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てか、鑑定しろよ

キリが悪いので短いです。

 私がユウキに対して怒りのボルテージを上げていると、ポーンともはやお決まりのふ抜けた機械音が頭に響いた。


 《熟練度が一定値を上回りました。怒気LV1が怒気LV2になりました》


 《熟練度が一定値を上回りました。威圧LV1が威圧LV2になりました》


 あ、そう。

 何か知らんが発動しっぱなしだったしね、熟練度溜まりやすかったんだな。


 この場面で範囲が加算されても、敢えて発動をオフにすることも無い。


 とりあえず手首のロープをなんとかしなきゃいけない。


 私は食事して満たんになったMP値を確認して肉体強化LV1を発動させた。


 フワァッ


 何か知らないが、私の身体が赤く発光した。おお、身体が軽い!……気がする。


「?!お前、何やって……」


 狙いは一点のみだ。

 迷いなくユウキのもとまで一気に斜面を駆け上がると、腰に下げられた聖剣に掴みかかった。


 咄嗟に避けようとするけど、私のユニークスキルの何かが効いているのか、私のスピードよりも遅かった。


 聖剣の柄を縛られた両手で持って、ユウキの腹を蹴るようにして抜き取った。


「ぐっ」


 少し当てただけのつもりだったけど、ユウキの身体は折り紙のように軽かった。数メートル吹き飛ばされるようにしてユウキの身体が飛んでいく。


 肉体強化のおかげかな?


 まあいいや。おかげでユウキと距離が稼げた。


 刃がむき出しの聖剣は夜なのに青白く発光しているように見える。やけにヒンヤリとした触り心地にこの剣から拒絶されてるんだと分かった。


 魔法だなんだな世界だから、剣にも意思があるのかもしれないね。


「少しだけだから、我慢してくれる?」


 なんとなく、ほんとに何の気なしにそう語りかけて、剣を地面に刺して身体で支えた。


 間違えて手首斬りましたーとか、シャレにならんからね。


 慎重に刃に私の手首のロープを当てる。案の定聖剣の切れ味は抜群だった。


 スルスルッ


「よしっ!」


 やぁっと解けたぁ!半日だけど、長かったよ!体感1日くらいあったわ。


 自由になった両手首をクルクルと捻りながら聖剣の柄を片手で持った。


 あれ、意外と軽いな。さっきは両手でもズシッと感じてたけど……。


「おい!どういうつもりだ!」


 ユウキの怒りの声が私の思考を止めた。一応方や聖剣、方や丸腰ってことでユウキは警戒して距離を取っている。


 うん。今は無駄なことは考えない。

 ダークを助けに行かなきゃならない。


「洞窟はどっち?早く言って」

「何ふざけたこと……」

「ふざけてねぇよ。早く言えって。さもないとこの剣持ってくから」


 ん?普通に貰ってった方が便利じゃね?や、まあ良心の呵責があるから、そんなことするつもりないんだけどね?

 私ってほんと善人だなぁ。


「君……この世界のキャラのために何でそこまでするんだ?どうせこの世界はゲームの中だろ」

「私はそんなゲーム、知らないから。私にとってはここも、現実世界なんだって。実際殴られると痛いし」

「…………」


 何黙ってんの?つか遅いんですけど!?

 早くダークのとこに行きたいってのに。


「分かった。洞窟はあっちの方向だ。君が少し逸れて走ってたのもあって若干遠いがな」

「サンキュ!」

「待て!」


 聖剣を地面に刺してすぐにでも走り出そうとする私をユウキが制止する。


 なんだよぅ?


「義理もねぇし俺は行かねぇが、聖剣は貸してやる。丸腰で行っても助けられねぇだろ」

「……あんた、ホント意外といい奴ってポジションだな」

「あ?」


 私は半ば関心しながらユウキに向き直った。


 そして、これでもかと見せつけるように力一杯聖剣を地面に突き刺した。


「死んっでも借りるもんかっ!」

「んな?!」


 ユウキが呆気にとられて口を開ける。


「聖剣借りたら返しに来なきゃなんないじゃん。お前の顔なんか、二度と見たくねーよ!」

「は?呪い無効の勇者がガキみたいな見栄はんなよ、死ぬぞ」


 まあ、中身がガキなのは否定すまい。ただ、いつまで経っても下に見るこいつにも、いい加減限界だ。


「ああ。そう言えば私、勇者辞めたんだわ」

「は?それってどういう……」

「ステータス鑑定くらいしろよな。ばーか!」


 もうこれ以上無駄な話をしている場合じゃない。


 私は踵を返して洞窟方向へ走り去った。


 きっと傍から見れば、呆気の取られたユウキがポカンと佇む姿が滑稽だったろう。


 一応言、とっくにパーティは解散済みなので、奴が私のステータスを鑑定する手段は無いはずだ。私より鑑定LVが上ならもしかしたら分かることもあるかもしれないけど……そんなことはどうでもいいよね。とにかく、確認もせずに見下すアイツが悪い。


 自由の身になった私は、湿度の高いジャングルの木々の間を縫って走り続ける。


 月明かりも森が深くなれば真っ暗で、まるで奈落に落ちていくような心地だ。


 蔦に絡まってコケるのはデフォルトですが、何か?言っとくが私の身体能力は中の上だ。超人でもない限り、スムーズな走行なんて出来るはずもないのだよ。


「ふふふーん、ふふふーん♪」


 焦りを落ち着かせるために鼻歌をわざと歌う。

 だって、そうでないと冷静な部分が消えてしまいそうなんだもん。


 お化けとかはこの世界だとどうせ魔物だからそんなに怖くないけど……嘘。やっぱりちょっと怖い。


 でも、今もっと怖いのは、私の預かり知るところで、ダーク(誰か)が死ぬことなんだ。


 その夜、私の鼻歌が止まることは無かった。

切羽詰まった鼻歌って鼻水出そう。と、どうでもいいこと思ってしまった。

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