人にもスキルにも、相性ってあると思うんだ
《なお、スキル『連打LV2』はスキル『連撃LV1』の熟練度に換算されて吸収されます》
《熟練度が一定数を上回りました。『連撃LV2』が解放されました》
ふーん、そうなんだ。連打は連撃に吸収されるのな。
て、ゆうか……。
「うぇっ」
吐き気が酷い。
私は急いでダークを身体からはがして壁際に行く。足元が変にふらついた。
視界がやけに回る。何か吐こうにも胃には何も無いから、変な嗚咽だけだ。
ほんと何これ気持ち悪い。酒で酔ってるみたいな……いや乗り物酔いに近いか?とにかく吐き気と頭痛が酷い。
頭の中にピーピーと電子音が鳴る。
《称号『狂戦士』に適応中》
よく分からんが称号変更するとこんな気持ち悪くなるもんなの?
でもこの狂戦士になる前に称号取れる分を選択して、最終的にこれにしたんだけど。それまで何も無かったのに。
うー、気持ち悪い。頭が働かねぇ。
でもピークは意外と短くて、3分程で気持ち悪い感じが治まってきた。
とりあえず手持ちの水筒から今朝入れたての沢の水を飲む。
「ぷはっ、うま!」
ちょっと調子が戻ってきたぞ。
で?何で気持ち悪くなったんだ?
脱水症状ってのもあるかも知れないけど……どっちかというとそんな自然的要因じゃなさそうだよね。
案の定、適応中の文字は消えているし。
あ。
もしかして一気に変更しまくったから気持ち悪くなったとかかな?皺寄せ的な。
おかげで称号ストック欄は空っぽである。
だってせっかく称号変えるんだしスキル取れるだけ取っとかないと、もったいないじゃん!
おっと、ダークは大丈夫かな。突き飛ばしちゃったからね。
振り返ると5mくらい離れた所にいた。
すごく難しそうな顔をしている。もちろん眉間にシワがよってて、緊張で固くなってるような表情に、長い耳が床と水平にピンと立っている。
でもまあ、心配そうな顔ってのが一番近いのかな。つい数分前まで私、嗚咽ヤバかったしね。
私は立ち上がって、笑顔を見せてやる。そしてついてくるように指示をだして、奥の方にある雨で少し濡れた毛布 (みたいなマント)を拾い上げた。
それにしても、身体が若干重たいな。
何というか、病気的なダルい感じじゃなくて、身体の芯が重たくなったような。
軽い振り子から重たい振り子に変わった時のような重量感を自分の身体に感じるというか……え、もしかして太った?!
やだよー、確かに最近不定期に食いまくってるからちょっと有り得るんだよなー。昨日とか食べてすぐ寝ちゃったしね、有りうる。嫌だよー!
私はそんなことを考えながら自分のマントを脱いで、濡れた方を羽織った。
まあ、中まで水も浸透してないみたいだ。ちょっと落ちてた場所が残飯ポイとこの近くだったせいで生臭いけど。それ言ったら私のマントは魔物の血なまぐさいわけだから、そこは、我慢してもらおう。
脱いだ方のマントをダークに投げて、着るようにジェスチャーする。
あ、ムッとしてる。
「いいじゃん、お前子供だろ。風邪ひかれたら私が困るんだって」
因みに、私は記憶のある限り風邪でぶっ倒れたことは無い。確かに熱が出たことはあるけど、あれはどちらかと言うと知恵熱みたいな感じだし。
「悲しいかなバカは風邪をひかない、を体現してる私が、逆に賢い貧弱そうなガキに風邪を引かせるわけには行かんわけだよ。そこのところ、おけぇ?」
まあ、通じないのは分かってるけども。
眉間のシワをより深くしながら毛布を抱えてるダークを見てたら、何となくコイツ言葉通じてそうな気がしてくる。
あー、眉間のシワグリグリしてやりてぇ。せっかく顔立ちは良いくせに。
壁にもたれて座り込みながらダメもとで隣をポンポン叩いてみる。
これも世界共通語だな。9割以上の人間は『隣に座れ』で通じる。ま、通じたとして、そのように行動するかどうかはまた別の問題なわけだけどな。
と、私の予想に反してダークが表情を変えずに近づいてくると私の左側に座った。
「マジで座るんだ……近くない?……って、ん?」
いきなりスリスリと私の左側に頭や身体を寄せてきて、パッと見で軽く甘える仕草を示してくる。
もちろん、懐かれて悪い気はしないし、馬鹿な私は一瞬嬉しい気持ちがポンと生まれた。
……けど、気づいた。
「…………」
私は黙ってガシッとこの糞ガキの頭をフード越しに掴むと離れさせた。
案の定、擦り寄ってた部分が雨水でジットリと湿ってしまっている。もちろんコイツの抱えてる毛布も。
フードの下から覗くオレンジの目がイタズラっぽく輝いて、ニヤッと少し口角の上がった表情を見て思わずそのまま壁に頭を叩きつけてやりたくなる衝動にかられた。この衝動を寸での所で抑え込んだ私を誰か褒めて。
「はぁ……」
もう、私このガキとやってけるか不安でたまらないのですが。
つかエルフって皆こんな感じなの?人の好意逆手に自己主張しまくる感じなの?
「私とあんたの相性って、割と最悪だと思うんだけど、そこのところどう思う?」
私は濡れた毛布を半分脱いでダーク側に濡れた部分がこないようにしながらそう訊いてみた。
ダークは、よく分からないって感じで首を少し傾げてみせてから自分の抱えてる毛布を私の肩に掛けてくる。
あーあ、またため息が出そうだ。
いい子なんだけどね。確かにいい子なんだけどね、けどが付くんだよな、ほんと。
まあ、洞窟はそんなに寒いわけじゃないし、もうコイツの好きにさせておこう。
そう言えば、ここ、出入口からだいぶ離れてんのに明るいよな。マジで今更だけど、全然暗くないし、洞窟全体の広さとかよくわかるって言うか……壁が光ってるのかな?天井も明るい。太陽のような明るさとは程遠いけど、夜の街頭程暗くもない。つか、照明があるような部分的な明るさとかは見られないし……不思議だな。
ま、ゴブリンの死体さえなけりゃ居心地はいいね。てか死体にしたの私なんだけどねっ///
残飯のところとかまだ見てないし、後で探索すっかな。ゴブリン達何かドロップしてるかもしれないし。
まあ、今はひとまず確認か。
色々変更あったもんね。自己把握は一番大事だ。
新しいユニークスキルは、怠惰と挑発、威圧、そして怒気だ。怠惰は前に見たけど……
《『挑発LV1』:発動中、対戦相手の注意を発動者に引きつける》
《『威圧LV1』:発動中、対戦相手の総合ステータス値が小down。※発動者のみ恩恵》
《『怒気LV1』:発動中、対戦相手の攻撃力を下げることがある》
おお。使える!
これでダークから気をそらさせることができるね。もっとレベル上げときたいし全部常にオンにしとこう。
ほんで?既に取得してるスキルのレベルアップは?
《『殴打LV5』:スタミナ1000を消費して、5分間殴打による攻撃力が物理攻撃力の8倍にup》
《『不屈LV4』:スタミナ1000を消費して、HP20%以上のダメージを受けた際のダメージを9割軽減する。瀕死のダメージを受けた際はスタミナがあれば自動的に発動される》
《『解体LV2』:スタミナ50消費して死体の解体効率を中up》
《『危機感知LV4』:スタミナ200を消費して24時間危機を確実に感知する。危機感知LV1及び危機感知LV2との併用不可》
殴打、マジでスゲェな。
期待以上の破壊力やな。発動時間短くなったけど、これ以上何を求めろっていうんだ。今でも充分なんだけどレベルさらに上がったらホントにヤバそうだな。
危機感知はLV3とLV4を発動しておこう。
てか思ったんだけど、LV5で頭打ちなんじゃね?LV4~5で威力が飛躍的に高くなるよな。
ま、どっちでもいっか。
ほんで、新しいスキルは……。
《『休息LV1』:運動を停止した状態で1分間のスタミナ回復量を+5する》
《『投擲LV1』:投げた物体の攻撃力が小up》
《『運LV1』:MP10を消費して1分間、運が少し上がる。》
《『隠蔽LV1』:MP10を消費して1分間、指定した対象が他人の視界に入らないことがある》
《『搾取LV1』:MP10を消費して1分間、指定した対象からMPを奪取する事がある》
《『肉体強化LV1』:MP5を消費して1分間、自己のステータスを小up》
《『斬撃LV1』:斬による攻撃力小up※特定の武器を装備時のみ発動可》
《『槍撃LV1』:槍による攻撃力小up※特定の武器を装備時のみ発動可》
《『打撃LV1』:打による攻撃力小up※特定の武器を装備時のみ発動可》
《『連撃LV1』:コンボスキル。特定のスキルが発動中、対象は逃れられなくなる》
《『連撃LV2』:コンボスキル。特定のスキルが発動中、敵から攻撃を受けるまでの間、物理攻撃力がほんの少しずつ上昇する。ただし、敵から攻撃を受けた時点でコンボ数はリセットされる》
つ、遂に、MPを使うスキルが!!
MP10って、一瞬でなくなるワロタ。しかも効果が全部微妙なやつやな。でも、MP使う方が使用率上がって次のレベルアップで増えるかもしれないし、一応何か使っとくかなー。
肉体強化とか良さそうだけど、スキル名が生々しいというか筋肉ダルマみたいというか。イタイケナ女性が使うような代物じゃないよなー。
さて。
私は改めて自分のステータス表を見た。
名前:ウエノ カナメ
種族:ヒト
LV:18
称号:狂戦士
加護:なし
ユニークスキル:鑑定LV4、呪い無効LV1、挑発LV1、怠惰LV1、怒気LV1、威圧LV1
スキル:殴打LV5、不屈LV4、解体LV2、味覚耐性LV3、危機感知LV4、歌唱LV2、休息LV1、投擲LV1、運LV1、隠蔽LV1、搾取LV1、肉体強化LV1、斬撃LV1、槍撃LV1、打撃LV1、連撃LV2
HP:2150/4123
スタミナ:2354/6932
MP:16/16
物理攻撃力:18279+1500
物理防御力:2791+10
魔法攻撃力:16
魔法防御力:13+10
回避力:546
テクニカルポイント:1800
ちょっと、やり過ぎたかな?
本編に出なかったので称号一応貼っときます。
『金の亡者』:所持金額の100倍以上の金額を欲する者へ送られる称号。スキル『搾取LV1』を同時取得出来ます。
『魔物殺し』:魔物を500体以上殺したものへ送られる称号。魔物相手の際、全ステータスが小up。ユニークスキル『威圧LV1』を同時取得出来ます。
『怒りの戦士』:怒りの感情を顕に一定時間戦闘をした者へ送られる称号。物理攻撃力以外のステータス値が5割downの代わりに物理攻撃力のステータス値の補正大up。ユニークスキル『怒気LV1』とスキル『肉体強化LV1』を同時取得出来ます。
極振りって個人的には好きだけど、私がこの世界行くなら絶対したくないですね。




