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晴読雨耕とか、求めてないからね

 《システムmail受信。イベント:『門番ダリアの依頼』スルー&正規街道のイベントルートから外れます。以降、システムからの補助管轄外となります》


 私は改めてカフカを去った時に届いた謎の文面を読んだ。


 これをザッと読んで思うことは3つ。


 1つ、システムやイベントという物が存在しているということ。ゲームみたいだと感じていたけど、いよいよゲーム感が増したよねー。


 2つ、門番ダリアってのは、あの揉めた心優しそうなオッサンのことだろうなーと何となく思う。ということは、あのままオッサンと仲良くなると何かしらのイベントが進められてたってことになるのかな。ま、現状の通りでスルーしてんだけどね。


 3つ、今までの私はシステムの補助を受けていたらしいということ。今後外れるらしいけど、これまでが補助範囲内ってのが逆に首を傾げてしまう。

 だってさ、王都からほぼ無銭状態で追い出され、奴隷商人に絡まれ、挙句飯屋で賭け事だよ?このイベント全てが予め用意された補助範囲内ってことになるのか?


 例えばこの世界がゲームの様なものだとして、ルートは用意されているとして。イベントというのはそんなにゲームみたいに一様に進むものだろうか?


 今まで会った人たちとの会話もそうだし、性格も色んな考え方をしてそうな普通の(私の知ってる一般的な)人間に見えた。

 つまり何が言いたいかっていうと、ゲーム内みたいな簡単な人間じゃなかったってこと。


 確かにスキルもあるし、レベルもある。


 でも、人との関わり方一つで、イベントなんて変わってしまうじゃないか。

 そう考えてしまうと、イベントだのシステムだのは元から考えない方が自然だと思う。こういう訳で、これから特にこのmailについてやイベントなどを気にするつもりは無い。


 ま、称号『金欠』&『金の亡者』の恨みはあるからシステム自体は嫌いだけどね。マジ私に喧嘩しか売ってないからな。とりあえず神的なやついがたら1発殴るわ。


 で。ここまで不確実な予想や予測の域なんだけどさ。

 この予め決められていたらしいイベントをスルーさせられた原因は一応明確なんだよねー。


 十中八九、ダークだ。


 例えばゲームやシステムを作る側に立つとすると、そんな不確定な状態を創るだろうか?どうしても何かしらの因果で必要なんだったら、私なら早めに消去するはず。

 堕天者へのこの世界の人間の態度が全て一様なのは、そういうところもあるってことだろうか?


 でもさ、世界の禁忌って、何なんだよ。

 それを犯すだけで、システムとやらが用意したイベントを歪めるくらいの力があるって事なのか?


 はぁーあ、わっかんね。

 分かんないこと考えたって迷走しかしないのはわかってるけどね。


 こういう時、まず、見るとしたら足元からだよなー。


 ところで、お前今何してるって?

 もちろん、寝てる。正確には目をつぶって横になってる状態。


 いやー、昨日はちょっと落ち込んだけどさー。ちゃんと反省したし、もういいじゃん?

 そうしたらさ、後は寝るだけでしょう?


 ミカン……じゃない、ザポン食べ終わったら、他にすることもなかったのだよ。もともと眠いからご飯作る気力も無かったわけだしね。

 そそくさと寝ちゃったよ。何ならザポン食べながら寝てたわ。寝ながら食べるとか何処の小学生だよ、全く。


 で、こんな私とは対照的にダークは全然眠そうじゃない。あ、そう言えばダークは昼間っからぐっすり寝てたわ。そら眠くなるわけないわな(笑)


 つうわけで、何かあったら起こしてってジェスチャーをして寝た……のが昨日の夜のこと。


 今は恐らく太陽が出始めたくらいだ。感覚的には6時か7時あたり。


 微妙に眩しいし、さっきからチカチカ目覚ましをされている。木陰で寝てるから分かりづらいけどさ。すぐ隣で気配がするしね。


 健気なダーク君はちゃんとこのダメな大人を起こしてくる。


 そう、私は「ダメな」大人なのだよ。


 起きてるよ?起きてるけどさ?

 起きる気はない。


 この二度寝みたいなやつをまだしていたいんだよ。


 だってさ、私こっちの世界来てから睡眠時間少ないんだよ。昨日寝たのって結局夜の11時くらいだとすると、睡眠時間が約7時間。


 因みに元の世界じゃ私は昼の12時に起きて大学へ行き、研究に励み、日付を跨いで帰宅して、深夜2時に就寝というサイクルだった。睡眠時間は10時間!食欲と睡眠欲が満たされなければ、全てが疎かになるからさ。元の世界じゃ、そこはしっかり満たしていたのだよ。


 ほらね?元の世界の活動時間と違うしさ、睡眠時間も足りていないとなると、今日くらいゆっくり寝たいって気持ち分かってくれるでしょ。


 確かに旅を急いでないこともない。


 でも哀しいかな日暮れ前に街から街へ移らなければならないという制限が無くなった今、そこまで早起きする必要がないのだよ。

 食料確保のために街に寄る必要はあるけど……一応3日分の米ならカフカで買ったし。


 ダークの昨日の食べっぷりからいくと、ちょっと3日分は危ういかもしれん。それでも、考えなしに食べたとして1日分くらいはある。


 だからダークよ、起こすな。


 私は奥義「うつ伏せ」を発動してチカチカから逃れた。


 バサバサッバサバサバサバサッ


 扇がれた。風がくる。

 確かに寝てたら起きるかもしれない。


 でもね、私は起きないのだ。もう20分は寝てやるもんね!


 で?

 どこまで考えてたっけ?


 あ、そうそう。まずは足元固めとしてダークのスキル把握だよ。


 《『森の知識LV5』:森で暮らす上で必要となる植物に関するあらゆる生活知識を取得する》


 《『共有LV1』:MP20を消費して、1分間指定した所持者のスキルを1つ、パーティメンバーの者と共有することが出来る。但し、指定したスキルの発動に必要なMPやスタミナは発動の度に消費される》


 ふーん、どっちも結構使えそうだなー。いいなー。私も森の住人になりたいな……勇者見習いって、いつか見習い取れるよね?そこんとこは信じてるからね?システムさん!


 おっと、思考回路が逸れた。


 えっと、このダークの共有出来るスキルって、ユニークスキルはダメなのかな。気になる。でもダークに聞いても伝わらないだろうなー。

 拒絶スキル便利だから私も使いたいんだけど。主に、虫とかにさ。


 ユサユサ……


 遂に揺すられるけど、まだ起きるつもりはない。


「うーん……」


 寝返りをうつ。


 私はたぬき寝入り中なので起きないんだよー。


 《条件を満たしました。称号:『惰眠の詐欺師』を取得できます》


 ……は?

 はぁぁあ?!来ましたよ、私の感情を逆撫でするのが目的だと思われる系称号第3弾!!


 ったく、うっさいわ。いいじゃんそれくらい!!惰眠じゃないもん!!睡眠だもん!

 称号とかわざわざつけてくんな!!ムカつくんだよ!!


 一応鑑定はしとくけどね?喜んでるわけじゃねぇからな!?


 《称号『惰眠の詐欺師』:一定時間、他者を欺いて目的もなく惰眠を貪る者へ贈られる称号。ステータスHPとMPの補正中up。また、単位時間当たりのスタミナ、MPの回復量を小up。ユニークスキル『怠惰LV1』、スキル『隠蔽LV1』を同時取得できます》


『怠惰LV1』……って、ちょっと引っかかる。

 ほら、七大罪の一つだし、世界の禁忌とかと関係してそうじゃん。


 《『怠惰LV1』:発動中、周りの者より体感時間をほんの少しだけ長くする》


 えー、ショボ。

 何か私が思ったのとちょっとちがーう。


 バサバサッバサバサッ


「はぁ、ぜー、はぁ……」


 私がステに夢中になってる間に、揺さぶるのを諦めて扇ぐのに戻ったダークは、扇ぎ疲れたらしい。息が上がっている。


 だー、もう、一旦起きよう。


「ごめん、もうちょい寝た……い……んだ、けど……」


 後半言葉に詰まったのは、起き上がって振り返った景色を見たせいだ。


「何これ」


 私は昨日と全く同じ感想を言った。


 起き上がった私の目の前には想定通りダークがしゃがんでいた。ちょっとだけ眉間に皺が出来てるけど、それはいい、そこまでは予想できていた。ごめんごめん。でもね、眠いんだって。


 て、そうじゃなくて、問題はダークの後ろ側。


 まるで祭壇に捧げるお供え物の様な果物の山が出来ていた。


 私がそれに目を向けてるのを見て取ったダークが不敵な笑みを浮かべて、食事のジェスチャーをしてみせる。


 …………このガキは。とりあえず、頭を抱えた。私が寝てる間にだいぶ遠出したな?もしもその間に危ない目にあってたらと思うと、かなり冷や汗もんなんですけど。


「……バカタレ」


 思わず言っちゃったわ。


 ったく、叱るにせよ、褒めるにせよ、こんなことされちゃ、二度寝出来ないじゃないか。これはそういう意味での恨み言だった。




「美味しかったよ?確かに嬉しいよ?でもさ、色々ある訳だよ。てことで、私が起きてる間ならともかく、寝てる間に遠くに行くの禁止だから。おけ?」

「…………」


 私は背中にいるダークに話しかける。

 8割以上通じてないだろうことは、分かる。けどさ、大人として言っとくべきことってのはある訳さ。誰に対しての体裁かとかはこの際おいておいて。


 正直寝る前に私が20m制限かけとけばいい話なんだよね。


 だから、軽めのお説教なうなのです。


 で、今私がのしのし歩いてるのは獣道みたいな所だ。何となく北に向かってるし、誰かしらが歩いた跡があるので、辿ればきっと人里的なところに着くんじゃないかと踏んでいる。


 ほら、足跡がだんだん増えてるし、里も近い。


 ポツ、ポツ……


 え。


 急いで空を見上げる。

 気づかないうちに雨雲が頭上に来ていたみたいだ。


「やっば!」


 私は荷物から毛布みたいなマントをもう一枚取り出してダークも含めて羽織った。


 せめて人里に辿りつければ屋根くらいは貸してくれるだろう。


 お、森が終わって開けてそうな場所が前方に!人里か!?


「洞穴かよぉー!」


 でも今まで辿ってきた足跡の大半がその洞穴に向かっている。まさかこんなとこに、人が住んでるとかないよね?うーん、住んでるとしたら、またアウトローな人だろうか?ちょっとそれはごめん被りたいなー、なんて。


 ザーーッ


「ち、いよいよ本降りか」


 とりあえず行くかしかない。そう思って足を踏み出そうとした時、危機感知スキルが反応した。


 だぁぁあ!こんな時に?!

 どこだよ、あの洞穴か?


 あたりを見回すけど森の方も前方も特に何も見当たらない。


 相変わらず何が危機なのか全く分からん。

 ほんっとこのスキル使えるようで使えねぇのな!一応危ないかどうかってのが解るから発動させてるんだけどさぁ?恩恵少ないよね。


 そんでもって……


「結局、向かうしかねぇんだよ!」


 ずぶ濡れで風邪引くよりは、多少の危険な可能性があろうと洞穴の中のがマシだ。

 しかも外が危険なのか中が危険なのか分かんない状況だし。


 私は悪態を吐きつつ転がり込むようにその洞穴の入り口にスライディングをキメた。

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