でいったい何があったん?」


 飯炊きのあいだ暇なので、思いついたことをダークに聞いてみた。もちろん通じないのは知ってるんだけどさ。

 何か……うん。詰まるところ、ダークがちゃんと生きて近くに居るってのが嬉しいんだろうね。


 ていうか、ユウキ達なんかよりずっと居心地がいいというか……言葉が通じない方が気楽ってこともあるよね。


 あー、ユウキとか、思い出すだけで何かムカついてきたわ。平静、平静っと。


「ん?何それ」


 ユウキという雑念を払おうと必死になってる間にダークが私の目の前に黒い塊を5個置いた。で、食べる仕草をしてくる……そのうちの1個を手に取ったけど、何かの肉っぽい感触だな。


「これを、食えって?」


 でも私が食べようとすると、ぶんぶん首を振る。


 どっちやねん!


 ん?待てよ、ちょっと薄いけどこの(にお)いって……。


 《暗黒肉(乾物ver):ブラックゴブリンの主食。スタミナ全回復の代わりにHPが食事量に依存して減少する。更にランダムで状態異常に陥る》


「これかーっ!!」


 もう、あらゆる面でこれかーっ!!ってなったわ。この肉、あの洞窟奥の食糧部屋の匂いだわ。乾物verってことは、ウェットなやつがあの部屋に置かれてたっておかしくない。そしてそれは多分、これよりもっと臭いはずだ。


 で?ダークてばお腹すいたからってこんなもの食っちゃったのかよ……?


 お前、木の実めっちゃ探してこれてたじゃん。

 食べ物とかちょっと外出れば見つけられたでしょ。何で敢えてこれ食うかなぁ。


 でも、スタミナ全回復か。


「意外と使えるな」


 とっておこう。私はカバンの中にそっと臭い肉を忍ばせた。

 ダークから残念な者を見る目を向けられてる気がするけど、気にしないよ?いざという時、使える(かもしれない)物はとっておくんだよ!


 食後はいつになく緩やかに過ごしたいなーと、グツグツ煮立ってきた鍋を眺めながら思った。


 私だってちょっとくらい休息したいのさ。

 いくら丈夫が取り柄の私でもバトルに継ぐバトルで、僕、もう疲れたよパト〇ッシュ状態だからね。あげく昨日は夜通し走り回ったんだ。


 状況確認だけ済ませて、さっさと休んじゃおう。

 トロミの付いてきた米をゆっくりかき混ぜた。

渾身のお色気シーン()でしたがこれ以上のお色気はあんまり予定してないのでご安心ください。


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