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罪悪感を抱くうちは正常だと言い聞かせてみる

 布屋を後にして、大通りに戻る。空を見上げても、まだ夕方には数時間程度ありそうだった。


 ぐぅぅるるる。


 私ではない。まあ、鳴りそうなくらい腹減ってるけどね。

 後ろを歩くダークを振り返った。


 シーツの上からダボッとしたローブを着たダークは恥ずかしそうに身じろぎする。


 フードの下を覗くと凄く嫌そうに顔をしかめてる。何ていうか、可愛い。パッと見生意気少年なだけに、余計にキュンとしてしまった。これがギャップ萌えという奴か。


「お腹空いたね、でも、もうちょい待って」

「…………」


 ダークは黙って顔をしかめた状態で布屋から抱えっぱなしの布と巾着袋をギュッと抱き込む。私が持とうとしたら首を振って渡してこなかったからしょうがない。


 決して児童虐待とか、してるわけじゃないから!


 で、目は口ほどにものを言う。

 私を見てくる目には警戒の色が相変わらず濃い。きっとこのガキ、私が撫でようとするのを避ける準備をしているはず。正確にはスキルを発動しようとしているはず。


 私だって馬鹿じゃない。そう何度も避けられて若干傷つくのは嫌だ。


 撫でたくなる衝動をぐっと我慢して、踵を返すと、ファントさんのお店に向かった。


「ファントさーん、さっきぶりでーす」

「んあ?おう、カナメか。どうした?買い忘れか?」


「いやぁ、実はこの子のローブの下の服作って欲しくて……服屋とか知らないですし出来ればこの布で作ってもらいたくて」

「おめぇさん、さっきも思ったけどよ。堕天者なんかにそんな装備揃えなくてもよくねぇかい?奴隷でもそこまで金かけねぇよ、普通」

「うーん、まあ、この子HP1ですから。旅につれてって即死させたくないなーと思ってるんですよね」


 良識のある大人であるならば、こんな子供連れて旅するとか有り得ないってレベルだと思う。それに比べて私は割と鬼畜だと思うわけ。堕天者とか奴隷とか、私にとっては知らない肩書きだし、この際どうでもいいすわ。


「で、出来れば明日の朝までに作って欲しいんですよ。そこまでしっかりした服じゃ無くてもいいので……」

「馬鹿言ってんじゃねえよ!俺ぁ仕事にゃ手は抜かねぇぞ」


 おう、怒らせちゃった?頼む相手間違えたか?


「明日の朝までだな?今から店じまいして作ってやらぁ!材料はどれだ」

「あ、ありがとうございます!この布で宜しくお願いします」


 おお。思った以上の反応で快諾してくれた。

 てか今の時間から店じまいして大丈夫かよ。


 そう思いつつも、有難いのでダークの運んでくれた布2枚(緑と白)をファントに渡す。


「ふむ、こりゃ悪くねぇ布だな」

「あ、そうなんだ」

「あぁ、特にこの緑の布はなかなか手に入らねぇクジの葉のエキスが染み込んでやがる」

「へー」


 思わず触って鑑定をかけてみる。


 《森の布:普通の布をクジの葉の湯に数ヶ月漬けて得られる特別な布。森の装束、森の鎧の原材料となる》


 おばあちゃん、安物の布屋なんて思ってごめんなさい。そして(半分)嘘の情報売ってごめんなさい。

 いつか、もっと余裕が出来たら思っきり孝行します。闇鉱石10個くらいあげるよ。


「まあ、この布の量で服作るなら森の装束だろうな。このガキの大きさなら若干余るくらいだ。残りは貰ってもいいかい?その分安くするからよ」

「余りを譲るかどうかは明日の出来次第ですね。頼んだ服にその布がほとんど使われてなかったら本末転倒ですし」


「ははは、甘ちゃんかと思ったが、意外としっかりしてんのな。それでいいぜ、元から手は抜かねぇさ。じゃあ、明日の朝……何時に来るかい?」

「じゃ7時でお願いします」

「あいよ」


 そんな短時間で出来るのか?という疑問はさておき、だいぶ早朝指定してしまった。起きれるかどうかじゃなく、起きなきゃいけない時間だからね。


 明日の朝こそ宿のオッサンにモーニングコールをお願いしよう。


「あ、ファントさん、ここらでオススメの美味しいお店って何処ですか?」

「うーん、あんまり美味い飯屋はねぇなぁ。ここらじゃ飯は自分の家で作るか、外食するとしても酒場だからよ」

「ふーん」

「このあたりで美味い酒場ならレーンボルトファミリー御用達のスララか、一般人の多いテポネ、ダフォファミリー御用達のジャブジャスって店だろうな」


 スララってのは午前中にノズらがひっくり返ってた酒場だ。どうせ今からそこに行くし、ご飯もそこで済ます方がいいかも知れないなぁ。


 で、店を後にした時点で、そろそろ太陽も傾いてきたらしい。街が赤く染まり始めていた。


 やれやれ、めんどくさいけど行くしかないかなぁ。


 そう思いながら、道中の屋台で美味しそうな焼き鳥を4本買ってみた。タレ味じゃなく、香草と薄い塩で焼かれたやつみたいで、独特ながらもいい匂いがする。


 2本ダークに渡して、ゆっくり噛んで食べるようにジェスチャーした。ダークは凄く嬉しそうに串焼きを凝視していたけど、何となく私の意図が通じたのか、私の動作を真似て大袈裟に噛んでる仕草をする。


 そうそう、昨日まで飢え死に一歩手前だったんだから、ゆっくりしっかり噛んでから飲み込めよー。


 と、私が油断仕掛けた時、ダークは口を開けて飲み込んじゃった事を主張する。そしてまた何も無い口でもぐもぐ噛んでる仕草……。


 このガキ!大袈裟な噛んでる仕草は、全くのジェスチャーだったわけだ。


「おま!ちゃんと噛めよ!」


 くすくすっ


 ダークが音を立てずに肩をすくめて笑う。


 こいつ、大人しいと思ってたけど、ひょっとして内弁慶なのか?


 何にせよ、多少は元気になってきたみたいでよかったよね。


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