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さらばカフカ

「は?街に入れないってどうゆうことですか?!」

「どうゆうことも、何も、普通、堕天者を街に入れるわけには行かんだろう。例え隷属者だとしても、危険因子を見逃すわけにはいかん。分かったらとっとと、帰れ」

「帰れって、何処に帰れってんですか!」


 外門に私と門番の怒声が飛ぶ。


 ダークは私の服の裾を持って、ことの始末を理解しようとしているみたいで大人しい。


 うん、状況を整理しよう。


 まず、私達はジバルを旅立ったわけだが、ものの2時間も歩かないうちにダークはスタミナ切れを起こした。


 よくよく考えたら当たり前だ。

 ただでさえ子供の足にはキツいのに、一昨日まで餓死寸前、更にあらゆるステータスが1桁なんだから、端から無理な話なんだよね。


 ダークが突然倒れた時は流石に死んだかと思って心臓に冷水をかけられた心地だった。回復薬めっちゃ飲ませて、それでも回復しないんだもんな。まあステータス画面見たらスタミナ切れの方だってのが分かったんだけどね、そんな冷静にステータス画面チェックするわけないじゃん?


 で、それ以後ダークをおんぶしてこの街、カフカに向かってきた。ダークは体重軽いから本当に羽を背負ってる感じだったけど、旅が思いのほか早く進められたのはそれだけじゃない。不思議な事に途中一切魔物と遭遇しなかったからだ。おかげで旅の行程を想像の1.5倍速で進められた。

 私の緊張返して?いや、マジで。


 それにしても、ダークってばおんぶしてる間ギュッてしがみついてるんだもん。ずっと避けられてたし、今朝とか嫌われたのかなと思ってたから、ちょっと嬉しいよね。


 何となく気分良くなって鼻歌を歌いながら遠足気分で歩いていた。や、うん、緊張してたよ?本当に。


 途中でダークが寝てたのは力の抜け具合から分かったけど、小学生のガキだ。しょうがないよね。そもそもスタミナ切れで動けなくなってたからね、寝て回復するに限る。


 歌に関してはスキルがあるんだし。あげる分には良いとしようではないか。途中でスキル『歌唱LV2』にあがったから。


 《スキル『歌唱LV2』:精神状態を少しだけ癒す》


 またもや、誰の?という疑問が浮かぶ。てか、この説明書きほかのに比べて杜撰というか、抽象的だよな。


 と、何だかんだ気が緩んでいたところにコレだった。何食わぬ顔して街に入ろうとすると、門番から待ったがかかったのだ。


「せっかく明るいうちに着いたのに……ジバルに戻れって?今から行くと夜中になるじゃないすか!それとも何?こんな魔物続出地帯で女と子供が野宿で夜を明かせっての?!」

「無理なもんは無理だ!どうしても外で過ごしたくないならそいつを処分してから来い!」

「しょ、処分?!あんた、ド平凡な顔と地位のくせに、よくも人に向かってそんなこと言えるね!」

「なっ?!ド平凡は余計なお世話だ!堕天者は人じゃねぇ!お前、無知な上にどう騙されたのか知らねぇが、これだけは言っといてやる。堕天者は魔王に次ぐ世界的な犯罪者だぞ、存在するだけで穢らわしい。死んで当然の、生きる害悪そのもの……うぐ」


 門番の胸倉を掴んで引き寄せる。


 ステータス値が高いからか、多少筋力があるらしい。ノズ達程じゃないにしても大の男を片手で軽々と引っ張れた。


「どっからどう見ても子供だろうがよ。こんなクソガキが世界的犯罪者なら、アレか?私は魔王か?」

「し、知るか!とにかく、街には何があろうと何であろうと、こんな堕天者入れないからな」

「おい!騒がしいぞ。どうした!?」

「揉め事か?」


 騒ぎを聞きつけてわらわらと数人がこちらに走ってくる。


「ちっ」


 私は掴んでいた手を離す。門番が大丈夫という合図なのか駆けつけようとするほかの奴らに向かって意味のありそうな手話を送った。


「俺だってこんな事は言いたくないんだ。悪い事は言わん、どの階級奴隷か知らないが奴隷主の権限でそいつを何処かに位置指定して捨ててこい。日が沈むまではここを開けといてやるから」


 門番は乱れた革の鎧を正しながら、真剣な顔で告げた。


 私はぐっと拳を握り込む。


 言葉の調子から、この人の平凡ながらも温かい人柄が伝わってくる。それがもどかしい。この門番は根が優しいお人好しだ。その目も言動も、私への心配を表してくれている。でも、対象は『私』しかない。きっと、ダークさえ連れてなきゃ、仲良くなれたのかもしれないんだろうな。


 こんなにいい人そうなのに、堕天者(ダーク)は人扱いじゃないんだ……。


 カルチャーショックだった。


 くいっくいっ


 ん?服が引っ張られる。

 ダークだ。


「……どした?」


 ダークは自分を指差して足元に指差す。そして、私を指差して、街の方を指差しした。

 何か特別に考えているわけじゃなく、ごく自然なことのようにそうジェスチャーした。


「んだよ、それ」


 言葉が出てこない。何ていうか、すごく悔しい。状況は分かってる、私1人だけがから回っている。


「門番さん。日が暮れるまで開けててくれるんですよね?」

「……そうだが」

「じゃ、私が行って帰ってくるまで開けててください」

「は?」

「絶対。門閉めないで下さい。閉めたらぶっ殺します」

「ぶっころ……って、女がそんな言葉……」


 絶句してる門番を他所に、私はダークの頭をフードごしにポンと叩いて街に向かってダッシュした。もちろん、20mの範囲でってのを解除して、1km圏内にチェックし直しておく。


 1時間後、夕闇に包まれる中私はダークを連れてカフカの街を後にした。


 おんぶして以降、ダークとの距離は飛躍的に近づいた。


 どっちかというと、私がダークに直に触ろうとしなくなったからってのが大きいのかもしれないが。おかげで真横を歩いてくれている。身長はだいたい私の胸あたりだろうか?


 未だに怒気が冷めやらない私に怯えているのか、ことある事にチラチラと見上げてくる。


「はぁーあ、早く帰りたい」


 何故か惨めな気持ちになるのが腹立たしい。現状を変えられないもどかしさは、どこの世界でも一緒らしい。久しく忘れかけていた色んなトラウマが浮かびかけて、陰鬱な気持ちになる。


 でもま、街の衛兵さんに攻撃されないだけマシだったよね。

 うん。ポジティブに行こう。


 野宿するんなら、川辺を探して、薪を拾わなきゃだ。火をおこさなきゃいけない。クヨクヨしてる暇はない。


「とりあえず、呪い解かせてっ」


 ひょいっ!


 何故か私のタイミングを知ってるのか、絶妙なスキル発動で伸ばした手が躱された。ほんとコイツの回避力は異常だな。


 ま、気長に行こう、旅は始まったばかりだ。


《システムmail受信。イベント:『門番ダリアの依頼』スルー&正規街道のイベントルートから外れます。以降、システムからの補助管轄外となります》

※修正 ちょい書き足ししました

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