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旅立ちの日より

 あー、何か、視界がチカチカするー。

 デジャヴ感に囚われながらうっすら目を開けてみる。


 だぁぁあ、目が開かないー。眠いー。まだ良いじゃん寝かせてよー。硬い床で寝たから何か腰のあたり痛いしー、疲れ取れてないよー。


 心の中で文句を満開に咲かせながら視界に映ったオレンジの瞳を睨む。

 だって目が開かないし眩しいもん。


 ここまでだいたい昨日の寝起きの流れと一緒……て、んんん?


「今何時?!」


 飛び起きた。時計を見る。

 6時半だった。


 わー、ギリ。

 良かった!今からすぐ出れば、今日中には次の街にたどり着ける!


「ナイス、ダーク!ありがとう!」


 私は起こしてくれたダークを振り返る。


 いやー、7時にファントさんとの約束だし、丁度いい。ダークってば、分かんないふりしてるけど、やっぱちょっと私らの言葉分かるんじゃね?


 ぷいっ


 私の感謝の言葉は受け取ってもらえなかったらしい。ギっとひと睨みしてくるとそっぽを向かれた。


「え、ダーク?」


 つーん。


 そっぽ向いた方に回り込んでも、更に明後日の方向に顔を向けるダーク。あからさまに、眉間にシワを寄せてぷいっと顔を背けてくる。


 あれ?何か……昨日ちょっと仲良くなったと思ってたんだけど、ひょっとして気のせいだった?


「ねぇ」


 しつこく話しかけたからか、再度キッと睨まれる。まるで親の仇を見るようなキツイ視線。


 えー。


 これ、寧ろ初日以上に避けられてるっていうか、嫌われた?


 それとも何か……怒ってる?

 なかなか起きなかったからかなぁ?うーん、それ以外思い浮かばないし。


「……寝起き悪くてごめんよ?」


 ぷいっ


 やっぱ何かに怒ってるぽい。


 怒んなくてもいーじゃん。そんなことですぐ怒るやつはモテないよ?


 と、心の中で茶化してみながらも、ダークの御機嫌はなかなか直らないまま、宿を出て武器屋に辿り着いた。


「おはようございます!」

「よう!カナメ、出来てるぜ」


 ファントさんが挨拶もそこそこに差し出してくれたのは、ファンタジー感満載なワンピース状の服だった。一応キュロットみたいになってるらしい。一種のオーバーオールのようなやつだ。


 もちろん昨日渡した緑色の布を基調としたところどころ白布の入った服。


 うん、典型的なエルフの衣装だ。言っちゃえば、とある伝説のリ〇クの服装をもうちょっと大人っぽくしたバージョンかな。

 一応鑑定してみる。


 《鑑定に成功しました》


 《森の装束(HP強化ver.):森の布から作られた森の住人エルフの衣装。光合成要素を持ち、日光が当たる限り着用者のHPが微量回復する。また、着用時にHP+10、魔法防御力+80の効果》


「おお!!?」


 私は思わず声を上げた。


 理由はもちろんHP+10についてだ。HPってプラス出来るのか!


 いや、うん。

 10は小さい、確かに小さいけども、1に比べれば10倍だ。一撃で死ぬ可能性は確かにまだ充分にある訳だけど、リーチが伸びたのは単純にありがたい。


「おめぇさんがその堕天者のHPどうのこうの言ってたからよ、そっちよりにしといてやったぜ。本来は魔法防御寄りに作り上げるもんだからよ、効率的じゃねぇからあんまりプラス値自体はでないだろうがな」

「マジっすか!凄い嬉しいです!本当にありがとうございます!てか、そんな意見取り入れて強化ってできるんですか?!」


 性能も名前的にもこの防具は中の下くらいだろうとは予想がつく。でもカスタマイズ出来るとなると価値がだいぶ変わってくるだろう。


 そんなRPGがあるとなると、やり込み要素がかなり変わってくることになる。やべぇよこの世界。


 まあ、ゲームでは無いんだけどさぁ。


「普通はやらねぇさ。このくらいお安いごよう……と言いてぇところだが、普通の武器屋防具屋じゃ出来ねぇよ。これでも俺はあの鍛治師マーディルの弟子だったからな、その位はできるのさ」

「マジっすか!やばいっすね!ぱないっす!」


 マーディルって誰ぇえ?!

 話の流れで何となく把握出来てるけどさ。私そんな常識知らないから。


 適当に合いの手を入れてスルーした。


 さて。問題のお値段は?


「まあ材料費は布以外にもあったが、この際全部おまけしといてやるぜ。残りの森の布も頂戴してるしな」

「ありがとうございます。この森の装束が想像以上の出来だったので全然差しあげます」

「おう、こっちこそありがとな。ちょうど別件でよ、仕入れときたかったんだ。つうわけで、弟の恩人サービスと森の布分って事で3割引の7,000prな」


 ふむ、確かにこの強化率だと妥当なお値段ですな。知らんけどな。例えボッタクリだったとしてもこの気のいいオッサンに投資しましょう。ここまでの私の行動からわかるかもしれないけど、私は人にお金を払う質なのだ。


 ササッとお買い上げしてダークに着せた。具体的には投げ渡して着替えさせたんだけど、やっぱりエルフだからか、似合ってる。


 ダークは白い肌にオレンジの瞳で、ローブがクリーム色に茶色の刺繍なので緑が良く映える。まるで木みたいだ。いや、褒めてるよ?そのへんの木じゃなくて、森の奥にあるような樹と言った方がいいかも知れない。何か、似てる木があった気がするけどなー。ま、花を愛でるなんて高尚な趣味は持ってないので思い出せない。思い出せてもどうせ私の事だし名前知らないだろ。


 てかコイツ、今までローブだのシーツだので頭が隠れてて見えてなかったから知らなかったが、銀髪じゃん!


 何故か隠してるらしくてチラッと一房だけ見えた。すぐ隠してたけど。

 白髪とはちょっと違うキラキラ感があったし、銀髪だよ。よく見れば眉毛も薄い色してるもんね、薄すぎて眉なしなのかとおもってたんだけど。ファンタジーだなぁー。かっけー。


 お、機嫌良くなった?

 ムスッとしてた顔がちょっと明るくなった気がする。


 街の出口付近でアンマンみたいなお菓子を10個程買った。


 ダーク、今は何故か怒ってるけど、基本ちゃんと私の言う事聞いてるもんな。私がダークの年齢くらいの時とか親の言うこと滅多に聞かなかったのにさ。偉いよ、ほんと。だからご褒美である。


 ってか、ダークめっちゃ頬張るやん!そんな好きだった?!


「うーん、もっと買えばよかったなぁ」


 10個と言っても拳サイズだから私6、ダーク4のつもりだったんだけど、あっという間にダークが5個食べ切ってしまった。


 袋の中身と私を交互に見て、残りは私の分って思ってくれてるのか、投げ渡そうとしてくる。


「全部あげるよ、食いきりな」

「っ!!」


 すご、目が輝いてるじゃん。

 コイツ、私に負けず劣らずの食い意地だな。というか、甘党?


 口元がさっきまでへの字だったのに、きゅっとくの字に端が上がっている。現金なヤツ。


 ま、機嫌が治ったのなら何よりだよ。口の端にあんこがついてるので自然に拭いてあげようとしたけど、華麗にスルーされたのはいつもの事だ。今更傷つかないからね?


 さてさて。

 街の北門を抜けると300mくらいの草原がつづいたあと森が見える。


 油断しないように気を張らなきゃだ。

まったり回です。

本当は昨日投稿してるはずだったのですが、予約ミスしてました。

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